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.政治  投稿日:2015/5/15

[安倍宏行]【“会派”は地方議会に必要か?】~東京都港区議会、住民の意思が反映されない仕組み~


安倍宏行(Japan In-depth 編集長/ジャーナリスト)

「編集長の眼」

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東京都港区議会が紛糾している。議会ポストを巡り、会派内の対立が激化しているのだ。先の統一地方選を受け、現在の会派勢力図は、自民 13人、公明 6人、共産 4人、民主、維新、社民、無所属議員 10人で作る新会派、無所属 1人となっている。問題となっているのはその議会ポストの配分である。

これまで港区議会は平成3年からドント方式(注1)で議長や副議長、委員会の委員長ポストなどを決めてきた経緯がある。(注2)中小会派に不利にならないように、との配慮からである。

しかし、今回の選挙の結果、新会派10人は、自公13人に次ぐ第二会派となったことから多数会派派の危機感が強まった。ドント方式で決めると、副議長ポストはおろか、委員長ポストも新会派に明け渡すことになるからだ。そこで多数会派は議会ポストを選挙で決める案を提案して来た。これに新会派は猛反発している、という構図なのである。

はてさて、会派とはそもそもなんなのであろうか?参議院のHPにはこう書いてある。「会派とは議院内で活動を共にしようとする議員のグループで、2人以上の議員で結成することができます。会派は、同じ政党に所属する議員で構成されるのが普通ですが、政党に所属していない議員同士で会派を組んだり、複数の政党で一つの会派を構成したりすることもあります。委員会の委員・理事、質疑時間の割当てなどは、会派の所属議員数に比例して会派ごとに割り当てられます。」

これは国政の話だ。国政に見られる会派が地方議会にもある。では地方議会における会派の意味は何だろうか?メリットとして考えられるのは:

 

・政策集団として個々の議員が切磋琢磨し資質の向上を図ることが出来る

・執行部側に要望を伝えたり、交渉がし易くなったりする

 

といったところだろうか?

しかし、地方政治は国政と異なり二元代表制である。多数会派が与党化し、首長の提案にすべて賛成に回るようになれば、議会のチェック機能は形骸化してしまう。千葉県議会議員の水野ゆうき氏(元千葉県我孫子市議)は、会派のデメリットについて、「自分の意見よりも会派の意見に左右されてしまうこと。会派の縛りが生じること」を挙げている。会派拘束がかかれば、議員個々の自由度が奪われ、市民の多様な声に答えることが出来なくなるのだ。

地方議員が会派にこだわるというのならそれは、正副議長ポストや常任委員会、各種審議会の所属の配分や、委員会の委員数、発言・質問の時間配分、法案提出権などあらゆるものが会派の所属議員数で決まるからであろう。

しかるに、港区議会では、自民公明の各会派は、第2会派である“みなと政策会議”に対し、今後はドント方式を止め、選挙ですべてのポストを決めると宣言している。理由は「信頼できないから」というものだ。過去の経緯から所属議員との間に信頼関係が築けない以上選挙を行い、今後4年間はそのポストを堅持するとしている。となると、新会派は主要ポストから締め出され、議会の運営側にまわれなくなる。

これに対し、清家あい みなと政策会議幹事長は、「区民の3分の1の付託を受けて当選して来た議員に対して不当である」と強く抗議をしているが、自公の会派は聞く耳を持たない。

このことを港区民は知っているのか?自分たちの選んだ議員が議会での運営権を奪われると知ったら驚愕するのではないか?15日は最後の代表者会議である。その場でこの問題に決着が着くのかどうか、地方議会の在り方にかかわる問題だけにその行く末を追う必要があろう。

注1)ドント方式

各会派の所属議員数を正数で割り、所属人数の多い順に議席を配分する方式。中小会派にも議席を公平に割り当てられる方式とされている。

注2)平成3年から委員長ポストがドント方式になり、13年から正副議長・監査ポストもドント方式になった。

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