[俵かおり] 【中国、アフリカで圧倒的な存在感】~250億円のアフリカ連合ビルをプレゼント~
俵かおり(在エチオピアジャーナリスト)
アフリカ大陸には現在100万人を超す中国人がいると言われているが、ここエチオピアでは、9万人が住んでいるといわれている。(ちなみに在エチオピア日本人は約200人で、そのほとんどがJICA、大使館関係で、企業関係者が少しいる。民間企業の進出はごく限られている)。
他のアフリカ諸国同様、エチオピアの大規模なインフラ整備のプロジェクト(道路、鉄道、テレコム、橋の建設など)はほとんどが中国によるものだ。首都アディス・アババで最も有名な中国によるプロジェクトの1つは2012年に完成したアフリカ連合の新本部ビル。中国は、高さ100メートル、20階建て、建設費2億ドルのこのビルを「プレゼント」し、アフリカ中をあっと驚かせた。
今ではアディスだけでも、サハラ以南のアフリカで南アを除き初めてとなるといわれる鉄道プロジェクトや、市内を貫通する幹線道路、アディスと地方をつなぐ高速道路の建設は中国によるもので、中国人が茶色の麦わら帽子をかぶり、現地語アムハラ語を話しながら建設現場で働く姿を見るのは日常茶飯事だ。
私たち日本人も、韓国人もアディスの町を歩くたびに、エチオピア人から「チャイナ!」、「ニーハオ!」と声をかけられる。10年ほど前までは「コンニチハ」だったそうだが、圧倒的な中国のプレゼンスに、いつの間にか中国語で話しかけるエチオピア人が圧倒的になった。(ちなみに、私は3年前エチオピアに来たばかりの頃、中国語で話しかけられるたびに「私は中国人ではない!」と言い返していたが、最近はあきらめた。あまりに多く呼びかけるので言い返すのも疲れるのと、考えてみるとこのようなエチオピア人は日本も中国もよく知らないのだということに気づき、無駄なことにエネルギーを注ぐのはやめることにしたのだ。)
中国がアフリカの豊かな天然資源の確保の見返りにインフラ整備をしていることはよく知られている。人権や政治的な問題は一切考慮せず、どん欲に見えるやり方でアフリカに進出する手法は国際社会から時に批判されている。けれども、アフリカに対して、旧宗主国である欧州にありがちな“上からの目線”でなく、アフリカ人を「友」と呼び、実際にアフリカで今、何よりも必要とされているインフラ整備をしているのは中国だ。この現実に、アフリカ人、エチオピア人も素直に感謝をしているというのが、実際にこの地に住み、取材をして分かる現状だ。
エチオピア人はアフリカでも無類の日本人好き。それでもエチオピア人が言うのは、「日本の支援は中国のように私欲がなく、本当にエチオピアのことを考えてくれていて感謝している。でも自分たちにはインフラが必要で、中国はそれをやってくれている。これはありがたい」と言う。
中国のアフリカの関わり方と他国のそれが何が違うかというと、中国はビジネスの相手としてアフリカをとらえていること(先進国は支援の相手としてとらえている面が強い)、プロジェクトの規模の大きさ、資金の巨額さ、そして中国から労働力(=人)を送り込み、建設に直接的に携わっている、ということだろう。そして、その中国人たちは地方の町や村に入り込んで、実際に住んで仕事をしている。国の隅々にまで中国人が進出し、国を作り上げている、といった印象だ。
エチオピアにおける中国人は、おおよそ4つのグループに分かれる。①大使館など外交関係②中国から派遣されている企業関係③小さな小売店などの商売に携わる中国人④工事現場で働く肉体労働者。人数として多いのが②と④である。日本や欧米からは、外交、支援関係者と少人数の企業関係者はいるが、商売人や肉体労働者はほとんどいない。
(道路や鉄道の建設ラッシュであるアディス・アババではあらゆる場所が工事現場となっている。Photo/Kaori Tawara)