[宮家邦彦]【日韓、ようやく歩み寄り始める】~一気に関係正常化が進む可能性には疑問符~
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(2015年6月22-28日)」
22日、日本政府関係者は「大忙し」だったに違いない。午前には訪日中の尹炳世韓国外相が安倍首相を表敬、夕方には安倍首相が国会を抜け出して在日韓国大使館主催記念式典に出席、更に、夜には衆院本会議で国会会期を9月27日まで95日間延長することを連立与党と次世代などの賛成多数で決めた。韓国外相は朴槿恵大統領のメッセージを安倍首相に伝達したという。朴大統領もソウルで同様の式典に参加した。日本メディアはこの動きを「突然」と受け止めたが、必ずしもそうではなかろう。他方、確かに韓国は孤立しつつあったが、そこは「阿吽の呼吸」だ。いずれにせよ、ようやく日韓が歩み寄り始めたのだとしたら大歓迎である。
但し、これで一気に関係正常化が進むとは思えない。朴大統領は安倍首相の70周年談話だけでなく、韓国内政の状況、米中の出方などを慎重に見極めながら決断するだろう。それにしても、95日間という国会延長幅は聞いたことがない。安倍政権の決意を示すものだろうが、期間の長さと法案の成立は必ずしも比例関係にはない。
〇欧州・ロシア
今週は欧州も重要案件が目白押しだ。22日にはギリシャ問題でユーロ圏首脳会議が、対ロシア経済制裁更新問題でEU外交理事会がそれぞれ会合を開く。23日にはパリで仏独露ウクライナ外相会談も開かれる。更に、25-26日には欧州評議会首脳会議がギリシャ、ロシア、英国EU関係、移民、リビア等の懸案を議論する予定だ。
〇東アジア・大洋州
21日から韓国外相が訪日し、22日には東京とソウルで正常化50周年記念式典がそれぞれ開かれる。また、23-24日には南シナ海で海上自衛隊とフィリピン海軍が共同訓練を、ワシントンでは米中がS&ED(戦略・経済対話)を、それぞれ行う予定だ。
更に、24-25日にはジュネーブで対日輸入制限問題に関する日韓協議が、28日にはユネスコで日本の世界文化遺産に関する決定が予定されている。どうやら日韓関係にとっては極めて重要な一週間になりそうだ。
〇中東・アフリカ
22日にPLOがパレスチナ統一政府について議論する。ガザのハマースとの連携話はなかなか進まないようだ。24日にレバノン議会が大統領選出を再開するが、これまで既に20回以上失敗しているらしい。これはもう悲劇を通り越して喜劇である。25日にはエジプトでアルジャジーラ記者の裁判が再開される一方、パレスチナがイスラエルの入植地問題を国際刑事裁判所に提訴する。中東は相変わらずだ。
〇アメリカ両大陸
30日にブラジル大統領が訪米する。元々は2013年10月訪米予定だったが、米国家安全保障局(NSA)によるブラジルでの通信傍受が発覚し中止されていた。1年8か月ぶりの大統領訪米で両国関係は修復に向かう可能性が出てきた。
〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。