[宮家邦彦]【中国南シナ海人工島、米・軍事的示威行動開始】~意外なオバマ政権の強硬策~
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(2015年5月25-31日)」
今週も南シナ海の中国製人工島の話から始めよう。前回は、「(中国は)こんなことをして、徒で済むと思っているのかね」と書いたが、米国は中国の現状変更行為に対し遂に軍事的示威行動を始めた。遂に来るべきものが来た、ということだろう。中国の人民日報系「環球時報Global Times」はどこからが公式でどこからがブログなのか良く判らない国際専門紙だ。その25日付紙面に「空中・高速で交戦の可能性ありExchange of fire possible due to high flight speed」と題する論評が掲載された。
やはりケリー国務長官訪中は失敗だったのだろう。その直後、米海軍はP-8ポセイドンを人工島の上空に派遣した。わざわざCNNの安全保障担当記者を同乗させ、中国側の無線による警告をそのまま報じさせた。次は米海軍艦船を派遣するのだろう。
正直なところ、オバマ大統領に強硬策をとる勇気などないと思っていたので、米側の素早い行動にはちょっと驚いた。ここは米政府全体がまとまっているようで、政策にブレはなさそうだ。ケリー長官に対する中国側対応がよほど「木鼻」だったのだろうか。
〇東アジア・大洋州
そのアジアで今週はASEANが面白い。24-29日にベトナムの副首相と外相がタイとミャンマーを訪問する。28日には中国副首相がインドネシアを訪れる。29-31日には恒例のシャングリラ会合がシンガポールで開催される。今年も中国が孤立するのか。
シャングリラでは日韓防衛大臣会合が予定される。この他にも、今週は台湾の野党民進党党首と沖縄県知事がそれぞれ訪米する。米軍基地反対の沖縄知事が会えるのはせいぜい国務次官補(局長級)止まりだが、今回米側の対応はどうだろうか。
〇欧州・ロシア
EUでは相変わらず様々な会議が開かれる。ロシアでは25-26日にソチで上海協力機構の会合が、26日にはモスクワでBRICSの会合がそれぞれ開かれる。更に、29日にはカザフでCIS諸国会議、モルドバで黒海経済協力機構の閣僚会議がある。
日本との関係では29日に東京で日本EU首脳会議がある。経済連携協定(EPA)の早期妥結に向けて協議は進むのだろうか。EU側からはユンケル欧州委員長とトゥスク大統領が参加するという。
〇中東・アフリカ
先週のラマラ陥落は大ショックだったが、それ以上の衝撃は現職の米国防長官が「イラク軍は劣勢ではなかった、戦おうとしなかっただけだ」とコメントしたことだろう。天に唾する驚くべき発言。カーター長官もイラクには遂に「切れてしまった」のだろうか。
〇アメリカ両大陸
25-26日、中国の国務院総理がチリを訪問する。片や、日本の総理は安保法制審議で思うように外国出張ができない。日中のこのギャップを日本の国会はおかしいと思わないのか。首相や閣僚を引き留めるなら、それに相応しい審議をして欲しい。
〇インド亜大陸
27-28日に米印ビジネス評議会が米国のメディア・エンタメ業界関係者を率いて訪印する。31日からインドの大統領がスエーデンを訪問する。
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。