[Japan In-depthチャンネルニコ生公式放送リポート]【安保法案成立、これから日本はどこへ行く】~中野晃一上智大学教授に聞く~
2015年9月30日放送
Japan In-depth 編集部(Sana)
9月19日に安保法案が可決・成立した。可決されるまでの間、国会前で多くの国民が反対デモに参加し、国会では軸のぶれた議論が行われ、荒れに荒れた様子が報道された。今回のJapan In-depthと週刊朝日のコラボ放送では、安保法案を巡って見えたデモ参加者や国会議員の姿を踏まえつつ、安保法案可決により、今後の日本がどのように変化するのかを議論する。ゲストには、上智大学国際教養学部教授中野晃一氏 週刊朝日記者古田真梨子氏を招いた。
国会前のデモの様子は、連日メディア各社により報じられた。なぜこれほどまで多くの人がデモに参加したのか。中野氏は「組織的な動員ではなく、老夫婦や子連れなど、多様な世代が参加できたのは、デモ主催者の雰囲気作りが功を奏したからと言える。もちろんデモ参加者の誰もが安保法案に対して怒りを抱いていたが、それと同時に彼らは、自分の意見を主張できる場ができたという喜びを見出していたのではないか」と指摘した。また「若者の力が大きく影響したのか」というAyaの質問に対し、「きちんと勉強した学生が、自分たちの言葉で演説をした。その姿に、学生でない層も鼓舞され、多様な年齢層の参加を促したと言える」と答えた。
国会前のデモが活発に行われたのに対し、国会内の議論は低迷した。「安倍総理の政権運営は妥当だったか」と安倍編集長が尋ねると、中野氏は「違憲立法というスティグマを初期の段階で拭えず反対意見を強めたこと、そして与党が『安保法案のメリット』ばかりを訴えたことにより、議論が深まらず、法律としても国会答弁としても生煮えなまま終わってしまった」と述べた。
また安倍編集長が「与党の軸がぶれる一方で、野党が対案を出さなかったことも問題だったのでは」と指摘すると、中野氏は「世論調査よる反対意見が大きかったため、野党は反対せざるを得なくなった。法案の修正協議でも対案は採用されなかったが、修正協議には安倍首相寄りの野党議員が多く参加したため、自民党によって形を整え行われたにすぎない」と指摘した。
今回の安保法案成立で行われた「解釈改憲」は、戦後70年の間に政府が行った解釈とは異なる。中野氏は「解釈改憲そのものは悪いとは思わないが、今回の解釈改憲は9条の縛りを超えてしまっている。違憲かどうかが議論されてきた自衛隊も、9条に沿った活動により国民に受け入れられてきた。今回の解釈改憲で、『何でもあり』が許されるのではないか」と懸念を示した。
また中野氏は、「自衛権は9条に反していない」と自衛隊は合憲とした上で、「日本を侵害していない国と日本との交戦権を認める集団的自衛権は、明らかに9条に反する。憲法の議論を置き去りにし、違憲な法律を成立させたのちに憲法を変えようとする与党の姿勢は、立憲主義という観点から問題がある。」と見解を述べた。
集団的自衛権の是非に関して、安倍編集長が「日米安保条約があったからこそ、これまで日本は平和だった。アメリカにとって、日本が集団的自衛権を持たないのはアンフェアなのではないか」と言うと、中野氏は「これまでの国際社会で集団的自衛権が行使された例はベトナム戦争やアフガン侵攻など。アメリカに従属的な今の日本が、アメリカからの戦争参加の要請に反対できるとは思えず、専守防衛とは異なる戦争をする危惧がある」と述べた。
衆参合わせて200時間かけられたが、本法案は議論が深められたとは言えない。
議論が足りないのではなく、そもそもこの法案が何かがわからないまま可決されたのは、「(政権が)建設的な議論をする気がない現れ」と中野氏は指摘する。では、どうすれば国会が建設的な議論をする場になるのか。議論では与党が総理大臣候補を後継者として育てる、女性を大臣に積極的に登用するという意見が出たが、中野氏は「一回生・二回生という若い層の女性議員を増やすことが、ゆくゆくは国会の議論を変えるのではないか」と述べた。安倍編集長は「女性の登用も重要だが、今回デモに影響を与えた若者たちが、地方議員選挙に立候補し、硬直化した地方議会を変える力になれば、日本は変わるのではないか」と主張した。
*トップ写真:©Japan In-depth編集部
(この記事は、ニコ生【Japan In-depthチャンネル】2015年9月30日放送 を要約したものです。ニコ生【Japan In-depthチャンネル】))