「103万円の壁」財源論より生存権だ!国民民主党榛葉賀津也幹事長会見
Japan In-depth編集部 (仲野谷咲希、成沢緑恋)
【まとめ】
・「103万円の壁」を巡り、与党との協議が佳境に入ってきた。
・国民民主党榛葉賀津也幹事長は、同党の主張は財源論ではなくて国民の生存権の問題だと述べた。
・又、国民の期待を裏切ったら、国民民主党にではなく、日本の政治にがっかりすると思うと述べた。
「103万円の壁」を巡り、与党との協議が佳境に入ってきた国民民主党。減税がどうなるのか、庶民の関心はこれまでになく高い。一方で、新聞、テレビは、減税の効果よりも、「大幅税収減」を問題視する報道で溢れている。同党の榛葉賀津也幹事長に定例会見の場で聞いた。
榛葉:本日10時、経済対策と補正予算に関する第3回目の三者協議が行われました。本日の協議では、国民民主党からの要望に対して、与党からの打ち返し、そして意見交換を行ったと、浜口誠政調会長から聞いております。来週月曜日も再度協議に入ると聞いてますので時間も限られますが、しっかりと中身を詰めていただきたいと思います。
現場で交渉されている浜口政調会長も大変だと思いますが、ぜひ頑張ってほしいと思いますし、昨日は、税調会長同士の協議も自民党、公明党それぞれ開催されたということは、税調会長からご報告がございました。次回以降は三党で一緒にやるということでございますので、その協議を見守りたいと思います。国民民主党からの要望項目を自民党、公明党さん側にお示しをするというふうに聞いてますので、まさにこれからの1ヶ月が勝負だと思いますので、これも現場の交渉に委ね、推移を見守りたいと思います。
最後に、石破内閣になって最初の大型の国際会議「APEC」が終了しましたが、残念ながら共同声明がまとまらなかったということでございます。我が国からは、岩屋外務大臣と武藤経産大臣が出席をされたということで。言うまでもなくですね、トランプ大統領になって最初の米中が入った中での国際会議でございます。選挙戦でも、アメリカが外国からの製品に基本10%から20%の関税をかけるというのが公約でしたから、こういったものに対する牽制もあったんだろうと思いますが、早速ですね。米中の経済摩擦が具現化してきたなという感じがいたします。我が国の外交、そして、経済安全保障共に大変難しい時代に入ると思いますが、これもまた「対決」より「解決」、しっかりと我が国の国益にかなうように野党でございますけれども、対応していきたいと思います。私からは以上です。ではご質問がある方は?
記者:税制の協議について伺います。
今日自民党の宮沢税調会長が元の会合の後、記者団に防衛増税についても国民民主党と話し合いたいということを発言されました。
国民民主党は増税ありきという形ではなかったと思うんですけど、改めて国民民主党の考え方とこの項目についても与党と協議対象になるかどうかお考えをお聞かせください。
写真)榛葉賀津也国民民主党幹事長
榛葉:防衛増税全体でどうか、ではなくて税全体で見るべきですね。税収が2兆数千億上振れしていますし、使い切れなかった税金が昨年は7兆円、その前は11兆円ですね。様々な駆け引きで防衛、増税等々を口にされるのは自由でございますが、取り過ぎている税金を国民に返すと。8月の前年同月期で25.8%も税金を取り過ぎているんですから。全体を見ながらそれぞれの増税、どうなんだと103万円の壁をどう打ち破るのだと、いま国だけが勝ち組になってますからね。そういう全体の話で防衛増税等々についても与野党が協議すればいいことであって、今我々はこの130万円とガソリン税等々を議論しているわけであって、あまりいろんな税金を絡めてリンクして、そういう駆け引きみたいなことをやらない方がいいと思います。
今は、それぞれの税調、政調で議論している能登半島復興、そして経済対策、そして103万円の壁撤廃とガソリン税減税、こういったものをしっかりと具体的項目に沿って議論すればいいんだろうと思います。論点をずらさないほうがいいですね。
記者:もう1点。自民党が党の部会長などの人事を発表しまして、その中に裏金問題で不記載とされる議員が12人入っていますが、それについてどう受け止められているでしょうか。
榛葉:国会の役職でなく党内の役職ですから。これは裏金が疑われた議員は仕事するなってなっちゃうね。それは自民党の判断なので、自民党に任せたいと思います。
ただ、政務三役とか委員長とか、これなかなか置きづらいんじゃないの、厳しい野党は追及するだろうね。早く政倫審開いて弁明したくても弁明できなかったわけでしょ。弁明してないから公認しないって、これはある意味かわいそうだね。早く弁明する機会を作ってしっかりと説明する場を、私は設けるべきだと思います。我々はそれをずっと要求してますから。それは閉会中でもできますね。
ぜひお願いしたいと思います。
記者:国民民主党と与党側で地方での税収について意見の相違が見られるんですけれども、全国知事会の村井会長も賛成できないとおっしゃっていますが、そのあたりの見解をお聞かせください。
榛葉:玉木代表が、MXテレビで村上総務大臣が全国知事会の村井会長に発言を依頼したということを申し上げましたら、総務大臣がすぐ否定していましたけど、我々今週の初めに大臣から全国知事会に連絡を入れている、という複数の筋から確認がされていますので、私はあったんだろうと思います。
それが良い、悪いのではなくて、村上誠一郎さんという人は戦う政治家だと思ったけど、安倍内閣では与党内でもしっかり正論言ってましたね。私は地方財源が悪影響を及ぼさないようにやるのは当然です。
私も地方の議会出身ですし、今、地方の状況がどういう状況か極めて財政的にも厳しいです。地方財政に悪影響を与えることは絶対させません。それはぜひ安心してほしいと思います。
いろんな数字が出てきて、地方の財源が4兆円減る。だからやるなって論法でしょ?そうじゃないんですよ。
地方の財源に悪影響を与えないように是非103万円の壁を撤廃して地方の住民の手取りを増やしてくれって、全国知事会も市長会も村井会長も言わなきゃダメなんじゃないですか。地方の財源が減るから壁を突破する政策なんてやらないでくれって言ってる方もいるけど、そうじゃないよね。
地方に住んでる住民の立場に立ったら、絶対にそれは国の責任で地方財政には悪影響を及ばさないけど、頑張って地方で生活されてる方々の手取りを増やす、減税する、それもセットでやれっていうのが正しい自治体のスタンスだと私は思いますね。
我々は絶対に地方に悪影響を与えないように頑張りたいと思いますので、ここは自民党さんも公明党さんも同じだと思いますから、地方財源に悪影響を与えないように手取りを増やして積極財政をやっていくということなんだろうと思います。
記者:立憲民主党との基本政策の協議についてお伺いします。
立憲民主党と国民民主党の衆議院選の公約を比較しますと、国民民主党は原発について新増設とする一方、立憲は将来的には依存しないとしています。また、その他の分野でも憲法は違憲だとか、安保法制についての憲法の廃止というふうにしています。これから今の両党の基本政策の差や、立憲民主党の基本政策について、幹事長としてどういうふうに評価しているかお伺いできますか。
榛葉:立憲さんは政策をさまざまに、うちに近いところもありますが、問題は党内で意見の違う方が非常に多いということですね。我々の基本理念政策、つまり、エネルギー・安全保障・憲法、こういった問題に極めて近い議員も少なからずいらっしゃいますが、全く相容れない方々も実は多くいて、中には連合推薦なんていらないよ、という議員も最近増えましたね。そういった意味で民主党が瓦解した一番の理由が沖縄辺野古の安全保障政策で相入れないと言って離党していった方から、民主党政権が崩れたんですよ。同じ轍を踏まないためには、政党というのは基本理念を共有しなければダメです。
したがって、仮に選挙等々で連携する場合は基本政策をしっかり擦り合わせる、それは当然ですね。ですから今、政調会議を中心に連合さんも入れて、基本政策についての議論が始まるようですが、その定まった基本政策を全ての皆さんに共有してもらわないと、これは交渉にならないね。話し合いにならないので、そこを見守っていきたいというふうに思います。
記者:臨時国会は、11月28日招集で12月21日まで24日間と公表されました。いろいろな論戦を期待したいと思いますが。
榛葉:まさに石破内閣始まって最初の論戦ですね。石破内閣で解散して衆議院総選挙をやりましたが、石破さんは所信表明で衆議院、参議院それぞれ20分程度意見陳述をして玉木は10分、私は10分片道方向に聞いただけですから。予算委員会もやったら先ほどAPECの大事な会議がありましたが、外務大臣が何を考えて経済産業大臣が何をやりたいのか全くわからないまま大臣が外交交渉をやっているわけですよね。
そして選挙もありましたけど、新しい大臣も副大臣・大臣政務官も昨日今日決まったわけでしょ。これはしっかり議論しないとダメですね。
加えて先ほど言った政倫審。これも開かなければならないし、大臣所信もやらなければならないし、両者そして並行してこの経済政策や経済対策や税制改正、補正予算、そして来年の本予算の編成、忙しい国会になるね。充実した議論をしっかりやって税金を国民の手に戻していく。
そして手取りが増えて経済が好循環に転じていくその実感を国民の皆さんに感じていただけるような国会に、与野党が協力してしなければならないと思います。
安倍:Japan In-depthの編集長の安倍です。178万円は、財政に負担を来すからもっと低くできないかというような議論があらゆるマスコミ、エコノミスト、アナリストとかから出ていて、なんとなく外堀を埋められ始めています。国民民主党としては一層プロパガンダを進めていかなければいけないんじゃないかと感じていますが、幹事長はどう思っていますか?
榛葉:ありがとうございます。最近ですね、いろんな、よくわからない報道がありますけれども、確かに与党の後ろには数十万の官僚の皆さん、優秀な官僚の皆さんがついているかもしれませんが、我々野党の後ろにも多くの国民の皆さんがついています。
これをやらないとですね。ちょうど日本が高循環、高景気への転換点にいると思っているんです。ここで皆がですね、与党対野党とかではなくて、まさにこの瞬間こそですね、この30年間のデフレから脱却すると、それを乗り越える一番大事なポイントですね。
だから取り過ぎた税金を国民に戻していく。これは今我々103万円と言ってますけども、もう一つのガソリン税9兆円ですよ。都会の皆さんはガソリンを入れなくても生活できます。
無論、高いガソリン税は物価にも転嫁されますから都会の皆さんにも全く影響ないわけではありませんが、地方はガソリンを入れないと生きていけないんですね。
憲法25条の生存権の問題で、この103万円の壁や175万円、そして最低賃金も全ての国民は健康で文化的な生活を営めなきゃいけないんですよ。ですから、最低賃金が1.73倍だったら生きていく最低限のコストの基礎控除も当然上げなければいけないし、ガソリン減税というのは地方で生活されている方々はガソリンがなければ生きていけません。
一家に一台ではなくて1人1台+軽トラック。これがスタンダードですね。田舎の人が本当に高い税金を払って歯を食いしばって地方で生きてるわけですから、今日また補助金制度を延長して今度は180数円台で納めようという話がありましたが、やっぱり補助金行政ではなくて減税すべきです。
後から補助金で返すんだったら最初から取らなければいいんですよ。これは役所の論理からしたらとんでもないと言うかもしれませんよ。ただその発想の転換をしないとこの国の政治や行政は変わらない。そのやり方でやって30年間デフレ1000兆円超える借金を作ってしまったんですから、我々はそれを非難するのではなくて、「対決」より「解決」で、共に新しい解を作っていこうと、こんな小さな党ですけども、与野党の優秀な官僚の皆さんとも一緒にですね。正しい解を、国民のための解を出せるように努力したいと思います。国民の皆さんの声をしっかりとぶつけて私は分かってくださると思います。期待しています。
記者:先ほどのお話にも出ていたんですけれども、国民民主の主張に対して、政府与党側は財源論で張ることに牽制していっているようにもなります。こうした政府与党側の論法についてどういうふうに思われるのか、そして国民民主としての財源論の立場、というのを改めてお伺いできますでしょうか。
榛葉:何度も言いますけれども財源論の前に、国民の生存権です。これ、絶対重視しなきゃいけないんですよ。財源があるからやる、ないからやらないというわけではなくてですね。財源がないからやっぱりやめろという論調ですけども、税収は上振れてますよ。
そして使い切れない税金が一昨年は11兆円、今年は7兆円ですよ。
他にも、特会のお金もありますね。それは継続的じゃないんじゃないかというかもしれないけども先ほど言ったように、ここ数年が大事なんですよ。また、デフレに戻っちゃいますよ。
ここでですね。やはり、エンジン吹かせて高循環のまずアクセルを回していくと、景気良くなれば消費税も伸び、事業税も伸び、税収は増えるわけですから、その具体的な計算をつめて野党にやれというのか。
やはり与野党共にですね。どういうところで落とせるのか、だから今、政府与党と交渉をやってるわけで、最初からですね。これだけ減税になるからもうやらないとなると。
国民からは選挙で結果が出てるわけだから。これ(103万円の壁の撤廃)やってくれという声が挙がっている。これはしっかりとやっていきたいし、まずはそういう姿勢で臨んでいくべきだと思いますし、ぜひ前向きに、無利益を買う交渉ではなくて共に着地点を見出す交渉をしていただきたいと思います。
記者:以前は我々は野党であって財源全体について把握できる立場ではないから、財源については政府与党がまず考えてくれというお立場だったように思うのですが。
記者:それはね。与党には数万人、いや、10万人単位のキャリアがいてですね。我々は40人足らずの議員と政庁の職員1名ですよ。それで財務省や総務省と同じ計算しろ、と、それはなかなか無理だ。
正直言って我々は敵対してるわけじゃないから、何度でも言うけど。国民が今苦しんでるわけでしょ?手取りが少なくて。給料は30年ぶりにちょっと上がったけど、ガソリン税が増える。電気代も上がる。物価が上がる。
これは国民の悲鳴ですよ。しかも、今回は今まで選挙に行っていなかった、10代20代の学生や中小企業の経営者や店長さん。そういった方々が何とかこの103万の壁を撤廃してくれ、よく政治がこんな問題に気がついてよくやってくれたと。私が今回の選挙で画期的だと思うのは相手を非難せずに地味かもしれないけど、103万円の壁撤廃・ガソリン税減税を愚直に訴えて政策で選挙行動が変わったんです。投票行動が、久しぶりじゃないですか。
右や左に大きく触れてエッジを利かせてですね、極端なことを言って注目を浴びる政党もありますけども、ど真ん中の政策を愚直に訴えて政策で国民が投票に行き、これをやってくれという結果が出たんですね。
与党が過半数割れということで、これもある意味ですね。国民からしたら、これをぜひやってほしいという期待が上がるのは当然ですね。ここで国民の期待を裏切ったら、我々国民民主党にがっかりではなくて日本の政治にがっかりすると思うんです。
主権者は国民だからね。国民の選挙で政治政策が本当に変わるんだと、それを与野党を超えて実感してもらう。それがこの国の政治であるとか選挙のレベルを上げていく大きなきっかけの選挙に、そして政治改革に繋がると思っていますから私は自民党や公明党、財務省や総務省を敵だと思ってません。
共に国民生活を向上させていく。そして当然ですけども財源論もないがしろにせずに、どこで着地点を見出すかという当たり前の議論をしっかりとやっていきたいと思います。
トップ写真:榛葉賀津也国民民主党幹事長 2024年11月15日 東京千代田区 ⒸJapan In-depth編集部