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.社会  投稿日:2015/4/14

[為末大学]【“すごい人”=“人気”とは限らない】~メディアがもてはやすもの~


為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)

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各業界ですごいと言われる人はあまり表に出ないで、この人がという人が人気になったりするのをみて、いつもやるせない気持ちになる。話してみるとどの業界でも同じようなことがあるようだ。
すごいと言われる人は、比較的謙虚で、且つ事実に対して誠実な態度をとる。謙虚であるから、表に出ようとするよりも自分がやっている本業にフォーカスしているので、偶然出ることはあってもあまり気づかれていない事も多い。さらには事実に対して誠実なので、世の中がびっくりするようなキャッチーな言葉を使わない。ついに秘密がわかった、とか、必ずなになにできる方法、というやり方をしない。そういう可能性もあると言うし、今はまだわからないと言う。だから一般の人からすると面白くないと言われてしまうことがある。
一方で人気になれる人は、自分を演出することに長け、はっきりとした言い方をする。演出に長けているから、大きく見せるのがうまい。また社交的で人のつながりをたくさん持ち、うまくブランドが自分より高い人と並ぶことで自らを引き上げていく。また、言い方がはっきりしているから、聞いている方はすっきりとして、だからファンが増える。こういう人がすごくないとはもちろん限らないのだけれど、そういう手法さえ使えれば業界内での評価はあまり関係なく、ある程度社会の評価を得られてしまうというのが厄介なところだなと思う。
そもそもマスメディアにおいては、時間的制限があり、短文ではっきりと世の中が面白がる話が好まれるし、一瞬でわかるキャッチーなものが求められていると私は考えている。だから静かで誠実な人ははまりにくいのだと思う。そういった可能性は否定できないですね、よりも、間違いなくそうですよ、の方が向いている。
もちろん業界でもすごいと言われていてさらに人気になる人もいると思う。もっとそうなればいいと思うけれど、時に業界内での実力評価と実社会の評価がずれるのがなんともやるせない。

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