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.国際  投稿日:2026/7/13

トランプ政権はいま「上」イラン攻撃の理由とは


 

執筆者:古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)

  「古森義久の内外透視

 

【本稿のポイント】

・トランプ政権のイラン攻撃(軍事的圧力路線)は、核保有阻止・過去のテロへの制裁・イスラエル抹殺論への拒絶・対米憎悪への反発という4つの明確な理由に基づいている。

・議会レセプションでのジョー・ウィルソン下院議員(共和党)の発言に象徴されるように、高市首相の対中強硬姿勢はアメリカの国益・戦略にも資するものとされている。

1979年のイラン米大使館人質事件や1983年のレバノン海兵隊自爆テロなど、対イランへの根深い屈辱感・反発がアメリカ国民感情の背景にある。

私は基本的にはジャーナリストとして国際問題を眺めてきた。その中には当然日本の外交政策、安全保障政策も入っている。今回もワシントンに3ヵ月くらい居て、つい1週間前に日本に戻ってきた。

ワシントンでは当然ながら、トランプ政権は一体何をしようとしているのか、それに対する一般国民、或いは民主党の反響はどうかということをインターネット依存の世界を脱却して実際の人間の言葉を聞いたり表情を見たりして最新の情報を集めることに努めてきた。

今回の討論会の主題は、高市政権が中国に対してどんな姿勢を取るべきかということだが、その場合、当然ながら同盟国のアメリカは一体何を考え、何をしているのかが重大になる。その意味で、アメリカ側の中国に対する姿勢、その背景にある日本が中国に対してどんな態度を取るか、それをアメリカ側はどう見ているか。こういうことを念頭においてワシントンで情報を集めてきた。

まず象徴的な出来事を報告したい。3月19日の高市首相訪米の数日前、アメリカの議会の中で日米関係のレセプションが開かれた。そこに出掛けて行くと、現職の超党派の連邦議員が7人来ていた。その中にサウスカロライナ州の共和党下院議員の重鎮でジョー・ウイルソンという人がいた。彼は13回の当選を果たし、軍事委員会や外交委員会の重鎮である。

私はそのウィルソン議員に、「高市さんに何を期待するか」と質問してみた。すると彼はいきなり「私は高市さんにサンキューと言いたい。何故なら高市さんの中国に対する毅然とした態度はアメリカの国益や戦略にも資するからだ」とサラッと答えたのだった。彼はトランプ政権に極めて近い保守派の現実派だった。彼のこの発言は今のトランプ政権の対中政策、対日政策が集約されていると感じさせられた。

その内容を説明する前に、いま日本での関心の高いアメリカとイスラエルによるイラン攻撃について簡単に報告したい。トランプ大統領にはローマ法王と喧嘩したとか、世論調査の結果が良くないなど色んな批判があるが、トランプ政権のイラン政策は一貫して揺らぎがない。ということは、軍事力を主体としてイランを追い詰めていくということを意味する。では何のためにそうするのか。いくつかの明確な理由がある。

第一はまず間違いなく、イランの核兵器保有を認めないということである。

第二には、これまでイランは国際秩序を崩すような国家テロをやってきたことへの制裁だといえる。

さらに第三には、イランがイスラエルを世界から抹殺することを国是にしている事実が挙げられる。アメリカとしては許容できないイランの世界観だといえる。

そして第四の理由としては、これまであげた要因の集約としてのイラン側の「アメリカへの憎しみ」がある。

いまアメリカ国内では次々とイランへの軍事攻撃をかけることへの反発はトランプ支持層の中にも存在する。しかしそれと同様に強く広いイラン攻撃への支持も存在するのだ。

その背景には、アメリカ全体のイランという国に対する極めてネガティブな感情、或いはそれ以上に激しい反発の認識があるからである。

このことを象徴する標語として、「47年間の汚辱」という表現が存在する。これは、47年前の1979年11月、テヘランにあるアメリカ大使館がイランの過激派、原理主義者に襲われ、外交官ら約50人が人質に取られ、米側にとってはきわめて屈辱的な光景が展開されたことに起因する。人質となったアメリカ人外交官たちは目隠しをされて後ろ手に縛られ、連日テレビカメラの前で祖国アメリカの悪口を言わされた。その情景が毎日アメリカのテレビに映し出される――このことがアメリカ側の屈辱の原因となった。私もその時ワシントンにいたから、そんなむごい情景をよく観ていた。

それ以来、多様な場所でアメリカに対するイラン側によるテロ攻撃が起こった。たとえば1983年、レーガン政権の時、海兵隊がレバノンに駐留したらイラン側に自爆テロが起こり200数十人の現役のアメリカ軍将兵が殺されるという事件があった。この辺のネガティブな歴史の米側の国民感情、或いは感情を越えた認識という要素というのは今回のトランプ政権の動きの背景になっているわけだ。

(中につづく。全3回)

#この記事は日本戦略研究フォーラム2026年7月季報に掲載された同フォーラムの春季シンポジウム報告での古森義久氏の発表の転載です。

トップ写真)Iranians Marching Hostages

出典) Bettmann / 寄稿者 / GettyImages




この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト/麗澤大学特別教授

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「ODA幻想」「韓国の奈落」「米中激突と日本の針路」「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」など多数。

古森義久

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