[宮家邦彦]【米、中国領海内に軍派遣か】~南シナ海“人工島”問題~
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(10月19日-25日)」
今週は南シナ海でオバマ政権が中国の作った人工島周辺「領海・領空」内に米軍艦船・航空機を派遣するかどうかが焦点だ。解放軍幹部は領有権問題に関し「軽率に軍事力に訴える」ことはないと述べたそうだが、これで安堵する者はいないだろう。発言したのは解放軍制服組トップの中央軍事委員会副主席、中国は「予期しない衝突を回避するために最大限努力する」とも述べたそうだ。米国防長官は国際法の許す限り「どこでも飛行し、航行する」と述べたから、領海内派遣は時間の問題だろう。
この問題には短期と中長期の視点がある。短期的には、米国は必ず艦船・航空機を派遣するだろう。実行しなければ、米国は最早「大国」ではなくなるからだ。一方、中長期的には、米軍がこうした行動をいつまで続けられるか注視する必要がある。
1996年台湾総統選挙前に中国が台湾海峡にミサイルを発射した際、米国は「これ見よがし」に米空母機動部隊を二つ相次いで台湾海峡に派遣した。しかし、現在同様のことが起きても、米海軍は空母機動部隊を台湾海峡に派遣しないだろう。
理由は簡単。中国のミサイル誘導能力が向上したからだ。されば、今から10年後の2025年、解放軍の前線基地となったこれら人工島に米軍艦船・航空機は近付くことができるか。これが南シナ海の「A2/AD(接近阻止・領域拒否)」の実態だ。
○欧州・ロシア
20日にウクライナ問題の会合がベラルーシで開かれるが、問題解決には程遠い。同様に、あれほど騒がれた難民問題は今どうなっているのか。ハンガリーだけではない。クロアチアもスロベニアも、どこもかしこも、欧州諸国は「たらい回し」ばかりだ。
〇東アジア・大洋州
19日から中国国家主席が訪英する。アヘン戦争から175年、遂にあの大英帝国が中国に屈したかに見える。中国による歴史的意趣返しか、それとも、強かな英国の生き残り戦術か。同じく19日から30日までフィリピンと豪州が共同軍事訓練を行う。
〇中東・アフリカ
22日から28日まで安倍首相が中央アジアの柿田棟(カザフ、キルギス、タジク、トルクメン、ウズベク)スタン国家を訪問する。ここはロシア・中国にとっての裏庭、ウイグルなどイスラム過激派に神経を尖らす中国のアキレス腱でもあり極めて重要だ。
〇アメリカ両大陸
先週の米民主党大統領選候補者によるテレビ討論ではヒラリー・クリントンが頑張った。CNNなどは「存在感を示した」と報じていたが、この種の政治スキャンダルは決して直ちには爆発しない。しないからこそ、恐ろしいのだ。ヒラリーの危機は続くだろう。
〇インド亜大陸
20日からパキスタン首相が訪米する。今週末はイスラム暦の新年だ。今週はこのくらいにしておこう。
いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。