[宮家邦彦]外交・安保カレンダー(2013年11月11-17日)
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
今週筆者が個人的に最も気になるのは7-8日にジュネーブで行われた主要6ヵ国(P5+1)・イラン核協議の行方だ。報道によれば、同協議では結局合意に至らず、20日にジュネーブで協議を再開するらしい。
協議前にイラン外相は「合意は可能」としたが、協議終了後に米国務長官は「合意は急がず」と述べた。EU代表が語った「多くの具体的進展があったが、一部意見の相違が残った」というのが最も事実に近いだろう。問題はこれをどう解釈するかだ。交渉には潮時というものがある。今回は双方の意見がかなり近づいたのだろうが、これが更なる接近の序曲なのか、それとも別の軌道を動く惑星同士の最接近点なのかでは、雲泥の差がある。経験則上、筆者は更なる接近が容易だとは思わない。
理由は幾つかある。第一にイラン国内情勢だ。ロウハニ・イラン大統領はハーメネイ最高指導者から一定の交渉権限を得ている筈だが、それには自ずから限界があり、無限の譲歩など不可能に近いだろう。ロウハニが「次回の合意は可能」と述べ、ツイッターで「欧米はこの貴重な機会を逃さないでほしい」と書いたのは、これ以上の大幅な譲歩はできないと訴えているように聞こえる。今回イラン側は「可能な譲歩は全部やった」と感じているのではないか。
第二の理由はエルサレム、ワシントン、コムの強硬派間のトライアングルの存在だ。相手の強硬姿勢で自らの強硬論を正当化する彼らの「美しき共存関係」は今も健在だ。彼らがロウハニの微笑路線を潰しにかかるのは目に見えている。
第一回目の交渉で基本合意に達しなかったことは、強硬派間の共存関係にとって朗報だ。イスラエルと革命ガードはそれぞれ、米国とイランの交渉団がこれ以上妥協しないよう最大限の圧力を掛けるだろう。これから20日までが勝負である。
20日以降も、ロウハニが「貴重な機会を逃すな」などと繰り返すようなら、状況は各国の強硬派にとって有利となるだろうし、ロウハニの政治力が傷付く恐れすらある。逆に、第一段階の基本合意に進むなら、ある程度期待が持てるだろう。これ以外にも、以下の通り、重要なイベントが目白押しだが、もうこれ以上コメントするスペースがない。
11-12日
- 中国第18期中央委員会第3回総会(三中全会)
11-22日
- 国連気候変動枠組み条約第19回締結国会議(COP19)(ワルシャワ)
12-17日
- APEC首脳会議(ホノルル)
15-17日
- コモンウェルス首脳会議(スリランカ)
15-26日
- チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世、来日
16-17日
- 安倍首相、ラオス、カンボジア訪問
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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