「HPVワクチンキャッチアップ制度」諦めるのはまだ早い。今からでも間に合う!
Japan In-depth編集部 (菅谷瑞希、成沢緑恋)
【まとめ】
・HPVワクチン無料キャッチアップ接種は2025年3月末で終了。
・ 通常の接種スケジュールは6ヶ月だが、最短4ヶ月で3回の接種を完了できる。
・キャッチアップ制度の延長を検討すべき。
以前、「HPVワクチン無料キャッチアップ接種、今年度末終了」の記事において、現在行われているHPVワクチンのキャッチアップ制度を紹介した。
同制度は平成9年度〜平成19年度生まれ(誕生日が1997年4月2日〜2008年4月1日)の女性で、過去にHPVワクチンの接種を合計3回受けていない人が公費でワクチンを受けられる制度である。
このワクチンは6か月で3回接種が原則であるなか、無料接種期間が今年度で終了するため、9月末までに1回目を打つ必要があることを紹介した。
一方、HPVワクチン接種について、厚生労働省から3回接種完了に必要な標準的な接種間隔を取ることができない場合には、4価と9価ワクチンは最短4カ月(2価ワクチンは5カ月)でも完了することができることが示されている。すなわち、1回目の接種を11月中に実施すれば、令和7年3月末までに接種を完了することが可能となるということだ。
■ HPVワクチン接種 短縮版
そこで今回、HPVワクチン無料キャッチアップ接種の対象だが、まだ未接種の人に対し、無料接種の期限が切れる来年3月末までにどのような接種プランがあるか、紹介する。
そもそもHPVワクチンとは、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐワクチンであり、9価ワクチンであれば発症を80%~90%防ぐことができる。(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202306/1.htm) 通常、HPVワクチンはワクチンの種類や年齢によって2~3回の接種が必要で、標準的な接種スケジュールでは完了まで半年かかる。そのため、2024年9月までに1回目の接種が呼びかけられていた。
しかし、こうしたスケジュールの確保が難しい場合、上に紹介したように、最短で4カ月で3回接種を完了することが可能だ。通常の接種スケジュールは初回、初回の2か月後、初回の6か月後、というものだったが、短縮版では、1回目の注射から1月以上の間隔をおいて2回目を行った後、2回目の注射から3月以上の間隔をおいて3回目を行うこと、とした。つまり、まだ1回目を接種していない人も、11月末までに1回目の接種を終えれば、25年度末までに3回目を受け切ることができる。(参考:厚労省「定期接種実施要領」)
ただし、1回目の接種が遅くなると2回目・3回目のスケジュールがタイトになるため、なるべく早めに接種を開始することが推奨されている。
具体的に説明すると、1回目の接種が11月30日になった場合、2回目を接種できる日が年末の12月30日以降となる。医療機関の休診で接種が1月以降にずれ込んだ場合、3回目の接種を3月末までに終えることができない。仮に、2回目を12月28日までに接種できたとしても、3回目を無料で接種できる期間は3月28日から31日までとなり、日程的に非常にタイトになる。すでに11月も中旬を過ぎており、無料キャッチアップ接種を利用したい人はなるべく早く医師に相談することをお勧めする。
また、どうしても4カ月で3回接種することが難しい場合は、2回まで無料で接種するという方法もある。その場合、3回目は有料で接種することになる。その場合の費用は参考までに、厚生労働省は4月以降の公費による補助がない場合の接種費用は、2価ワクチン(※1)および4価ワクチン(※2)では3回接種で約4〜5万円、9価ワクチン(※3)では3回接種で約8〜10万円と案内している。詳しくは医師に確認してもらいたい。
■ キャッチアップ制度延長は?
HPVワクチンは打つ回数が3回と多く、しかも間隔を空けなくてはならないため、接種を終えるのに4〜6ヶ月かかる。キャッチアップ制度は、この年末年始を挟むことから、人によっては3回を来年3月末までに終えることができない人が多数出てくる可能性がある。
こうしたことから、自治体によっては接種費用助成を独自に3回目のみ延長するところも出てきた。宮崎市は、令和6年度中に2回接種を受ければ、3回目の接種費用は令和7年度末まで市独自で助成するとしている。
そもそもキャッチアップ制度をよく知らない人も多い。厚労省の調査では対象者の半数近い人が同制度を知らないと答えたという。新聞やテレビが積極的に取り上げている印象もない。周知が不十分なまま同制度を終えてしまえば、対象者のかなりの数が、無償ワクチン接種の機会を逃すことになる。
そうした懸念から、産婦人科医の中からは、同制度の延長が必要だとの声も上がる。「この制度を知っていたら、打ったのに」。そんな後悔を多くの人がしないように、政府は制度の延長を検討すべきではないか。
※1 2価ワクチン(サーバリックス)
70%の子宮頸がん(16、18型)などのヒトパピローマウイルス感染症を予防するワクチン。
※2 4価ワクチン(ガーダシル)
70%の子宮頸がん・肛門がん(16、18型)、尖圭コンジローマ(6、11型)などのヒトパピローマウイルス感染症を予防するワクチン。
※3 9価ワクチン(シルガード9)
90%の子宮頸がん(16、18、31、33、45、52、58型)、尖圭コンジローマ(6型、11型)などのヒトパピローマウイルス感染症を予防するワクチン。
参考:
HPVワクチンの接種を逃した方へ~キャッチアップ接種のご案内~|厚生労働省
9価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン(シルガード9)について|厚生労働省
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