[細川珠生]【夏参院選、民度が問われる年になる】~特集「2016年を占う!」国内政治~
日本の同盟国であるアメリカも、11月に大統領選が行われ、8年間のオバマ政権の後のアメリカが、どのような方向に進んでいくのか、世界が注目している。しかし、何といっても、日本は7月に参議院選挙が控えている。小泉政権以降なかった長期政権に入ったかと思われる安倍政権が、内政においても外交においても、国民の信任を得られるか、国民の真意を知る大事な機会となる。
国民の最大の関心は、何といっても景気の回復ができ、経済が落ち着いていくかということであろう。総務省統計局の「家計調査報告」によれば、2015年11月の二人以上世帯の一世帯当たり実収入は、425,692円で1.8%の減少。消費支出も、273,268円で2.9%の減少である(共に実質の前年同月比)。この減少傾向は、2014年4月の消費税増税の影響からまだ脱却していないことに原因があると思われる。
昨年末、与党内での連日の協議でようやく決着した来年4月の消費税の再増税に対する軽減税率は、生活必需品である加工品を含む食料品について導入することになったが、そもそも増税するだけの〝体力〞に回復しているかどうかという判断は慎重に行わなければならないだろう。
2%の消費増税による税収増は約5兆円余だが、そのうち1兆円は、軽減税率による減少が見込まれるため、4兆円程度の増収にしかならない。消費税の増税の根拠でもある社会保障費の増加は著しく、40兆円超となっている現状を考えれば、政治はどこかで増税を判断しなければならない責任がある。しかし、前回の3%の増税の影響から脱していない現状で、更なる増税により、消費支出そのものの増加が見込まれないことは、負担をする国民も、税収のやりくりをする政府もだれも「嬉しくない」結果となることは目に見えている。
安倍総理は、政策の要として、アベノミクスを本物にするための「新・三本の矢」を挙げるが、経済の回復を本物にするためには、消費税の再増税を再延期することが一番の特効薬ではないだろうか。その判断は、今年10月と言われている。国民の真意をくみ取って判断するためにも、経済の実態を正しく公表し、正々堂々と選挙を戦うべきである。
一方、野党には、国民の命を守る、日本という国を守るための責任を果たしてもらいたい。昨年の安保国会では、ホルムズ海峡が封鎖されるような有事は「遠い」ことを理由に、それが武力行使の条件である存立危機にはならないというような理屈で、安保法制に反対していた。しかし、日本は原油の8割以上を中東地域から輸入しており、同地域の不安定化は死活問題に直結する。「日本が困るときは、他の国も困るから、そういう状況は長引かない」という理屈を述べる議員もいたが、他の国の反応に依存するような対応はあまりにも無責任ではないだろうか。
そもそも安全保障を考える上で、地理的要因が重要だとは思えない。それは、「遠いところだと現実味が帯びない」という意識の問題であり、国防というのは、いついかなる場所で何が起こっても、日本国民を守ることができるかという観点から考えるべきである。いつまでも、「国民を戦争に巻き込ませる」などというまやかしで与党に対抗するのではなく、事実に即して与党の不備を追求し、国民の信頼を得ていかなければならない。政権与党には、緊張感が必要である。
そのためには、国民が政治に関心をしっかりと持つことと、野党の力が必要である。今年の参議院選挙からは18歳以上が有権者となる。親世代の大人たちこそが、政治を正しく学び、判断する、民度が問われる2016年になるだろう。