ゴーンと司法
.国際  投稿日:2015/6/14

[安岡美佳]【何故、デンマークの若者は投票に行くのか?】~30才以下の投票率6割超の秘密~


安岡美佳(コペンハーゲンIT大学 研究員)

執筆記事プロフィール

北欧の若者世代の投票率は高い。デンマークの2011年の総選挙の全投票率は、88%(デンマーク統計局)で、30歳以下の投票率はソースによって異なるが、59%とも87.7%と言われている(統計局データには記載なし)。日本と同様、若者の政治参加率は低くなっているといわれるが、その「低い」のレベルは異なることが見えて来る。

なぜ、投票率が高いのかという疑問に対し一般的に言われるのは、国政への社会参加率の高さであったり、政治が毎日の生活に身近だったり、という言説で、確かにそれは感覚的には当たっている気がする。ただ、「身近だから」とそう言われてピンとくるだろうか?今回は私が考えるデンマークの若者が投票する理由について話したい。

まずは、「デンマークでは政治が身近になる理由」を考えてみよう。

 

1. 政治の話がランチや夕食時の話題になるぐらい、普通の話題である。「保育施設の開園時間」や「失業手当が受給できる年数」など密接に生活に関わりのあることが国会の議題になっている。

2. 若い、また同年代の政治家が活躍していて、しかも若者の権利や利益につながることを主張するから、若者にとっても、毎日の生活で、政治および政治家が身近に感じやすい。

3. 政治家が政治を市民に身近に感じてもらうための工夫などを積極的にしている。政治集会などに行くと党のリーダーと一対一で話せたりする、街中でも偶然出会ったりして物理的に近くにいる感覚がある。

4. 政治家の話がわかりやすい。政治家が、理論立てて話し、聞き手である市民に理解しやすいように、工夫しながら話している。

5. 政治イベントが一種のお祭りになる傾向がある。たとえば,政治家の演説集会には、バンドが付いてくることが多い。有名なミュージシャンが演奏することもある。その場に若者を呼び込む工夫があるのだ。

 

このように政治が身近であるがゆえに、選挙で投票するということが、お風呂に入るぐらい普通のこととして捉えられているのではないかと考えている。もちろん投票は義務ではなく「権利」として認識されているものの、強制されなくても、身近であるがゆえに「するべきこと」として捉えられていることが鍵になっているのではないかと思うのだ。

身近に感じやすいということにはもちろん、国の規模も関係してくるだろう。日本での地方自治体のサイズがデンマークの国全体のサイズ(560万人)であることを考えると、デンマークにおける政治の「身近さ」を、日本の地方選挙において、達成することはできるのではないだろうか。

最近デンマークの政治家と話をしたのだが、その方は次のように言っていた。投票というのは国民が持つ権利である。デンマークでは、市民がそれまでの王制に反旗を翻し、民主主義を獲得したという経緯がある。与えられたのではなく、勝ち取ったからこそ、その権利の行使に真剣になる。この点は、間違っていない。ただ、現在は「権利を行使するために選挙に行くべきだ」と考えている人はそれほど多くはないと思う。

でも政治家は、その状況に甘んじてはならないと思う。政治家は、市民から選ばれた市民の代表であることを忘れてはならない。第二次世界大戦のドイツのように、政治家は、市民の権利をそれと知られないうちに奪う力もあるからこそ、その力を用いて市民が権利を過不足なく行使できるように枠組みを整える必要がある。それができないのであれば、それは代表者たる政治家が国民の権利を侵害しているのであり、政治家の怠慢である。

政治家は自分の目標を達成するために、政治を悪用することもできてしまう。特に投票率が低いと、それが国民の総意とは言えなくなり、政治家はその力を失うことになるのに投票率を上げる努力をしないのは政治家の怠慢だ。投票率が低いことは政治家にも責任があり、長期的には政治家の首を絞めることになるだろう、そんな意味合いになるだろうか。

だからこそ、市民を呼び込むような「お祭り」選挙は,逆に多くの市民を「巻き込」み、「するべきこと」を障害なく実施させるための工夫として積極的に活用されているのだろう。

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