.社会  投稿日:2018/2/21

特別養子縁組のこれからを考える

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 Japan In-depth編集部大川聖

 

【まとめ】

・特別養子縁組の法改正に向け、年齢要件、実父母の同意等の成立要件検討中。

・子どもにとって”永続的な家族関係”を保障するべき。

・特別養子縁組の現状を広く知らせるべき。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真の説明と出典のみ記されていることがあります。その場合は、http://japan-indepth.jp/?p=38568 のサイトでお読み下さい。】

 

2017年は特別養子縁組制定30周年だった。法改正へ向けて、特別養子縁組の現状を知り、どうしていくべきか考えるシンポジウムが2月19日都内で行われた。国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ日本財団主催、「特別養子縁組のこれから~永遠の絆、どう保障する?」と題したシンポジウムは、基調講演に加え、Japan In-depthチャンネル

”ROSE EYE”にも出演している女優サヘル・ローズさんはじめ、当事者によるパネルディスカッションも行われ、生の声が来場者に届けられた。

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写真)国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表 土井香苗氏
(C)Japan In-depth編集部

 

まず、国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表の土井香苗氏が、国連の代替的養護に関する指針と子どもの権利条約から見た子どもの社会的養護のあるべき姿を提示した。親子の間に問題が発生した場合まず、家族の養護を受け続けられるようにする活動又は家族の養護に戻す活動をし、家族統合を目指す。それが失敗した場合は永続的解決、つまり養子縁組をする。養子縁組が不可能又は子どもの最善の利益でない場合に代替的養護として、里親委託か、適当な施設への収容という方法がある。

 

しかし、土井氏は「これは紙の上の話で実際は条約で定めた順序通りになっていない。場当たり的な対応ではなく、子どもの状態に合わせてベストな(社会的養護の)あるべき姿を探していくシステムを日本でも作っていきたい」と話した。

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写真)児童の養護と未来を考える議員連盟会長 塩崎恭久衆議院議員 
(C)Japan In-depth編集部

 

元厚生労働大臣で児童の養護と未来を考える議員連盟会長の塩崎恭久衆議院議員は、「来年の通常国会で民法改正を目指して活動している。法改正の論点は、年齢要件、児童相談所所長が養親の代わりに申し立て権をもつこと、実親が翻意をするタイミングである。こどもは家庭で育てることを原点にして議論していかなければならない。」と述べた。

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写真)精神科医師・福岡市こども総合相談センター所長 藤林武史氏 
(C)Japan In-depth編集部

 

続いて、精神科医師で福岡市こども総合相談センター所長の藤林武史氏が「特別養子縁組の現状と課題:民法改正への議論に向けて」と題し基調講演を行った。児童養護施設に入所している児童29979人のうち、6割の18035人が0~6歳の時に入所しているという統計(平成25年時)結果を示した。

 

さらに、この6割のなかで6558人の子どもが乳児院からの継続入所である。藤林氏は「改正児童福祉法(2016年)、里親委託ガイドライン(2017年)を受け、養子縁組が増えるはずだが、現状はそうなりにくい」と懸念を示した。

 

藤林氏は、これまで特別養子縁組を保障されていなかった要因の一つに「”パーマネンシ―”の認識が関係者に希薄である。」ことを挙げ、子どもが永続的な家族関係を続けられる環境を整えることの重要性を指摘した。さらに、30年前から変わっていない法律が現状と合っていないという法的要因も指摘した。

 

そして法制度上の問題点を5点挙げた。

 

①実親家庭の元に復帰する可能性がない子ども、あるいは、家庭復帰が不適切でその養育環境の改善が見込めない子どもが、代替養育(施設・養育里親)に長期間措置されている。

 

②このような大勢の子どもたちに対しては、本来的には、永続性を保障するため、児童相談所は特別養子縁組の機会を保障すべき。

 

③民法上は、父母が行方不明や父母による虐待、悪意の遺棄、その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合は裁判官の判断により認容はできるとなっているが、申し立てを行うのは養親候補者であり、児童相談所長は申し立て権を持たない。

 

④養親候補者が申し立てたとしても必ず認められる保証はなく、養親候補者や子どもの心理的負担は大きい

 

⑤その結果、父母の同意がない場合は、特別養子縁組の機会が保障されていない場合が多い。しかも、年齢制限があり、父母の同意を待っている間に6歳、8歳を超えてしまう。

 

藤林氏は「特別養子縁組は親の同意によって成立し、原則6歳未満である。断念したケースも年間270件(平成28年調査)ある。現在、年齢要件を引き上げること実父母の同意等の成立要件を2段階手続きにすることが国の検討会で検討されている。」と述べた。

 

藤林氏は「こどもに永続的な家族を保障する特別養子縁組制度を保障することが可能になっていくかもしれないという考え方は示されたが、実現するかが今後の課題である」と指摘し、「こういう議論がなされていることに関心をもってどうあるべきか考えてほしい。」と述べた。

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写真)パネルディスカッション登壇者
(C)Japan In-depth編集部

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写真)左から浅賀明日香氏、星子良枝氏、大久保文氏 
(C)Japan In-depth編集部

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写真)左からホッブス美香氏、藤林武史氏
(C)Japan In-depth編集部

 

続いて、「永遠の家族の絆とは?―当事者の視点から」と題し、パネルディスカッションが行われた。女優サヘル・ローズ氏は、「(親子が)一対一の関係だからこそ教えられることはあると思う。施設では、一人の大人が大勢の子どもを見なければならないので、子どもは疎外感や孤独を感じる。当時は壁の外の一般生活が羨ましかった。また、一般常識も遅れがあった。」と4歳から3年間過ごした孤児院での生活を振り返った。

「早い段階から家族になる橋渡し、道順を作っていかなければならない。日本の社会的養護下で生活している子どもたちが抱えている現状に向き合い、制度を変えていくことが必要だ。」と改めて指摘した。

 

養親の立場から参加した浅賀明日香氏は「夫婦共に特別養子縁組に対してもともとさほど抵抗はなかった。問題だと思うのは、周りに(養親の)経験者がいなかったことだ。それによって不安もあった。自分が経験者の立場として伝えていきたい。」と述べた。

 

施設と里親家庭の両方で育ち、二人の子どもの母でもある星子良枝氏は「2歳から7歳まで施設で育ち、その後8年間里親家庭に行った。里親に出会ったのは4歳の時だったが、実母に連絡がつかず同意を得られなかったため、里親家庭に行くのが遅くなった。里親家庭では、施設との環境の違いに戸惑い、慣れるのに時間がかかり、結局受け入れられずに高校3年間は自分の意思で家を出て施設で生活した。自分が母親になって子どもに与えている愛情を当時の自分が受けることができなかったと思うと悲しい気持ちになる。子どもは早い段階から家庭で親からの愛情を受けて育つことが重要である」と話した。

 

跡継ぎが必要な家庭で養子として育てられた大久保文氏は、子どものための養子縁組と対極にあるのが家のための養子縁組のように言われる事に対して、「自分の経験からいうと、家のための養子縁組であっても結果的に子どもが幸せであるならば(よい)。特別養子縁組が法的な仕組みとして上手く生きた結果が家のため(の養子縁組)なのではないか。」と述べ、子どもが幸せであることが第一で、養子縁組した背景で安易に区別するべきではないとの考えを示した。

 

多くの子どもの里親であるホッブス美香氏は「子どもの育った環境は大事だと実感する。子どもにとって乳児院から児童養護施設に移る、里親家庭に入るストレスは大きい。」と述べた。

 

パネルディスカッションを受け、一般の参加者からは、養子縁組が上手くいかなかった時の対処が不透明であること、里親マッチングの難しさも指摘された。

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写真)シンポジウム参加者の様子 
(C)Japan In-depth編集部

 

イベント後、一般の参加者に話をきいた。30代女性は「全く知らない話ばかりだった。自分の周りで不妊治療していて、血縁にこだわらなくてもいいのではないかと気づき始めている人もいる。もっと発信してもらえたら、門戸が開かれるのではないか。」と感想を述べた。

 

60代男性は「障がいや病気の子どもの養子縁組も課題である。こどもを主体で考えるべきである。」という。

 

子どもの未来を社会全体で支えていけるように考えていくべきと実感し、メディアとしてもこうした情報を積極的に発信していきたい。

トップ画像:パネルディスカッションの参加者
(C)Japan In-depth編集部

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