.JID,.国際,.政治,.社会  投稿日:2015/12/19

[Japan In-depthチャンネルニコ生公式放送リポート] 【2015年メディアの誤報大総括】~日本報道検証機構代表楊井人文氏~

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2015年12月16日放送

Japan in-depth 編集部(Sana)



年内最後の放送となったJapan in-depthニコ生放送、本日は日本報道検証機構(GoHoo)とのコラボ企画として、機構代表楊井人文氏をゲストに、2015年世間を騒がせたメディアの誤報を特集した。

2015年始め、JIDチャンネルは朝日新聞が起こした所謂「2つの吉田ショック」を取り上げた。「日本の報道史に残る誤報だった」と安倍編集長が語る「吉田ショック」とは、約30年前の従軍慰安婦に関する証言を朝日新聞社が誤報と発表したもの、そしてスクープとされた福島第一原発事故の際の調書「吉田調書」が誤報だったというものだ。この一連の出来事を受け朝日新聞は、第三者検証委員会を立ち上げ、大規模な組織編成を行った。

「朝日新聞がこの誤報後、どのように立ち直るか」に注目していたという楊井氏。1月5日に発表された再生計画では、「ともに考え、ともにつくるメディアへ」をスローガンに、パブリックエディター(4人)を日本で初めて導入し、フォーラム面で広く記事への異論反論を集め、訂正記事コーナーを作った。

4月1日に新設されたパブリックエディターについて楊井氏は「(他社では)池上彰さんのような学者がこの記事いいね、悪いねというようなことをコラムで連載する形はあるが、パブリックエディターでは紙面の内容を調査する権限がある(中略)。場合によっては(是正)勧告することもある」と補足した。しかし、今年1年でパブリックエディターが具体的な記事を検証したのは、日本報道検証機構の指摘を受けて小島慶子氏が行った1例だけだったという。「もう少し踏み込んだことをしてほしい。月一のパブリックエディター(の寄稿)は、あまり知られていない。フォーラム面では当初朝日新聞への反論・異論を掲載する狙いだったが、あまりそのように使われているようには見えない」と楊井氏は述べ、来年更にこうした制度が活かされることへの期待を示した。

安保法案の違憲問題についてJIDチャンネルは何度も放送した。朝日新聞の安保法案に関するアンケートでは、安保法案を違憲と考える憲法学者が全体の9割を占めたという点を各メディアが大々的に報道したが、同じ違憲派の中でも違憲とする理由が異なる点は伝えられなかった。違憲派の半数はそもそも自衛隊を違憲としており、安保法案違憲派といえども、自衛隊を合憲・違憲とするかで立場はまったく異なる。その点を無視し、安保法案違憲の名の下に一括りにされたことが、楊井氏曰く「議論の仕分けが行われなかった」原因だ。

今回の安保法案報道の特徴を「二極化」と楊井氏は評した。安保法案自体に賛成か反対かという点のみに焦点が当てられたが、事は国家の安全保障に関わる問題であり、安倍編集長は「賛成・反対で迫ってしまうにしてはあまりに複雑」と大切な議論が短絡的に終わったのは問題だとの考えを示した。

次に、2015年増加したBPO事案を取り上げた。楊井氏は、NHKのクローズアップ現代「出家詐欺」やテレ朝報道ステーションの「川内原発」報道などの放送倫理違反の話題を挙げた。今回の放送の2日前、テレビ朝日の世田谷一家殺害事件のスペシャル番組内で遺族が「恣意的な編集をされた」としてBPOに申し立てをした事例も紹介された。

楊井氏によるとBPOの放送人権委員会で審議中の案件は5件ほどあるとみられるという。「放送倫理」という言葉が目立った1年なのではないだろうか。安倍編集長が結論ありきのエンタメ性を問題とすると楊井氏も賛同し「未解決事件を解決することはいいことだが、小細工をしてトラブルを引き起こすことはもったいないことだ。報道被害者は我々の想像を超える心の傷を負う。(報道で)扱うときは慎重にしないといけない」と述べた。

今年最も大きかった誤報では、楊井氏は「イラクに派遣された自衛官の自殺率が非常に高い」との報道を「重大な誤報」とした。「イラク帰還隊員25人自殺、自衛隊期間中の数突出」という2012年9月27日の東京新聞の朝刊で報道された内容だが、「通常の5〜10倍(の自殺率)」とされた数値が誤報だった。「実際は(海外に)派遣されていない自衛官の自殺率と変わらない割合だった」と楊井氏は述べた。東京新聞が訂正文を発表したのは、GoHooの指摘後、今年の6月だった。

もう一つの誤報は、東京新聞2015年5月19日に報道された「オスプレイの事故率」アメリカ海兵隊の基準変更により、低い事故率に恣意的に引き下げ工作されていた、とされる内容だ。しかし実際はアメリカ海兵隊の恣意ではなく、米軍全体がすべての機種に適応する安全基準が変更されたことによるもので、オスプレイのみに的を当てたものではなかった。東京新聞の報道の元ネタは琉球新報が3年間で発表した約10本の記事。「読む方もちゃんと検証をしないと騙される」と安倍編集長は読み手の姿勢も大切であることを強調した。

「軽減税率について、メディアのあり方に一つ問題提起をしなければならない」と楊井氏は新聞も軽減税率8%の対象となったことを取り上げた。財務省が発表した給付案を、読売新聞が猛反対のキャノペーン報道をしたこと、新聞に軽減税率を導入することの是非を世論調査で質問していなかったことなどを楊井氏が指摘すると、「(新聞社が)政治と癒着していると思われても仕方がない」と安倍編集長は述べた。新聞に軽減税率を適用した場合の必要財源も、新聞は明確な数値を挙げず、欧州では新聞に軽減税率が適用されているのが一般的だという論を展開するのみだったことも問題として挙げた。

今年はISのテロが世界を震撼させたが、ISに関する正確な情報を得ることは難しく、メディアの報道も二転三転した。「(メディアは)“のど元過ぎれば忘れる”。しかしテロは至る所で起きている。テロで最も殺されているのはムスリムであり、テロは日常的に行われていることをもっと日本のメディアは報道するべきである」と安倍編集長は述べ、(シリア問題で)日本ができる支援のあり方をメディアが政府に提言する必要性を伝えた。

楊井氏は「日本のメディアの役割としては、緊張が高まるなかで、オリンピックもあるわけだから、(テロに備え)どこが脆弱なのかを検証するべきだ」と述べ、メディアは今以上に世論にテロへの危機感を持つよう促すべきだとした。また安倍編集長は、ISの映像そのものをメディアが報道することは、ISのプロパガンダ政策に加担する行為であると指摘した。

(この記事は、ニコ生【Japan In-depthチャンネル】2015年12月16日放送 を要約したものです)

 

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