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.政治  投稿日:2026/2/13

大勝大敗は永田町の常:違和感ぬぐえぬ維新の入閣


樫山幸夫(ジャーナリスト、元産経新聞論説委員長)

 

【まとめ】

・総選挙での自民圧勝の余波が続いている

・「歴史的」ともいわれるが、過去にも与党、野党第一党が大躍進、大敗北を喫したケースは少なくなかった

・永田町の風景は変化するが、与党とはいえ議席を失った維新が、あらたに入閣するというのは、筋が通らない

 

 維新は敗北続きだが・・・ 

 日本維新の会の入閣については、投開票翌日の29日、高石首相から吉村洋文代表に要請があったという。

 吉村代表は「内閣において責任と仕事を共有すべきだ」と述べ、前向きな姿勢を明らかにした。

218日召集の特別国会での首相指名、組閣では見送り、夏以降にも予想される内閣改造が、その時期になるという。

高市首相は今回の総選挙にあたって、自らが内閣総理大臣であること、自民党と維新との連立の是非について国民の信を問うと繰り返していた。

結果は連立2党で120増の316議席。信任されたのだから、連立を強化するのは当然ということだろう。 

維新自体は今回の総選挙で議席こそ2増だったが比例の得票は494万票、前回2024(令和6)年の510万票を下回った。前々回2021(令和3)年の比例票は805万票だったから、前回もそれより300万票も下回ったことになる。

参院選をとってみても、昨年の選挙では、議席は1増えたが、比例得票は前回22(令和4)年にくらべ347万票減の437万票にとどまった。

 

直近の選挙では得票減が続いている政党からあらたに入閣させることが、国民の支持を得られるか。

 さまざまな思惑がまかり通る永田町、原理原則だけでは何事も動かないのは事実だが、民意に照らしてみればわかりにくい。

 

 自民、民主が互いに大勝と大敗

 今回の結果は、勝利、敗北とも「歴史的」と評されるが、過去の既成政党が大勝、大敗を喫したケースはまれではない。それらはいずれも党のその後の消長につながっている。

 

記憶に新しいのは、民主党政権の登場、退場に伴う2009(平成21)年、2012(平成24)年の総選挙だろう。

 099月、任期満了が迫る中で行われた解散・総選挙で民主党は、改選前(115)の3倍近い308議席を獲得。単独政党での政権交代を実現し、鳩山由紀夫内閣が誕生した。

自民党は一挙に200近くを失って119議席。 リーマンショックによる景気低迷などが大きな敗因といわれる。当時の首相は現自民党副総裁の麻生太郎氏だ。

民主党政権3年。2012年秋に、当時の首相、野田佳彦氏が衆院を解散、総選挙に打って出たが、今度は逆に同党が57議席まで転落、自民党は294議席まで回復して、公明党とともに政権に復帰した。

民主党政権は準備不足、政権運営に円滑さを欠き、消費税率引き上げをめぐっての党の分裂などが大きく響いた。

ベテランを含む多くの有力議員の落選を招いた野田首相は党内からの批判にさらされたが、今回も党共同代表として2度目の敗軍の将となった。

振り返れば、この大敗以後、民主党は立憲民主党と国民民主党に分裂、政権に返り咲くことはできなかった。

時代をさかのぼると、1969(昭和44)年の総選挙での日本社会党(社会民主党の前身)の大敗がある。同党は90議席と解散前から一挙に44議席を失った。

自民党は16増の288議席。佐藤栄作内閣による沖縄返還合意(6911月)など実績が評価された。

さらに古いところでは新憲法のもとで行われた2回目、1949(昭和24)年の総選挙で、吉田茂率いる民主自由党(当時)が112議席増、元首相、片山哲氏の日本社会党が111議席から48議席まで減少したケースなどがある。

 有権者は移り気 脆い人気

大敗ではないが、与党が予想外に振るわなかったケースとして1972(昭和47)年の田中角栄内閣による解散、総選挙に触れなければならない。

この年7月に発足した田中内閣は長年の懸案、日中国交正常化を実現、日本列島改造論を掲げて自信満々で選挙に臨んだが、ふたを開けてみると26議席減。

「今太閤」などと高かった大衆人気があっという間にしぼんでしまったのは、現内閣にとっても示唆に富んでいるというべきだろう。

角栄政権の場合、日本列島改造論が乱開発やインフレを招くなどして有権者が嫌気をさした。

その後、金脈問題で国民の信を失った田中氏は在任2年で退陣に追い込まれる。後にロッキード事件に連座、有罪判決を受けたことはよく知られている(上告中に死去)。

高市首相は、大勝した翌日の記者会見で、「謙虚に」を強調しながらも、国論を2分する政策課題にも大胆に取り組むと宣言した。「挑戦を恐れない」とも述べた。

 賛否が分かれる政策を推進、その結果、国の分断が進むのか。謙虚の言葉とおり弱小野党の意見も十分にくみ取っていくことができるのか。

  昨年の自民党総裁選の議員票で高市首相は決選投票で破った小泉進次郎防衛相の後塵を拝し、党内基盤が弱いことを印象付けた。

 2年半後の参院選までは国政選挙はない。

高市人気に頼る必要がないことを考えれば、政策判断のミス、スキャンダル、専横にわたる政局運営はたちまち反高市の動きにつながる。

 有権者は移り気だ。そうなれば支持率も低迷するだろう。

 首相には心してもらいたいというのが国民の思いだろう。

トップ写真東京・秋葉原で行われた選挙公示の街頭演説にて、高市早苗首相(中央)、吉村洋文氏(左)、藤田文武氏

出典)Tomohiro Ohsumi/Getty Images

 




この記事を書いた人
樫山幸夫ジャーナリスト/元産経新聞論説委員長

昭和49年、産経新聞社入社。社会部、政治部などを経てワシントン特派員、同支局長。東京本社、大阪本社編集長、監査役などを歴任。

樫山幸夫

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