[遠藤功治]【営利、我が国初の3兆円乗せへ】~大手自動車会社決算と今後の課題 トヨタ 1~
遠藤功治(アドバンストリサーチジャパン マネージングディレクター)
「遠藤功治のオートモーティブ・フォーカス」
自動車や自動車部品会社の決算が出揃いました。ここでは各社の決算を精査すると共に、今後の各社の課題等につき、ご報告したいと思います。特に、トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車、マツダ、スズキの5社につき、最近のトピックスも含め、考査することにします。今回はまず、トヨタ自動車を取り上げます。
1.トヨタ自動車
2015年3月期の売上高は前年度比6%増の27兆2,345億円、営業利益は同20%増の2兆7,505億円となり、共に2期連続で過去最高益を更新。純利益も19.2%増の2兆1,733億円となり、日本の企業としては、純利益で初めて2兆円を超えを達成しました。また、2016年3月期の会社計画は、売上高で1%増の27兆5,000億円、営業利益は1.8%増の2兆8,000億円と、3期連続での過去最高更新を予想しています。
今期予想値が余りに保守的との見方が多いのですが、その前提となる為替レートは、対米ドル115円です。この会社は対米ドルで1円動くと、営業利益では約400億円の影響があります。現在の足元のレートは123円前後で会社想定から8円の円安となっています。もしこの為替水準が来年3月末まで続くとすれば、単純計算では、3,200億円ほどの更なる増益効果が乗り、今期の営業利益は3兆1,200億円となり、増益幅は13%に拡大、また日本企業としては営業利益で初の3兆円乗せが確実になります。
トヨタ自動車の昨年度の世界販売台数は連結ベースで897万台、一昨年に比べ14.4万台、1.6%の減少でした。自動車会社の販売台数について注意すべき点は、その台数が何をベースにしているのか、ということです。トヨタの場合は、連結ベースとグループベースの2種類が有りますので注意が必要です。連結ベースとは、トヨタ単独に加えて、連結子会社である日野自動車やダイハツ工業の台数も含まれた数値。グループベースとは、連結子会社に加えて、持分適用会社の数値も含まれます。
日本及び大半の自動車メーカーの中国事業は連結対象ではなく、出資比率が現地中国企業との50:50ですので、持分適用となります。ですから、中国での販売台数は、連結ベースには含まれませんが、グループベースには含まれる訳で、実質的な販売台数とは、このグループベースの数値が最も適当かと思います。トヨタの昨年度のグループベースでの世界販売台数は1,016万台となり、連結ベースよりは119万台多い、うち中国分が103万台となります。
昨年度のトヨタ自動車の地域別販売台数は、日本国内が9%減の215万台、北米は7%増の271万台、欧州は1.8%増の86万台、中国を除くアジアが7.5%減の149万台、中国では12.5%増の103万台、それ以外(中東・豪州・中南米他)では175万台とほぼ横ばいとなっています。つまり、トヨタグループとしての世界販売台数の内訳では、北米が全体の27%、次いで日本が21%、中国を除くアジアが15%、中国が10%、欧州が8%という順番です。
(【意外、国内利益率は低水準】~大手自動車会社決算と今後の課題 トヨタ 2~ に続く。このシリーズ全3回)