.社会 投稿日:2015/10/1
[為末大学]【“変えられないもの”に対する接し方】~受け入れるのか、抵抗し続けるのか~
為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)
友達に数人英語をほぼ完璧に喋る人間がいるのだけれど、アクセントがある人とない人がいる。彼らが言うには12,3歳あたりを過ぎて英語を使い始めた人はアクセントが抜けないらしい。二足歩行のやり方は各国違う。日本人は手をあまり振らず歩幅も狭めで、水平移動するように歩く。アメリカ人は上下動しながら大股で手を振って歩く。アジアでも韓国中国系の女性はガニ股が多い。日本人は内股が多い。
これらの身体動作の癖は私の考えでは生涯抜けない。所作の多くは物心ついたかどうかの時期に模倣によって得られ、そしてほぼ無意識で繰り返され、身体に染み付いていく。日本人が20歳をすぎてアメリカ人のようになろうとしても、アメリカで生まれ育った日系人のようにはなれないと思う。12歳をすぎて体操を始めてオリンピックに行った人は稀だ。
木を見る西洋人、森を見る東洋人という本がある。水槽に大きな魚が泳いでいて周辺に小魚が泳いでいる。アメリカ人の多くは大きな真ん中の魚の特徴に言及したらしく、東洋人は周辺の魚や水槽、生えている海藻に言及したらしい。物事の見え方すら生まれた環境で定義され、そしてそれはその後変わらない。
調味料の会社、食べ物の会社は子供達になんとかして食べてもらおうと頑張る。ある年齢までに覚えた味は生涯にわたって残っていくらしい。味覚や、好み、何を心地よいと思うかも、ある程度環境に影響され、そしてそれは生涯変えられないものとして残る。
変えられないものに対し、二つの態度がある。受け入れるか、抵抗し続けるか。どちらの態度を取るのかということすら、育った環境に影響されるという人もいる。