無料会員募集中
.国際  投稿日:2015/10/9

[古森義久]【TPP合意は日米の対中勝利】〜中国の軍拡に備えた安全保障に寄与〜


古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)

「古森義久の内外透視」

執筆記事プロフィールBlog

TPP(環太平洋経済連携協定)の合意成立はアジアでの貿易関連の競争でアメリカや日本が中国に対して勝利をおさめたのだといえる――

こんな総括をアメリカ大手紙のニューヨーク・タイムズが10月6日付で報道した。

同報道はアメリカやアジア諸国の専門家たちの見解をまとめる形でTPPが中国の経済や安保という面での影響力の拡大にブレーキをかけ、アメリカの重要な役割の継続を可能にする、という見方を打ち出した。

「アジアのアメリカの同盟諸国はTPPを中国へのブレーキとみている」という見出しのこの記事は今回の合意を「オバマ大統領の勝利」とまで評して、同大統領がアジアでのこれまでの中国の膨張を抑える形でこのTPPをまとめたと総括していた。

同記事はまた安倍晋三首相が日本国内の反対までを抑えてTPPを推進したことは同首相自身の政治的業績であり、中国との利害のせめぎあいでも、大きな得点になったという評価を強調していた。

この記事によると、シンガポールの元外務省高官ビラハリ・カウシカン氏は「もしアメリカがTPPの合意のまとめに失敗していたら、アジアでのアメリカへの信頼や名声は重大な打撃を受けたから、この合意成立はアメリカのアジア関与の大きな成功としてアジア諸国から歓迎される」と述べ、同時に「アジアでの中国の影響力に明らかに影を投げる展開だ」とも語っていた。

アメリカ側でもオバマ政権のアシュトン・カーター国防長官は「TPPの成立はアジアでのアメリカ側陣営にとって数隻の大型航空母艦の登場にも匹敵する」と述べ、TPPの効用は経済面だけに留まらず、中国の軍拡に備えての安全保障への寄与が大きいことを強調していた。さてこうしたTPPをめぐる状況に当の中国はどう対応するのだろうか。

トップ画像:出所 内閣官房HP


copyright2014-"ABE,Inc. 2014 All rights reserved.No reproduction or republication without written permission."