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.政治  投稿日:2015/3/20

[嶌信彦]【相次ぐ常識外れの発言と行動】~三原じゅん子議員「八紘一宇」発言が呼ぶ国際的波紋~


嶌信彦(ジャーナリスト)

「嶌信彦の鳥・虫・歴史の目」

執筆記事プロフィール

世の中、不況になり厳しくなると、皆が守ってきたルールや大人の対応がそっちのけになる。社会的モラルを無視した企業行動や身勝手な論理であちこちに波紋を巻き起こすことになる。しかも、それらを止め立てするガバナンスが国際社会や国、自治体にも見当たらず世はますます混乱と不透明の中へと突き進んでいる感じがする。

国内で唖然としたのは東洋ゴム工業が、免震ゴムの性能を偽装していた問題だ。偽装事件はよくあることなので、「またか」と思ったが偽装対象をみてホントに驚いた。日立市の消防本部庁舎など静岡、大阪府寝屋川市の消防本部新庁舎が数件。長野市、伊勢市、高知県、愛媛県などの新市庁舎数件、さらに鳥羽警察署、高知東警察署など警察関連数件と医療センターや市芸術館などで性能不足の装置が使われたケースが全国55棟もあり、うち12棟は昨年2月に不良品の疑いがあると発覚していたのだ。

日本では地震・自然災害が重要問題になっているのに、その司令塔となるべき警察、消防本部、医療センターに不良品を納入、しかも性能データを改ざんしていたとあっては話にならない。日本の一部はそこまで落ちたかと思ってしまう。

もう一つは、国会の質問で、三原じゅん子参議院議員がもう死語になったと思っていた「八紘一宇」という言葉を持ち出し、現在の弱肉強食の国際秩序の中にあっては八紘一宇の価値観で日本は振る舞うべきだと述べたのだ。八紘一宇は戦前の日本軍部がアジア侵略を正当化するため学校などで教えた言葉だ。

戦前生まれの人の名前に「紘一」などがよくみかけられる。三原議員はどこまでこの言葉の意味を理解して礼賛し、日本の外交に応用しろと言ったのか、理解に苦しむ。戦後70年談話をめぐって神経をとがらせている最中に、あえて投げ込んだ言葉なのか。国会議員としてはたしてどこまで勉強しているのか、浅薄ささえ感ずるし、歴史的な意味を理解しないで国会で使ったとしたら、つまらぬ国際的波紋を呼ぶことになろう。

海外では、プーチン大統領がクリミア半島奪回に向けて核の準備もしていたと明かしたことにも驚いた。ロシアは原油安やウクライナをめぐる経済制裁で苦境に陥り、ルーブルの暴落まで招いているが、核を持ち出すことで威丈高の強さを見せようとしているのか。

そのプーチン・ロシアへ鳩山由紀夫元首相が訪問しエールを送っていることも解せない。鳩山家は祖父の一郎元首相が対米一辺倒の外交ではなく日ソ友好に尽くし、バランスをとろうとしたことで知られる。そのことはよい。しかし、米、EU、日本などがロシアのウクライナ侵攻を非難している最中に、あえてロシアを訪問し支持するかのように発言するのはやはり国際情勢をバランスよくみていないことを自ら明かしているようなものではないか。三原、鳩山両氏の発言、行動にはネット上で批判が相次いでいる。

英、独、仏、伊などEU諸国が中国主導のアジアインフラ投資銀行に参加表明したことにも驚いた。世界でカネが余り、ユーロ不況が深刻なので中国主導のインフラ投資銀行に参加し、アジアのインフラ事業に参画する手づるを掴んでおこうということなのだろう。

ただアジアにはアメリカ、日本などが中心のアジア開発銀行が長い実績を持ち、アジアのインフラ開発に力を注いできた。利害さえ得られれば、と考える欧州諸国の行動には淋しいものが感じられる。こんな形でアジアで築いてきた日米の中心的役割は少しづつ崩されてゆくのだろう。

これまで、国際感覚をもち教養と歴史観のある人々は、もう少しバランスある発言をしてきたものだ。国も企業も人も、自分に都合のよい理論だけに頼って発言したり、行動したりしていると、いずれ大破局がやってくるような気がする。

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