.国際 投稿日:2013/11/5 
[宮家邦彦]外交・安保カレンダー(2013年11月4日-10日)

宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
今週は大ニュースこそないが、興味深い日程が目白押しだ。(文中敬称略)
4日 エジプト・モルシ前大統領の初公判
- モルシ(アラビア語の発音は「ムルスィ」に近い)前大統領は7月3日のクーデター自体を認めていないから、裁判は長丁場になるだろう。前日3日にはケリー国務長官がカイロ入りしているが、米国に状況を変える力はない。オバマ政権の「不介入主義」はエジプトの現実を追認するだけ。この勝負、エジプト軍部の勝ちである。
5日 米国で州知事・市長選挙
- バージニア、ニュージャージー両州とニューヨーク、ロサンゼルス、アトランタ、ヒューストンなど各市で選挙がある。地方選挙とはいえ、オバマ大統領はどの程度関与しているのだろうか。大統領のレームダック化とヒラリー・クリントンの人気がちょっと気になるところだ。
6日 タジキスタン大統領選挙
- 現職ラフモン大統領の信任投票に過ぎず、新味は全くない。だが、9月には投票日前日に首都で爆破テロを計画していた「イスラム過激派メンバー」が10人拘束されている。1994年から権力の座にいるこの大統領、何時まで居座るつもりだろう。タジクを将来イスラム過激派の巣としない条件は民主化か、それとも、長期政権か?
7-8日 主要6ヵ国(P5+1)とイランによる核協議(スイス・ジュネーブ)
- ハーメネイ最高指導者が3日、ロウハーニー大統領の核問題交渉チームにつき、「妥協していると見做す資格は誰にもない」と述べ、交渉に懐疑的な国内の保守強硬派に「重責を担う者の士気を挫くな」などと呼びかけたそうだ。これがハーメネイの本音なら、一部のナイーブな米国人はイランが本当に変わるとでも思うかもしれない。
- このハーメネイ・ロウハーニーの連携はなかなか見事だ。ジュネーブでの交渉でイランの「微笑外交」に米国が関心でも示したら、イスラエルは本当に困るだろう。案の定、テルアヴィブは西岸に新たな入植住宅1700戸の入札を行うと発表した。さすがは百戦錬磨のネタニヤフ首相だ、将来への布石は着実に打っている。
8-10日 岸田外相、イラン訪問
- 9日には日イラン外相会談を行う。それにしても、日本が「P5+1」に入らなかったのは何故なのか。中国が反対したから、というのが定説だ。日本は中東和平交渉の「カルテット」にも入れなかった。1990年代と比べると、中東地域での日本の地盤沈下が気になる。岸田外務大臣には是非頑張って頂きたい。
9-12日 中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議(北京)
- いわゆる「三中全会」、経済政策で重要決定があるかもしれない。また、先週の天安門前車両炎上事件の処理も気になる。今のままでは、中国は少数民族問題で一層強硬となり、逆に、ウイグル人を過激化させるのではないかと危惧するのは筆者だけだろうか。
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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