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.政治  投稿日:2021/9/11

総裁選「改革マインドが強い人に勝って欲しい」日本維新の会馬場伸幸幹事長


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

編集長が聞く!」

【まとめ】

・維新は与党の補完勢力としてやってきたわけではない。

・総選挙後キャスティンブボートを握ることがあれば、自分たちの政策が実現できるかどうかが最大の判断基準。

・自民新総裁には改革マインドが強い人になってもらいたい。

 

自民党総裁選に注目が集まる中、野党の存在感は薄れる一方だ。衆院選前に野党の結集はあるのか?立憲民主党の平野博文選対委員長に引き続き、日本維新の会馬場伸幸幹事長に話を聞いた。

安倍: まず、一年間を振り返って、菅政権をどのように評価しているのか?

馬場氏: 「菅総理に菅官房長官なし」と言えるのではないか。総理自身は一生懸命やっているのだけれども、政権の土俵を作ったり掃いたりする役割の人間の実力が発揮されていなかったといえる。

安倍: 菅政権の評価できる部分は?

馬場氏: 携帯電話の料金引き下げは評価できる。これまでも携帯電話の料金が高すぎることは指摘されていたからだ。また、私が堺市の市会議員をやっていた際、不妊治療に対するサポートに力を注いでいた。しかし、地方でどれだけ議論をしたとしても、保険適用にしてもらわなければ解決できない問題で、議論が行き詰っていた課題だった。少子化対策への近道として、子供を作りたいけれど出来ない人たちに対して、医療的なサポートを行って子供が出来るのであれば、税金を使ってサポートをするのは当たり前のことだ。菅総理が英断で不妊治療政策を実行したのは評価出来た。菅政権は、これまで言われ続けていたような国民の身の回りの課題に対して切り込んでいたのではないか。

安倍: 菅政権のコロナ対策はどう評価しているか?

馬場氏: コロナウイルスに関しては、これまで誰も経験したことが無い出来事だ。経験したことの無い出来事に対して、永田町、霞が関の人々はとても弱い。そのため、危機管理や緊急事態の対応は苦手な分野だ。だからこそ、後手後手の対応になっていた印象がある。

安倍: コロナ対策の何が問題だったのか。

馬場氏: 状況が常に変化するからこそ、先読みが重要で、即応性のある対応が必要である。そして、国民が納得できるような対策を次から次へと示していかなくてはならない。

安倍: 感染症も広義の安全保障と言える。憲法には緊急事態条項が無い。万が一細菌兵器が国内に入ってきたとしても、今の法体系ではロックダウンも出来ない。どのように考えるか。

馬場氏: 政治家の決断だけでは出来ないことがある。アフガニスタンの邦人救出の問題に関しても、自衛隊は韓国よりも早く準備して、現地入りできていたが、安全法制の間で逡巡していた間に、韓国は救出出来た。日本が動き出した時には時すでに遅しだった。一分一秒を争うような時に、動ける政治家も必要であるが、憲法をはじめとした法体制に関しても、その都度対応しなくてはならない事が、コロナやアフガニスタンの問題から国民に伝わったのではないか。

安倍: 政権交代のためには野党が結集しなければならない。「維新の会は与党なのか野党なのかよく分からない」と他の野党は言っている。今後の勢力図をどのように考えるか。

馬場氏: 「(維新は)与党か?野党か?」と言う考え方は、「永田町病」にかかっていると言える。地方議会は二元代表制、国会は議院内閣制と制度は違うものの、地方議会では首長が市民にとって良くないことをしようとした場合、与党議員でも反対する。首長が良いことをしようとした場合は、野党議員でも賛成する。何党であろうとも、市民のためになることであれば賛成すべきで、市民のためにならないならば反対すべきだが、そうなっていないことが無党派層が増加している最大の要因である。国会が議院内閣制であったとしても、国民のためになるなら賛成し、良くない場合は反対して、修正させていくという政党の在り方を考えていかなくてはならない時代になったと思う。

これまで予算に関して反対もしてきた。維新の会は与党の補完勢力としてやってきた訳ではない。誰が新総理になったとしても、このスタンスは変わらない。

安倍: もし、衆議院選挙で与党も野党も過半数を取れず、維新の会に協力の声がかかった場合、閣内に入るのか閣外協力を行うのか?

馬場氏: 具体的なことは分からないが、維新の会がキャスティング・ボートを握った場合、維新の会として訴えてきたことを本気でやる姿勢があるのかどうかが協力の判断基準になる。大臣になりたいと思っている訳ではないので、閣内か閣外かという点に関しては、ケースバイケースだ。自分たちの政策が実現できるのかどうかが最大の判断基準だ。

安倍: 立憲民主党は共産党と選挙区調整をしている。

馬場氏: それは永田町病の重症患者と言える。政治は妥協の産物であるという側面はあるものの、超えてはけない線がある。それを超えてしまうと、政治ではなく、ただの権力遊びになってしまうと思う。

安倍: 立憲民主党はその線を越えてしまったということか。

馬場氏: 立憲、社民、共産、れいわ、市民連合の政策協定には驚いた。自分たちからは考えられない。「勝って政権を取ったら良いんだ」という考え方は、民進党がいい例だった。考え方が違う人たちが集まった結果が、あのような形になった。歴史から学ぶべきではないか。

安倍: その時から何も変わっていないということか?

馬場氏: そうですね。

安倍: それには維新は与しないと?

馬場氏: そうです。

安倍: 誰に次の総理・総裁になって欲しいと考えているか?

馬場氏: 改革マインドの強い人になって欲しい。改革マインドの強い人が総裁になった場合、維新のカラーが消えてしまうのではとよく言われるが、消えてもいいと思っている。改革競争を行って、日本が良くなっていくのであればそれでいい。

総裁選挙だからこそ、多くの候補者が自分のカラーを出しながら理想を語っているが、就任してから行動が伴うのかを拝見させていただいて、出来る事は協力し、あかんことは反対・修正していきたい。だからこそ、衆議院選挙で数を増やしていかなくてはならない。

 ▲写真 ⓒJapan In-depth編集部

安倍: どなたが総裁選に勝つと思うか?

馬場氏: 二年前から言っているが、これからの自民党は、エスタブリッシュメント対非エスタブリッシュメントの戦いになると思う。まさしく今回の場合、エスタブリッシュメント対非エスタブリッシュメントの構図が出来つつある。個人的には、改革するために、非エスタブリッシュメントに勝って欲しい。

安倍: 非エスタブリッシュメントとは?

馬場氏: 菅さんとか二階さんですかね。良い所も悪い所もありますが、基本的なマインドとしてあの人たちは非エスタブリッシュメントだと思う。

安倍: 非エスタブリッシュメントだと、二階さんたちが誰を応援するのかが焦点になるということか。高市さんは女性宰相という点で日本にとって大きな変化になると思うが、安倍前首相がバックアップすることで、傀儡政権になると心配する声もある。

馬場氏: 政治の世界は強烈な社会なので、自民党の女性で総理を目指すのであれば、党内の女性議員を固めるべきだ。推薦人に関しても、20人男性の議員の名前を借りるのではなく、女性で20人そろえていたら、党員も国民も期待すると思う。大臣も半分くらい女性にしたらいい。その土俵のためには、女性議員を固めることをしなくてはならないと思う。総裁選挙というプロセスの中で、だれに応援してもらったのかが、就任してからの政治行動に直結すると思うので、初志貫徹で改革を進めてくれる人になって欲しい。

安倍: 今回の衆議院選挙では、どういった戦略で、どういったものを打ち出していくのか?

馬場氏: 今、国民は自民党総裁選挙ではなくて、コロナに一番関心がある。一年八か月程度経って、コロナも異なるフェーズに入って来ているので、選挙はコロナをどうするのかが焦点。現在ピークアウトしてきたという話だが、今年の冬から来年にかけて、第六波が来ることを前提にしてコロナ対策を打ち出していかなくてはならない。

その柱は2つあって、命を守ることと、経済を守ることだ。命を守るのは、ワクチンや治療薬の治験を進めていくことだ。重症化を防ぐには抗体カクテル療法が必要だが、法律の規制で病院でしか出来ない。自宅療養されている方でも抗体カクテルを使えるような体制作りが必要だ。病院も、「あの病院がコロナの患者を受け入れないから命令を出すんや!」という法律の建付けになっていても、技術的・人的に受け入れられない病院も多くある。専門病院を用意して体制を整え、国民に安心感を持っていただく事が必要だ。経済はガタガタになっているので、そこを復活させていかなくてはいけない。

日本のGDPはこの30年間で上がっていない。これを右肩上がりに上げていく。そして、非正規雇用の方を含めて、コロナで傷ついている国民の皆様方と、他の国民の間に出来た格差を解消していくことが必要だ。経済成長と格差社会の解消がアフターコロナの政治の大きな所だ。

そこで、我々は「日本大改革プラン」と言うものを打ち出し、税と社会保障と規制緩和をはじめとする成長分野の創出を考えている。この政策は一見アベノミクスみたいだが、アベノミクスの税と社会保障の一体改革は、消費税を上げるためだけの理屈だった。安倍さんの時は「100年安心・安全プラン」が出来ました、と言っていたが、安心・安全なのは制度で、国民の生活は安心・安全にはなっていない。だから、抜本的に税制を改革する。社会保障も、格差社会を解消するための社会保障制度に改革する。これを打ち出して、皆さんに夢や希望を持っていただけるような仕組み作りを訴えていく事が、今回の一番大きな戦略の柱だ。

 安倍: 今回の立候補者はもう固まっているのか?

馬場氏: 毎週末に面接させていただいてますが、80人くらいの候補者になると思う。

安倍: 勝算は?

馬場氏: 週刊誌とかの下馬評はいいが、選挙は下馬評がいいと逆の結果が出る事が多いので。

安倍: それは、維新に期待する声があるという分析か?

馬場氏: 維新は大阪で生まれているので、大阪近畿圏以外では、「維新はどんな政党なんだ」という風潮があったが、段々と維新スピリッツはこういうものであると浸透してきた。東京でも若い、柳ケ瀬裕文参議院議員や音喜多駿参議院議員が誕生して、彼らの周りにそういった輪が集まっているので、一歩ずつ着実にやっていくしかない。

安倍: 野党を選ぶときに維新を選んでもらえるようになるといい。

馬場氏: そうだ。政治は国民のためにやっている事なので、党利党略ではなく、国会でも一つの議題に対して、与党が出すA案と心ある野党が出すB案で議論を戦わせる仕組みに変えなくてはならない。野党がスキャンダルを追求するといった国会に国民は辟易している。

(インタビューは2021年9月8日に実施)

トップ写真:ⓒJapan In-depth編集部




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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