「停戦を破ったのはどちらか」古森義久氏に聞く、イラン戦争の実相
執筆:Japan In-depth 編集部
【本稿のポイント】
・停戦合意の署名が固まった後に戦闘が再燃。日本の多くの報道は「トランプが一方的に破った」と伝えるが、古森氏は攻撃を仕掛け直したのはイラン側だと語った。
・共和党支持層に限れば9割がイラン攻撃を支持しており、日本メディアが伝える「反対多数」の世論とは実態が異なる、と古森氏は指摘した。
・軍事行動の狙いについて、古森氏は「本当の目的はレジームチェンジ」と明言。ただしイラン国内の弾圧により、想定通りには進んでいないとも語った。
停戦合意の署名に向かっていたはずの米・イラン間で、なぜ再び戦闘が激化したのか。国際報道に半世紀近く携わり、ワシントンDCと日本を行き来してきたジャーナリスト・古森義久氏に、Japan In-depthチャンネルで聞いた。
▶ 動画:Japan In-depthチャンネル「暴君トランプ、日本はどうする!?」(2026年7月14日配信)
◆停戦を破ったのはどちらか?
スイスでの停戦合意署名の方向が固まった直後、戦闘が再び激化した。日本の多くの報道は「トランプが一方的に合意を破った」という論調だが、古森氏はこの構図に異を唱える。ホルムズ海峡の封鎖や攻撃を仕掛け直したのはイラン側であり、アメリカはそれに報復しているに過ぎない、というのだ。
「ホルムズ海峡をまた閉めるとか、攻撃するとかね。だからそれに対してトランプは報復してるわけですよ」
古森氏は、軍事的にはすでに決着がついていると見る。イランの軍事体制はアメリカの空爆によって大きく損なわれ、海軍もほぼ機能を失っている状態だという。
「軍事面ではもうとっくに僕は勝負はついてると思う」
◆なぜここまで対立するのか?
米・イラン対立の背景として、古森氏がまず挙げたのは歴史的な記憶だ。1979年、イランの過激派がテヘランのアメリカ大使館を襲撃し、約50人のアメリカ外交官を拘束した事件である。後ろ手に縛られ目隠しをされた外交官たちが連日テレビカメラの前に引き出され、アメリカ批判を語らされる映像が、当時アメリカの一般家庭に流れ続けた。この記憶は「47年間の屈辱」という言葉で、いまも対イラン政策を語る文脈で使われているという。
「これはイランに対する対米の中の標語なんですよ」
もう一つの、より直接的な理由として古森氏が挙げたのが、イランの核武装阻止である。オバマ政権が結んだ核合意をトランプが破棄した経緯を踏まえ、これが「もう明確な理由。しかも最大の理由」だと述べた。
◆アメリカ世論は本当に「反対多数」なのか?
日本では「アメリカ世論もイラン攻撃に反対が多い」という報道が目立つ。この点について、古森氏は世論の内訳に注意を促した。全体の支持率は3割台とする数字が出ている一方、共和党支持者に限れば話は変わってくるという。
「共和党支持者の中でトランプのイラン攻撃を賛成する人何パーセントいるかっていったら、90%とか出てきちゃうわけでね」
日本メディアが参照するのはニューヨーク・タイムズやCNNなど民主党寄りの論調に偏りがちで、こうした共和党のコア支持層の実態が伝わっていない、というのが古森氏の見立てだ。
◆軍事行動の「本当の目的」とは?
古森氏は、今回の軍事行動の狙いについて踏み込んだ見方を示した。核兵器保有の阻止という理由に加え、トランプ政権が期待していたのはレジームチェンジ(体制転覆)だったという。
「本当の目的はやっぱりレジームチェンジですよ」
ただし、想定通りには進んでいないとも語る。イラン国内では反体制派が初期段階で徹底的に弾圧され、体制転覆は容易ではない現実が露呈した。そのうえで古森氏は「トランプはちょっと楽観的すぎたのかな」という見方も示している。
軍事戦略としては、地上部隊は投入せず、空と海からの攻撃で決着をつける方針だという。これはトランプが掲げる「力による平和」戦略の一環だとし、ミサイル在庫不足に関する報道についても「本当かどうかわからない」と慎重な見方を示した。
◆トランプ政権にとって日米同盟は「アメリカのため」
古森氏は、トランプ政権内での日米同盟の位置づけについてこう指摘する。
「アメリカが日本のことを守るよというよりも、アメリカにとって日米同盟が極めて大事なんだ、アメリカのためなんだという認識をトランプ政権はものすごく強い」
その根拠として、ワシントンの議会関係者との交流や、トランプ氏自身の拉致問題への個人的な関与についても具体的なエピソードが動画では語られている。
◆トランプのNATO批判は「ブラフ」
一方でウクライナ・NATOをめぐるトランプ氏の姿勢について、古森氏はこう分析した。
「トランプがNATOから脱退するっていうことじゃない。1つのブラフ」
その真意はどこにあるのか。詳しくは動画本編で。
▶ Japan In-depthチャンネル「暴君トランプ、日本はどうする!?」(2026年7月14日配信)
▶ 動画:Japan In-depthチャンネル「暴君トランプ、日本はどうする!?」(2026年7月14日配信)
◆番組で語られたそのほかの論点
・21:32〜 高市外交をどう評価するか、まず対中国から
・23:37〜 中国の「反日教育」を教科書から検証した産経連載
・24:04〜 なぜ日本の中国研究者は指摘しないのか
・26:44〜 高市氏の率直な発言が引き出した中国の「本音」
・27:05〜 トランプ政権にとって日米同盟は「アメリカのため」
・29:40〜 米国内で広がる日本酒人気と議会の対日好感
・30:18〜 共和党ウィルソン議員のエピソード
・32:04〜 「ゴールデンエイジ」――トランプの拉致問題への個人的関与
・36:04〜 中国の本当の脅威はアメリカ、日米接近への焦り
・42:11〜 トランプのNATO批判は「ブラフ」、脱退の意思はない
【よくある質問(FAQ)】
Q1:「レジームチェンジ」とは?
A:特定の国の政権・体制を、外部からの働きかけによって交代させることを指す言葉。軍事行動や経済制裁などを通じて現体制を別の体制に置き換えることを意味し、記事中では古森氏が今回の軍事行動の「本当の目的」として挙げている。
Q2:「ホルムズ海峡」とは何か、なぜ重要なのか。
A: ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ海峡で、イランとオマーンに挟まれた海上交通の要衝。世界の原油輸送の相当量がこの海峡を通過するため、封鎖されると国際的なエネルギー供給や原油価格に大きな影響が及ぶとされる。記事中では、イラン側がこの海峡の封鎖を示唆したことが戦闘再燃のきっかけとして語られている。
Q3:「47年間の屈辱」とは何を指すのか。
A:1979年、イランの過激派がテヘランのアメリカ大使館を襲撃し、外交官らを長期にわたり拘束した事件を指す。当時の映像がアメリカの一般家庭に連日流れたことが、アメリカ側の対イラン感情の根底にある記憶として、古森氏の発言の中で触れられている。
Q4:「力による平和」とは何か。
A:トランプ政権が掲げる外交・安全保障方針の一つで、圧倒的な軍事力を背景に相手を抑止し、秩序を維持するという考え方。地上部隊は投入せず、空・海からの攻撃で決着をつけるという今回の対イラン戦略も、この方針に沿ったものだと記事中で説明されている。
関連リンク
トップ写真:右 古森義久氏 左 安倍宏行編集長



























