[難波美智代]【男性が“女性のからだ”について学ばねばならない理由】~子宮頸がんを知ってますか?~
難波美智代(一般社団法人シンクパール(Think Pearl)代表理事、「女性からだ会議®」 ファウンダー、厚生労働省がん対策推進協議会委員)
「難波美智代の「女性のからだ」から未来の日本を考える」
今、安倍政権はウィメノミクスの推進を声高に叫んでいます。人口減少、高齢化が急速に進行する中、女性の労働力が必要とされていることはわかります。しかし、女性の健康問題についてあまり語られないのはなぜなのでしょうか。私は2009年10月36歳のときにたまたま受けた検診で、初期の子宮頸がんがみつかりました。そして、子宮を失いました。自覚症状もなく、はっきりいって病気のリスクにノーマークでした。現在、日本では、2人に1人はがんになり、3人に1人はがんでなくなっています。増加の理由は「老化」。そのおもな原因は「食生活や喫煙」だといわれています。その中で、「子宮頸がん」は、20〜30歳代に急増しています。
女性が働くことや、妊娠、出産、子育てを選択するとき、そうした役割は、健康でなければ担えません。一にも二にも、女性の健康が大切なのに、時として“女性のからだ=健康”については真剣に語られてこなかったのです。今、なぜ女性の健康なのか、なぜ女性のからだについて語るべきなのか?その理由を考えてみました。
なんといっても、女性をとりまく社会的背景が大きく変わったことが大きいでしょう。仕事をする女性が当たり前となった現在、女性も男性も同じ一人の働く人間です。どちらもいきいきと働くためには「からだ」のことを正しく知り、対処することが重要です。健康を害しては働くことも出来なくなるし、家庭=家族にも深刻な影響が出ます。
また、会社の立場からすれば、従業員の健康の維持・増進は、欠勤や病欠、病気による退社などを未然に防ぎ、その結果、会社の生産性向上に繋がります。従業員の健康管理に重点を置いた経営は「健康経営」と呼ばれ、今や多くの企業で積極的に推進されています。男性の健康も女性の健康も等しくその対象となるべきでしょう。
また、最近よく耳にする「イクボス(育Boss)」。男性従業員や部下の育児参加に理解のある経営者や上司をさすのですが、本来、育児だけでなく病気や介護、趣味、ボランティアなど多様なライフスタイルを理解することにより、組織の生産性を高め、中長期的な業績拡大を目指すことを求められているのです。
働く女性がこれだけ増えている現在、すべての管理職は「イクボス」となり、部下たちが効率よく仕事が出来る環境を整備しなければならない時代となったのです。そのために女性のからだに対する知識は必要不可欠だといえます。
さて、話を子宮頸がんに戻します。このがんは、日本ではあまり聞いたことがないかもしれませんが、世界では、子宮頸がんを未然に防ぐための教育が当たり前のように行われ環境も整っています。例えば、女の子が初めて生理になったら家族と産婦人科を訪れ、からだの変化やリスクについて知るのです。
又、学校では男子も女子も一緒に、生物としての男女のからだについて学びます。さらに、SEXデビューしたら、定期的な検診をスタートします。しかし、日本ではそうした学びの機会もほとんどなく、女性の検診率は非常に低いままに止まっているのが現実です。
子宮頸がんは女性の約80%が感染を経験している、SEXによるウィルス感染が原因の病気です(性病ではありません)。自覚症状がないままに進行すると子宮や命を失う可能性がある「がん」です。
『男性は誰もがうつしてしまう可能性があるし、女性は誰もがかかる可能性がある』のが子宮頸がんですが、「子宮」や「SEX」とか口にするのは恥ずかしいし、なかなか病気のことは会話にしづらいので、知識や経験はシェアされていません。「妊娠」「出産」の選択や適齢期、その他の婦人科疾患もそうですが、とても大切なことなのに困った時にはじめて知ることが多すぎるのです。
これからこの連載で、女性だけでなく、男性も知っておいた方がいいことをどんどん発信していく予定です。
「子宮頸がん 私の問題」HP
http://www.shikyukeigan.jp/index.xhtml(画像引用元)