世間と乖離、加熱するスポーツ紙SMAP報道~冷静にネットで物申す人々~
神津伸子(ジャーナリスト・元産経新聞記者)
SMAP解散報道騒動から1週間が過ぎた。17日(月)にフジテレビ「SMAP×SMAP」の生放送でのメンバー謝罪以降、テレビの情報番組でSMAPに割かれる時間は減少してきたが、スポーツ紙・週刊誌等はエスカレートする一方だ。しかし、その方向性は、冷静に事の成り行きを見守る“ファンでない人々”、いわゆる一般の人々の感覚から日々大きく乖離して来ているものも少なくないのではないだろうか。時々刻々、更新されるYahoo!ニュースへの人々の通常にない異常な数のコメント、その意見への賛同数から浮き彫りにされている。
−ファンだけでない今回の騒動への声
冷静な声とは言い難いが、大きな動きを見せているのがファンの署名活動、購買行動だ。「Change.org」で、存続を求める署名がすでに35,000件に迫り、ファン同士の呼びかけで、レコチャクのデイリーランキングでも21日現在、2位に「世界に一つだけの花」、3位に「オレンジ」、10位に「夜空のムコウ」がランクインしている。また、Amazonなどへの書き込みも熱い思いが綴られている。
これらのファンの声も一部メディアでは報じられているが、何より、今回の騒動の特徴は、「自分は特にファンではないけどね、でも…」という声、書き込みが多い事ではないだろうか。以下にその事を、数字で検証する。
−関心の高さと冷静に意見する人々
一例を挙げると、21日午前1時現在、Yahoo!ニュースエンタメ記事で、コメント数が2位というこちらの記事。
『キムタク存続表明で「男ぶり上がった」CMスポンサー指摘』
スポニチアネックス 1月20日(水)7時47分配信
分裂の危機にあったSMAPの木村拓哉(43)をCM起用しているタマホームは「SMAPというより、木村さん個人を見込んでの契約でしたので、解散しても出ていただくつもりではあった」と説明。存続表明時の木村を振り返り「一般的には男ぶりは上がったのでは」と指摘した。(以下略)
この記事に寄せられているコメント投稿は、同時刻で5,837数で、1時間当たり365件とYahoo!により算出されている。最も共感されている上位コメントは
「いやいや、違うでしょ。むしろマイナス的なイメージが…」に、共感を意味する、いいね!数が65,093、反対2,347
「いや、下がったでしょ」
いいね!61,087、反対2,201
「そうかなぁ。仲間を売ったとしか思えないけど」
いいね!56,484、反対2,163
また、同時刻にコメント数が1位のこちらのエンタメ記事。
『中居、キムタクへの感謝コメント拒否していた!楽屋も1対4で別々』
サンケイスポーツ 1月20日(水)5時0分配信
については、現状を冷静に見るコメントが上位を占める。
「9月で解散だろうね。でも、それの方が幸せかも知れません。奴隷じゃないんだから。」
いいね!88,228、反対6,685
「これまではIさんのマネジメントでジャニーズの他グループとは距離を置くスタイルが“容認”されていたが、今後は他グループとの活動も求められる。ってあるけど、別に、拒否していたのはSMAPじゃないと思う。どうしても4人を悪者にして、他のジャニーズタレントへのみせしめにしたい感じがでていて、本当に嫌だし、悲しい。なんで、SMAPが謝らなきゃいけないの??」
いいね!78,844、反対5,704
「4人は悔しいだろうなぁ。マネージャーさんも含めて。中居君は耐えられないかもな 」
いいね!76,560、反対5,395
この中には、ライター、リサーチャーで、『文化社会学の視座:のめりこむメディア文化とそこにある日常の文化』等の著書がある松谷創一郎氏もコメントしており、「スポーツ新聞が、中居さんを中心とした4人を「造反者」として捉える報道には、やはり強い違和感を覚えます。(以下略、Yahoo!ニュースご参照)」 には、3万人を越える“参考になった”ボタンを押した人間がいた。
記事がアップされた時刻が異なるとはいえ、参考までに、同時刻のYahoo!ニュースのトップ記事「甘利経済再生担当相に金銭授受報道」へのコメント数は752件、共感トップコメントへの、いいね!数は1,438、反対は280。
−数字が示すもの
「たかが芸能ニュースに躍る日本は、本当に平和ボケ」という声はよく耳にするが、この数字が示す通り、関心度合いは非常に高く、事実はこの通りだ。
ある大手企業の宣伝担当者は、冷静に分析する。
「この結果を見たら、客観的に見て、自分のところでこのようなタレントさん(木村拓哉)を使っていたら、一定期間でも、そのCM放映は自粛するでしょうね」
上記のYahoo!ニュースへのコメントは、どれを見てもファンが書き込んだものとは言い難い内容だ。そして、それに多くの意見が寄せられ、共感が溢れ、客観的事実を正しく報道しているとは思えない記事はどんどん糾弾されていく。
その内、不買運動でも起こりかねないような勢いが、現在の冷静な読者・視聴者にあるように見えるのは、筆者だけだろうか。もちろん、何でもかんでも面白おかしく書きたて売らんかな、というのも一部メディアの姿勢であるのは紛れもない事実でもあるのだが−。