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スポーツ  投稿日:2015/4/18

[瀬尾温知] 【MLBジャイアンツ復活の狼煙は?】~伝説のロックバンドJourneyの音楽に秘められた想い~


瀬尾温知(スポーツライター)

「瀬尾温知のMais um・マイズゥン」(ポルトガル語でOne moreという意味)

執筆記事プロフィール

作家の白川道が16日、亡くなった。「海は涸いていた」や「病葉流れて」などの著書から、男の生き方なるものに感化されていたので、これからは彼の作品に接することも、ハードボイルドな作風に包まれることもできないのかと、悲嘆に暮れている。

本棚にある彼の小説を眺めながら、骨太で昭和の匂いのする男を主人公にした作品について訥々と語り尽くしたいが、スポーツライターという手前、メジャーリーグの近況を綴ることにする。

昨シーズンの覇者・ジャイアンツに移籍して1番レフトで先発出場している青木が、開幕から9試合連続安打、5回の複数安打と好スタートを切った。だが、チームは現地16日終了時点で3勝8敗の地区最下位。本拠地ではまだ勝ちがなく、絶対的エースのバムガーナーでも連敗を阻止できずに5年ぶりの7連敗と不振に喘いでいる。自身は好調でもチームに白星がつかないので、青木の気分は晴れ渡らない。

青木は日本人選手の打者ではただ一人のレギュラーということもあり、ジャイアンツの試合が日本で多く中継されるようになっている。その中継から流れてきた曲に、思わず聴き入った。ジャイアンツの本拠地・サンフランシスコのAT&Tパークでは御馴染みの曲で、メロディアス・ハードロックの元祖といわれ伝説となっているJourneyの作品「Don’t Stop Believin’」である。

アルバム「Escape」に収録されて1981年に発表され、全世界で1000万枚以上を売上げる大ヒットとなった。高音域と情緒に富んだハスキーな歌声のボーカリスト、スティーヴ・ペリーは、サンフランシスコから約350km離れたハンフォード出身で大のジャイアンツファン。昨シーズンのプレーオフでも球場に姿を度々現し、観客と一体になって「Don’t Stop Believin’」を大合唱して話題になった。

聴くだけで刺激を受けたり、やる気が出たり、「Don’t Stop Believin’」はまさにそういった曲で、「どんなことだって可能なんだ」と思わせてくれる。8回裏のジャイアンツの攻撃前によくかかるのだが、リードされているときには「この曲で奮起して逆転してくれ」といった地元の思いが込められている。調子の上がらないジャイアンツは今こそ、この曲に込められた「信じることをやめないで」とのメッセージを体現して、浮上のきっかけにしてもらいたい。

今回だけは許しを乞いて、スポーツから逸脱する。白川道は夕刊フジの毎週金曜日にエッセー「俺ひとり」を連載していた。訃報の翌日が金曜だった。紙面を開くとエッセーはなく、無頼派作家の死亡記事になっていた。事実婚の関係にあった新潮社出版部部長の中瀬ゆかりさんは「白川は私の一番の理解者であり、私の生きがいでした」と、声を詰まらせながら語ったことが記されていた。

Don’t stop believin’, Hold on to that feelin’(信じることをやめないで、想いを心に刻むんだ)。時に心の支えとなる音楽は、哀傷にも効いてくれるといいのだが・・・・・・「俺ひとり」は単行本化されているので、当面はその中にひとり、包まれることにする。彼の作品に出てくる男は、己の欲得にとらわれることなく、常に愛する女を慮っていた。遺骨は白川の生前の願いで海へ返されることになる。

※トップ画像/球場でDon’t stop believin’を熱唱するスティーヴ・ペリーに扮する“寄稿子” (C)カリカチュア・ジャパン

タグ瀬尾温知

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