[宮家邦彦]【ASEAN、中国の南シナ海軍事基地化議論】~外相会談で。米ケリー長官もアジア入り~
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(8月3日-8月9日)」
今週は夏枯れなのか、あまり大きな動きはない。欧州では夏季休暇の中でギリシャの株式市場が5週間ぶりに再開したが、マーケットの反応は厳しかったようだ。欧米の要人で暑い中、今週も働いているのは米露の外相ぐらいだろう。
日本では70年目の広島と長崎がやって来る。考えてみれば、戦後70年間の日米和解は歴史的に見ても一大サクセスストーリーだと思うが、その中で今も蟠(わだかま)りが残るのが原爆問題だ。それでも、日米が更なる和解に近づくことは可能だと思う。
一方、今週と来週の内外メディアの関心事は戦後70年総理談話の中身であり、既に様々な質問や照会を受け始めている。私が知る訳ないし、そもそも21世紀懇談会は総理談話の草案を練る場所ではない。記者の皆さま方、誠にご苦労様です。
〇欧州・ロシア
冒頭にも書いたが、3日にギリシャの株式市場が再開されたが、一時は23%も下落したそうだ。それでも中国当局がむちゃくちゃな介入を行った上海市場とは大違い。図らずもギリシャは自由主義経済の民主国家であることを証明したようだ。
なぜか、米露の外相が3日にカタールで会談する。ケリー国務長官はイラン核合意の結果をGCC諸国に説明するため派遣されたのだろうが、ここになぜラブロフがいるのか、流石はロシアだ。
〇東アジア・大洋州
8月1日から6日まで恒例のASEAN外相会談が開かれる。ここでの焦点の一つは言うまでもなく南シナ海での中国の活動だろうが、今年は如何なる議論になるのだろうか、要注目だ。
4日にケリー長官はシンガポールに入り、その後マレーシアでのASEAN地域フォーラムに参加する。同フォーラムは今回が22回目、やはり継続は重要だと痛感する。昔は皆が集まるための会合だったように思うが、最近は機能し始めたようだ。
朝鮮半島では、5-8日に金大中未亡人が訪朝するらしい。何をしに行くかは知らないが、北朝鮮側もあの手この手でちょっかいを出そうとしているのか。呼ぶ方も呼ぶ方なら、行く方も行く方だと思う。
〇中東・アフリカ
米GCC外相会談以外で重要なのが5日カイロで開かれるパレスチナ問題に関するアラブ外相会議だ。15カ国が参加するというが、各国とも国内問題で忙しく、パレスチナどころではないだろう。この会議で何か重要なことが決まるとは思えない。
〇アメリカ両大陸
先週から今週にかけては米国防長官、国務長官が相次いで中東を歴訪していることは既に書いた。国内では大統領選が徐々に動きつつあるが、共和党側はまだ星雲状態、民主党ではバイデン待望論が出ているという。まだまだ紆余曲折が続くだろう。
〇インド亜大陸
3日にインドとバングラデシュが領土交換後の国境管理について話し合う。今週はこのくらいにしておこう。
いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
※トップ画像:出典 外務省HP