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.政治  投稿日:2015/3/28

【家族を持つ素晴らしさを味わって】~新・社会人へのメッセージ~


細川珠生(政治ジャーナリスト)

 

7年ぶりの高水準であった新卒者の就職率。この春、中学から大学までの卒業生のうち約75万人が社会へ飛び立つ。ピッカピカの社会人「一年生」が満開の桜の下、入社式に臨む姿をもうじき日本の各地で見られるであろう。

これから歩んでいく先に、期待あり、不安ありと、希望に胸を膨らませる思いと同じくらい、複雑な心境が横たわっているに違いない。でも、それはみんなそう。今年一緒に社会に巣立つ同志のみならず、たくさんの先輩たちも、そして後に続く後輩たちも、不安な思いや複雑な心境にならなかった人など、いないのである。

また、先に社会に出ている私の世代も、新しい社会人を迎えることの不安がないと言ったらウソになる。育った時代や社会背景の違いからくる受けた教育の違いなどで、社会人としてどう育てていったらいいのか、先輩たちも結構大きな不安を抱えているのだ。新社会人も、ベテラン社会人も、心を開き、きちんと向きあい、職業の種類を問わず、社会に貢献できる人間を目指していかなければならない。

7年ぶりの高い就職率とはいえ、私が社会人となった四半世紀前に比べれば、まだまだ厳しい就職事情には変わりない。せっかく大変な就職戦線を勝ち抜いてきたにも関わらず、新卒者の3年離職率は、大卒者では31%、高卒者だと39.2%、中卒者は62.1%にも上る(平成22年3月卒業者。平成25年厚労省発表の統計による)。

理由は様々あるが、「自分が思っていた仕事と違った」「労働環境や条件が違った」「人間関係の問題」などが挙げられる。希望の部署につけず、勤務時間が長く、休みが少なく、いやな上司がいるとでもいうような結果だ。もちろん、生活のほとんどの時間を過ごす職場での人間関係の悩みや慣れない職場や仕事による肉体的な疲れなどはつらいものではあるが、就職した大卒者の約3分の1が3年以内に離職するといいう実態は、私のような世代から見ると、どうも忍耐力が足りないと思わざるを得ないのである。

どんな仕事でも、ラクラクこなせることばかりではないし、気の合う人、合わない人はどんな集団にもいる。しかし、そもそも社会は、苦痛と思う場面を、いかに乗り越えるかということによって、自分自身を高めていく場であるのだ。苦痛や苦労がなく、いつも楽なことばかりだったら、人間としての成長はない。社会にでる必要すらないともいえるかもしれない。社会で報酬を得るという立場になったのならば、社会へ果たす責任を意識しながら、ひたすら努力の日々を送らなくてはならないのである。

一緒に就職戦線を戦った仲間の中に、思うような進路を得られなかった人がいるだろう。悔し涙、悲し涙を流したその仲間ではなく、その道を与えられた自らの使命は何かということを、この先の生涯にわたり、自問自答しながら、歩んでほしいと思う。

最近では、セクハラの類として批判にあうようだが、あえて言いたいと思う。それは、特別な事情がない限り、経済面でのめどが立ったら、若い人たちはみんな家族を持ってもらいたいということだ。自由を奪われるとか、責任が重いなどという逃げの姿勢を取らず、家族がいることの幸せを得るために、努力してほしい。そして、愛する家族のために、自分自身の人生を全うしてほしい。仕事の張り合いにもなるし、生きていることの張り合いにもなる。

さて、入社して最初のお給料をもらったら、両親や祖父母など、育ててくれた一番の恩人に、「お初穂」と書いた封筒の中にほんの少しでもいいから、感謝の気持ちを込めて渡したらどうだろうか。きっと、その喜ぶ顔が、これから社会で生き抜く糧となるはずだ。


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