[宮家邦彦]【「強行採決」と見出し打つ朝毎東】~“議事妨害”横行する国会に疑問~
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(9月21日-27日)」
「強行採決」を「国会などで与野党による採決の合意が得られず、少数派の議員が審議の継続を求めている状況で、多数派の議員が審議を打ち切り、委員長や議長が採決を行うこと」と定義すれば、やはり「強行採決」なのかなと思う向きもあるだろう。
しかし、今回は連立与党と野党三党の協議で妥協が成立し、これら野党三党も賛成した。これが「強行採決」なら、野党が一党でも採決に反対すれば、与野党が審議を終えた後に多数で法案を可決したとしても、法案採決は全て「強行」になってしまう。
それはないだろう。日本の国会の最大の問題は反対勢力による議事妨害が法案の質疑を事実上阻害していることだ。日本では法案内容の審議の最中ですら、「揚げ足取り、重箱の隅、無通告」といった質問による議事妨害が事実上許されている。
少なくとも米議会でこんなことは起こり得ない。議事を遅らせるには(演説を長時間続ける)フィリバスターがあるからだ。反対議員は延々と演説するが、議場では誰も聞いていない。法案内容の質疑は別途静かに行うのだ。これが真の議会ではないか。
〇欧州・ロシア
22日にEU内相の緊急会合があり、翌日には首脳会談も開かれるというが、10万人を超える難民の「割り当て」には合意できないだろう。そんな中で、ギリシャでは前首相率いる急進左派が再び第一党となった。ギリシャ人は一歩も引かないようだ。
〇東アジア・大洋州
20日から日本の外相が訪露している。目的は露大統領の訪日と平和条約締結交渉の早期再開を働き掛けるのだそうだ。しかし、話し合いが進展する見込みは極めて低いだろう。それでも、ロシアとの対話は重要であり、決して絶やすべきではない。
〇中東・アフリカ
27-28日はイスラエルで仮庵(かりいお)祭がある。ユダヤ教の祭でスコットと呼ばれる。エジプトから脱出し荒野で40年間、仮小屋で過ごしたことを記憶するためだ。ScottではなくSukkot、ユダヤ系に対し「Happy Sukkot!」と挨拶できれば一人前だ。
〇アメリカ両大陸
中国国家主席の訪米日程がローマ法王とほぼ重なる。CNNは法王訪米につき特別番組を組んでいる。直前の法王キューバ訪問も大きく報じられた。法王の米議会演説は習近平ワシントン入り当日だ。今回の中国首脳の訪米タイミングは最悪ではないか。
米内政では大統領選でトランプ候補の勢いが下降している。16日の共和党系候補の第二回目TV討論会で発言に窮する場面が少なくなかったからだ。当然だろうが、今も共和党の上位三位はすべて非既存政治家だ。米庶民の政治不信は続いている。
〇インド亜大陸
22日に米印戦略・商務対話の第一回会合がワシントンで開かれる。米中S&EFの米印版だろうが、米印の方が話は進むだろう。
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。