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.政治  投稿日:2015/3/31

[西村健] 【東京の交通、本質は「混雑解消」】~東京都長期ビジョンを読み解く!その16~


 

西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

「西村健の地方自治ウォッチング」

執筆記事プロフィール

 

今回は、久しぶりに長期ビジョンに戻って考えたい。

「都市戦略2 高度に発達した利用者本位の都市インフラを備えた都市の実現」の政策指針6「誰もが快適に利用できる総合的な交通体系の構築」では、「人や環境に優しい交通体系を実現」することにより、快適で利便性の高い都市となっていることが将来像として記載されている。

地下鉄の駅のホームドア整備、羽田空港へのアクセス強化、自転車走行空間の整備、虎ノ門地区の交通結節機能の強化などが取組まれる模様だ。東京五輪までの目標として、勝どき駅の大規模改良、地下鉄全駅でエレベーターの整備による出入り口からホームまで段差なく移動できるルートの確保、競技会場周辺等の主要駅でのホームドアの整備、虎ノ門地区に新駅設置及びバスターミナルの供用開始などが設定されている。

しかし、交通の利便性について、都民は実際どう考えているのか。「都民生活に関する世論調査」(平成25年8月実施)において、「目指すべき東京の将来像」を聞いた設問では(複数回答)、「鉄道やバスなど公共交通機関の利便性が高い都市」が14.7%と9位であった。ちなみに1位は「震災や豪雨対策が進んだ災害に強い都市」が49.5%、2位は「高齢者施設や介護サービスが充実した高齢者にやさしい都市」が33.5%、3位は「職と住のバランスの取れた生活しやすい都市」が22.7%である。

同調査での世界の都市と比べた現在の東京の「強み」「弱み」についての設問では、「強み」において、「電車や路線バスなど公共交通機関の利便性がよい」が59%とトップであった。

さらに、内閣府が地方創生の関係で行った「東京在住者の今後の移住に関する意向調査」において、「あなたは東京の現在の都心での暮らしにどのような点に魅力を感じていますか(いくつでも)」という設問に対して、「交通の便が良いこと」が77.8%と断トツのトップであった。

つまり、交通は強みであり、魅力として都民は考えているようだ。一方、都は利便性の向上はより必要だと考えている。ここに認識のギャップがある。住民は満足しているが、行政はまだまだ問題があると考えている。世界的に見ても東京都の行政のレベルは高いし、それゆえ高い意識で課題を見つけているのだろう。

たしかに、ターミナル駅での乗り換えや経路は複雑で、30年以上東京で暮らしている私でさえ戸惑う時がある。長期ビジョン104ページで外国人の声が紹介されているように「ルートがわかりにくい」のも確かだ。

しかし、それはこれだけの多くの路線数が複雑に張り巡らされ、利便性を確保してきた代償ともいえる。これだけ多くの路線があれば、複雑化するのは必然で、理解を難しくするのは当然なのだ。

また、こうした表面上の問題よりも、交通において都民が求めているのは「混雑解消」ではないか。本質的な問題に言及しない長期ビジョンに私は失望を感じる。

次回は現在検討中の地下鉄路線について細かく見ていきたい。

 

 

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