外交も野球も重要なのは「全体の流れ」:日本メディアに欠ける視点

宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2025#43
2025年11月3-9日
【まとめ】
・高市外交と米大リーグに関する報道には、「全体の流れ」をみようとしない日本メディアの悪癖が垣間見える。
・特に外交では、安保政策面で、対中戦略を踏まえた米外交の文脈理解が重要。
・ガザ情勢は依然として停戦に至らず、緊張緩和の兆しが見えない。
先週は高市外交の始動と米大リーグの所謂「World」シリーズが重なり、大忙しだった。一連の首脳外交とハラハラドキドキの7試合、結果オーライだったが、実はこの外交と野球、両者には興味深い共通点がある。
これについて書いたのが今週の産経新聞のWorld Watchだ。
要するに、日本メディアの「枝を見て森を見ない」報道の典型例、ということ。詳しくは今週木曜日の産経新聞をご一読願いたい。
問題はシリーズ優勝にせよ、一連の首脳外交にせよ、「全体の流れ」を見ようとしない一部日本メディアの悪癖である。
今回のトランプ外交は、経済はともかく、安保政策面では日本、韓国との首脳会談の成功が必須だったはず。米国の対中戦略は、短期的に中国との緊張拡大を回避しつつ、中長期的には対中競争で優位を回復することだと思うからだ。
ちなみに筆者は、過去半世紀間、一貫して「ワールドシリーズ」なる言葉に違和感を覚えてきた。その理由についても産経に書いたので、ご参考まで。それにしても、ブルージェイズは惜しかったなぁ、ゲレーロJrが泣いていたのには泣けたぞぃ。
さて続いては、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。ここでは海外の各種ニュースレターが取り上げる外交内政イベントの中から興味深いものを筆者が勝手に選んでご紹介している。欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。
11月5日 水曜日 米最高裁でトランプ関税政策に関する口頭弁論始まる
11月6日 木曜日 ブラジル、日から始まるCOP30前に関連首脳会議開催
米大統領、中央アジア五か国首脳と会談(ワシントン)
インド・ビハール州で議会選挙始まる
11月7日 金曜日 仏大統領、メキシコ訪問
ハンガリー首相訪米、米大統領と首脳会談
11月9日 日曜日 コソボで地方選挙
EU・ラ米カリブ共同体と首脳会談(コロンビア、2日間)
11月10日 月曜日 シリア大統領訪米、米大統領と首脳会談
エジプトで議会選挙
最後は、ガザ・中東情勢だが、予想通り、ガザ「停戦」は未だ「休戦」には至っていない。相変わらず、トランプ政権の20項目のガザ和平計画は第二段階に入る兆候がない。ハマース側は苦し紛れなのか、「人質の遺体」3体を返還したらしいが、イスラエル側はいずれも「本人」ではないとして反発し、今もハマースの拠点に対する散発的攻撃を続けている。本格的戦闘が「なし崩し」的に再開されないよう、米国はイスラエル側に強い圧力を加えているようだが、さていつまで効果があるのだろう。
おっと、今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きは今週のキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
トップ写真)ワールドシリーズ第7戦 ブルージェイズを5対4で破り、ドジャースが優勝
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この記事を書いた人
宮家邦彦立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表
1978年東大法卒、外務省入省。カイロ、バグダッド、ワシントン、北京にて大使館勤務。本省では、外務大臣秘書官、中東第二課長、中東第一課長、日米安保条約課長、中東局参事官などを歴任。
2005年退職。株式会社エー、オー、アイ代表取締役社長に就任。同時にAOI外交政策研究所(現・株式会社外交政策研究所)を設立。
2006年立命館大学客員教授。
2006-2007年安倍内閣「公邸連絡調整官」として首相夫人を補佐。
2009年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹(外交安保)
言語:英語、中国語、アラビア語。
特技:サックス、ベースギター。
趣味:バンド活動。
各種メディアで評論活動。

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