[宮家邦彦]【トランプ旋風で得するのは誰だ?】~米大統領選、ワシントン不信根深く~
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(8月10日-8月16日)」
今週はいよいよ戦後70年総理談話が発表される。先週も書いたとおり、国内メディアは木を見て森を見ず、例の四つの「キーワード」が入るか入らないか、ばかりに注目している。この体たらくでは日本のマスコミも韓国や中国を笑えない。興味深いのは辺野古沖埋め立て工事の一カ月中断決定だ。マスコミは安倍政権支持率低下と関連付けたが、この「冷却期間」がどの程度機能するかは未知数だ。ガス抜きにしては不十分だが、さりとて沖縄県にも決定打はない。暫くは様子見だろう。
〇アメリカ両大陸
先週から今週にかけてCNNの最大の話題は共和党のトランプ旋風だった。米国共和党の友人は「米国を信じてほしい、トランプは大統領にならない」とメールを送って来た。そんなことは判っている、問題はトランプ出馬で真に得するのが誰かだろう。
それにしても、このトランプ氏、メキシコ人差別、女性蔑視などなどトンデモ候補であることだけは間違いない。彼が大統領選から消えるのは時間の問題だが、トランプ人気の真の原因は国民の根強いワシントン不信である。
これが続けば続くほど、ジェブ・ブッシュ以外の共和党候補には不利となる。一方、それでは共和党が割れる可能性すらあるので、ブッシュは本選で勝てないかもしれない。最後に笑うのはヒラリーか、ジェブか、それとも無名の新人か。1991年秋のビル・クリントンの台頭を思い出す。どうやら米国内政の受難も続きそうだ。
〇欧州・ロシア
ヨーロッパは完全にヴァカンス・モード、動いているのはギリシャの借金だけだ。14日に同国国債14億ユーロ分のリファイナンスが必要だが、あれほど大騒ぎした欧州が今週は静かそのもの。休みは休みということか、日本では考えられないが。
〇東アジア・大洋州
10日に九州電力が川内原発を再稼働させる。中東・エネルギー屋にとっては当然の措置だが、国民の反応が気になるところだ。安倍総理談話は14日の予定だが、韓国では14-15日が連休になる。15日に韓国大統領が行う演説は要注意だ。
〇中東・アフリカ
欧州は開店休業だが、中東は仕事をしている。トルコでは10日以降も連立政権議論が続いている。レバノン議会では大統領選びが再延期された。もう26回目というから、半年間何も決まらないということだ。そのレバノンを12日イラン外相が訪問する。
14日から十日間、上海でエジプト観光展が開かれる。今頃、カイロ、ルクソールに行く中国人がいるとすれば、余程の物好きか、冒険家だろう。先週、カイロで拉致されたクロアチア人がISISの宣伝ビデオで殺害予告されていた。エジプトの受難は続く。
〇インド亜大陸
10日にパキスタン首相がベラルーシを訪問する。15日はインドの独立記念日でもある。今週はこのくらいにしておこう。
いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。