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.社会  投稿日:2015/4/14

[瀬尾温知] 【ブラジル人3人目のメジャーリーガー誕生】~海を渡って10年目の快挙~


 

瀬尾温知(スポーツライター)

「瀬尾温知のMais um・マイズゥン」(ポルトガル語でOne moreという意味)

執筆記事プロフィール

 

Chicago White Sox at Kansas City Royals ※トップ画像/ブラジル人MLBプレーヤーのMr.スリーベースに扮する“寄稿子” (C)カリカチュア・ジャパン 参照:THE KANSAS CITY STAR, ESPNKansas City Star / 寄稿者 Kansas City Royals left fielder Paulo Orlando gets the Gatorade shower from Salvador Perez and Erik Kratz following the team's 4-1 win over the Chicago White Sox and Orlando's major league debut on Thursday, April 9, 2015, at Kauffman Stadium in Kansas City, Mo. (John Sleezer/Kansas City Star/TNS via Getty Images)

Chicago White Sox at Kansas City Royals 

ブラジル人3人目のメジャーリーガーが誕生した。ロイヤルズのパウロ・オルランドが、現地9日のホワイトソックス戦に8番レフトで先発出場してメジャーリーグデビュー。海を渡ってから10年目の29歳でMLBプレーヤーになる夢をかなえた。

金属細工師だった父と病院の清掃員として働いていた母が家計を助ける家庭で育ったオルランドは、サンパウロでの少年時代に日系人に混じって野球を覚えていった。特技は走ることで、18歳のときに出場した世界ジュニア陸上競技選手権大会で、200mで21秒10を記録している。

その3年後にリオデジャネイロで開催されることになる2007年のパンアメリカン競技大会へ向けてトレーニングを続けた。ちょうどその時期、陸上の傍ら野球の試合にも出場していたところ、メジャーリーグのスカウトの目にとまり、アメリカの野球界に連れて行かれることになった。

2005年にホワイトソックスと契約。19歳だった。マイナーでプレーしたあと2008年にトレードでロイヤルズに移籍。長い下積み生活が続いた。俊足で強肩のオルランドの弱点は打撃だったが、昨シーズンはマイナーリーグで136試合に出場し打率.301、6本塁打63打点34盗塁と成長をみせ、その年のマイナーリーグ・オールスターゲームにも選出された。今シーズンのスプリングトレーニングでも47打数15安打9打点と首脳陣にアピールし、10年目にようやく開幕ロースターの25人枠を勝ち取った。

ブラジル人として初のメジャーリーガーになったのは2012年にデビューしたヤン・ゴームス(27)。現在はインディアンズの正捕手として活躍している。2人目は2013年に初登板したアンドレ・リエンツォ(26)。2年間で28試合に登板、そのうち21試合に先発して6勝をあげた。今シーズンはイチローが在籍するマーリンズへ移籍。マイナーリーグでシーズンを迎え、メジャー昇格を目指している。オルランドは同郷の年下の選手に先を越されても、「夢を諦めることはなかった。学ぶことが多かったから」と、ベースボールに専心した。

そしてデビュー戦。本拠地・カンザスシティのファンの前に立ったオルランドは第2打席、先発左腕ダンクスの低めのカーブを振り抜いて左中間を破った。陸上競技で鍛えた自慢の俊足を生かして一気に到達した三塁ベース上で、ヘルメットを両手で二度叩いて喜びを表し、ベンチに向けて胸を張った。

「そうは見えなかっただろうけど、すごく緊張していた」と、大観衆の前で打席に立った感想を試合後に語った。ベンチに届いたメジャー初安打の記念ボールは、ベネズエラ出身の捕手ペレスがスタンドに投げ入れるしぐさをして、からかっていたが、「Yeah, he does that.(そういうことするんだよ)」と頬をゆるめた。

昨シーズン、29年ぶりにリーグ優勝したロイヤルズの外野陣は、青木が抜けたものの依然としてメジャー屈指の守備力を誇り、打力も兼ね備えて充実している。レフトはゴールドグラブ賞4回のゴードン。センターはリーグ優勝決定シリーズでMVPを獲得したケイン。ライトは青木に代わって新加入のベテラン・リオスが入った。このメンバーからレギュラーの座を奪うのは難しい。出来ることは、出場機会を得たときに力を発揮することしかない。

この試合を中継したFOX SPORTSのインタビュアーがオルランドにマイクを向けると、チームメイトは恒例のゲーターレードシャワーを浴びせた。びしょ濡れになった29歳は「今年もプレーオフに行く」と、冷えた飲料水などでは冷めやらぬ熱い思いを球場のファンに語った。

そのあと神妙に話した「健康でいられたことを神に感謝したい」との言葉には、故郷を遠く離れての生活で支えになってくれた人、そして母国で活躍を祈ってくれている人々に向けられたものも含まれているように聞こえた。常に抱いていた思いで、ずっと届けたかったメッセージだったからこそ、メジャーデビューでの三塁打に浮かれることなく、感謝を言葉にできたのだろう。

ロイヤルズは12日終了時点で開幕6連勝。その12日のエンジェルス戦でオルランドは2試合目の先発出場を果たし、三塁打を2本放った。ここまでの9打席で打った3本の安打はすべて三塁打。三塁打数のランキングはメジャートップに彼の名がある。メジャーを誇る外野の一角に割って入ろうと、与えられたチャンスで“Mr.スリーベース”がダイヤモンドを快走している。

※トップ画像/ブラジル人MLBプレーヤーのMr.スリーベースに扮する“寄稿子”
(C)カリカチュア・ジャパン
参照:THE KANSAS CITY STAR, ESPN

 

 

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