[文谷数重]【翁長知事は戦えば戦うほど強くなる】~先が見えない沖縄基地問題の行方~
文谷数重(軍事専門誌ライター)
翁長沖縄知事は、基地問題では戦えば戦うほど強くなる。沖縄基地問題の背後には、沖縄現地の意向を無視する中央政府への反感がある。これは保守・革新を問わない。翁長さんには民意がついている。だから強硬に戦う度に名声も権力もパワーアップする。
これは対日戦を決意した蒋介石と同じである。家近亮子さん主張しているように、蒋さんは戦闘で負け続けても、抵抗し続けることで名声も権力もパワーアップした。
NOと言い続け、行動し続ければよいということだ。沖縄県民は汪兆銘化した仲井真前知事に失望し、抵抗する知事として翁長さんを選んだ。ひたすらNOと言い続け、埋立免許失効等、県知事の権限で反対行動を続ければ民意はついてくる。
翁長さんには死ぬ覚悟があるという。選挙直後に「荻上チキSession-22」でそのように述べている。これは口先だけの話ではない。功を遂げた政治家は歴史の評価を気にかける。翁長さんは政治家30年、年齢も64となる。死後の名を惜しむ年頃である。そして仲井真さんが妥協により名を汚したことを目の当たりにしている。逆に、在沖米軍問題を進めれば、後の選挙で負けようとも、名誉は死ぬまで、あるいは死後も続く。
もちろん仲井真さんの埋立免許も、故郷のために良かれと判断した結果である、だが汪兆銘化した以上、汚辱は免れなかった。県民からすれば裏切り行為であるためだ。汚名を浴びてまで許可した調査工事実施でも、中央政府に顔に泥を塗られている。仲井真知事は工事警備には穏便にと何回もリクエストしたが、強硬警備となってしまっているのだ。
翁長さんは、その轍は踏めない。そうすると死ぬまで、そして死後も断罪される。だから県民の付託を受けた知事として、公言したとおりNOと言い続け、死んでみせる以外の方法はない。逆に知事として死ねば、地方長官の鑑といわれた島田知事のように後世まで名誉に包まれることもできるかもしれない。
反対行動も難しくはない。単純に知事と名護市長が出てきて道路封鎖をすれば、収拾はつかなくなる。江東ごみ戦争はそうだった。知事と市長の後ろには、議会も民意もついている。中央政府の押し付けへの反発がある。首長と議員が先頭に立てば、市民は見捨てることなく総出で道路封鎖となる。
あるいは法的・行政的な抵抗もできる。埋立免許取り消しもそうだが、他にも知事や市長の権限は広範である。陸上部工事について、計画通知も拒否できる。水道事業も手許にある。
また、県知事は県警をある程度コントロールできる。直接指揮権はないが、辺野古に関する予算支出や執行を停止しろと言える。道路使用許可は県の下にある警察の業務であるため、これも口出しできる。拒否しても、公安委員会を通じて圧力も掛けられる。
県の強力な抵抗があれば、沖縄基地問題の進展もある。普天間か辺野古かの二者選択以外の解決法も出てくるだろう
(続き[文谷数重]【普天間でもなく、辺野古でもない解決法】~2つのシナリオ~ をお読みください)