[宮家邦彦]【安倍首相米議会での演説に注目】~評価は文章の美しさだけではない~
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(2015年4月27-5月3日)」
今週は安倍首相の訪米がある。日米2+2(外務・防衛相会談)を皮切りに、日米首脳会談、米議会での演説までがハイライトだろう。先週の話になるが、バンドン会議60周年首脳会議でのスピーチは短かったが、それなりに良く纏まっていたと思う。
これに比べれば、米議会、しかも両院総会でのスピーチは格段に難しい。英語でやるのは当然としても、議場では安倍首相の一挙手一投足が注目される。タイミングを取るのは容易ではなかろうが、成功すれば拍手により何度も中断されるはずだ。
米国でのスピーチは文章の美しさだけでは評価されない。場に相応しい内容を伴い、温かい雰囲気を作り出し、言葉と言葉の間をうまく使いながら、聴衆の琴線に触れるメッセージを送れるかどうかが試される。無事に演説が終わることを祈るばかりだ。
〇欧州・ロシア
今週の欧州は働いている。27日はウクライナでEUトップとの首脳会議がある。同日、ロシアはキプロスからの輸入食料品の検査を再開するようだが、欧州ではロシアが欧州産農産物の輸入解禁を検討しているとの噂もある。ロシアも結構苦しいのか。
30日はギリシャがEUに経済改革案を提出する期限だが、同日はフランスにも期限が来る。財政赤字をGDPの3%以内とする義務を2年間猶予してもらうため経済改革計画を提出する必要があるらしい。どうするのか。仏もギリシャのことは笑えない。
〇中東・アフリカ
27日にイラン外相がNYを訪問する。表向きはNPT関係会議出席だが、ここでも核問題の交渉が続くだろう。最大の問題は制裁解除の時期と方法だという。米議会が即時解除する訳はないが、イラン最高指導者は既に即時解除を公言している。
この問題、出口はあるのだろうか。交渉に深く関わっている人ほど楽観的なことを言うのだが、それは本当に議論が詰まっているからなのか。それとも、苦し紛れに希望的観測を言い続けているのか。部外者にはどうしても後者のように見えるのだが。
〇アメリカ両大陸
安倍首相訪米以外にはあまり大きなニュースはないようだ。
〇東アジア・大洋州
27-28日にマレーシアで第26回ASEAN首脳会議が開かれる。5月1日からはミャンマーで少数民族の反政府諸勢力が会合を持つ。5月3日には上海で中国と台湾の第10回「両岸関係」フォーラムが開かれる。アジアは結構動いているようだ。
国際関係ではないのだが、27日には大阪市長が掲げる「大阪都」構想につき賛否を問う住民投票が告示される。投票日は5月17日だが、大阪維新の会、自民、民主の対立は続くという。申し訳ないけれど、世界から見ると、インパクト少ないなぁ。
〇インド亜大陸
今週はインドが千客万来だ。27-28日にスペイン外相、27-29日にアフガニスタン大統領、29-30日には日印エネルギーフォーラムで日本の経産大臣がそれぞれ訪印する。更に、5月2日には米国MITがインド関係会議を主催するそうだ。
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。