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.国際,ビジネス  投稿日:2015/7/11

[俵かおり]【日本中古車が席巻するエチオピアに中国の影】~現地生産の中国車が人気~


俵かおり(在エチオピアジャーナリスト)

執筆記事プロフィール

エチオピアでは毎年10%ほどの経済成長を背景に、中~上流階級の人たちを中心に自動車を保有する人が増えている。毎日、特に朝と夕方の通勤時間帯は激しい渋滞が見られる。アジア諸国や他のアフリカ諸国では経済発展とともに、まずバイクを購入し、その後自動車、という大きな流れがあることが多いようだが、ここエチオピアではバイクはとても少ない。山岳地が多いエチオピアではバイクは利便性が少ないことが原因の1つのようだ。

そのエチオピアで最も多いのは何と言っても日本の中古車。中古車といっても、日本を含め、町を走るほとんどが先進国ではもはや見ることのなくなった30~40年前ほどのモデルで、タイムスリップしたような感覚にさえなる。圧倒的なのはトヨタ車で80%ほどのシェア。残りは日産、スズキ、ダイハツなど。青色のタクシー車(エチオピアのタクシーは青色か黄色)は、何十年も前のロシア車のラーダなどをよく使っている。

富裕層の間で圧倒的な人気を誇るのはトヨタのランドクルーザー。エチオピアは道路事情も悪く、運転マナーも悪いため、大型車であれは圧倒的なパワーを示すことができ、命の安全も確保できるのだ。(ちなにみ、首都アディス・アババでは信号機は3、4機あるだけだ)メルセデスなどの高級ドイツ車はまれにしか見ない。

エチオピアの自動車関税は200%と非常に高い。従って日本では最も安いモデルの1つ、トヨタのカローラでも、スズキやダイハツの自動車でもエチオピア人にとってはかなりの高級車だ。そしてここは、数年乗っても購入時とほぼ同じ値段で売ることができるマーケットでもある。エチオピア人の日本車に対する信頼は厚い。「日本車は高いけれど、壊れない。だから日本車を買う」と彼らは口を揃えて言う。

こんなエチオピアの自動車マーケットにも変化が少しずつ表れている。中国車が増えてきていることだ。中でも多く目にするようになったのが中国のLIFAN。このメーカーの新車を乗る人が少しずつではあるが確実に増えている。エチオピア人に聞くと、カローラと同等のモデルがほぼ半額で買える、という。

日本も欧米メーカーもまだエチオピアで自動車生産は行っていないが、このLIFANはエチオピアで組み立て工場を持っている。小型車からセダンなど様々な車種を組み立て、年間約4000台を生産している。町中でもショーウィンドウを持って積極的に宣伝している。

エチオピアは海がなく、港から遠いこともあり、輸送コストなどもかかる。インフラ整備も乏しい。人件費そのものは中国よりも安いが、効率的に働ける人材も乏しく、最終的にかかるコストは安いとはいえないのが現状だ。けれども、将来的には製造の拠点の1つとしてアフリカ諸国の中でも高い可能性を秘めていること、そして9400万人というアフリカではナイジェリアに次ぐ人口を持つこの国の消費国としての可能性を中国メーカーは見ているのかも知れない。

自動車台数が劇的に増加するアディスでの生活は、排気ガスによる大気汚染との闘いでもある。人々が乗るのは古いディーゼルの中古車であるため、自動車からは黒い煙が吐き出されている。日中、飛行機に乗る機会があって上空からアディスを見ると、スモッグのように街全体が覆われていて、ぞっとする。この中で我々も暮らしている。この地にハイブリッド車や電気自動車など夢のような自動車がお目見えするのは、一体いつになるだろうか。

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※写真上:私がよく使うタクシードライバー、彼の車は古いブルーのプジョー。
※トップ写真:首都アディス・アババで。いたるところ工事中で、その間を多くの自動車が走る。
ともにPhoto/Kaori Tawara

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