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IT/メディア,国際,政治  投稿日:2016/1/26

NHK、沖縄基地問題で偏向番組~「シブ5時」日本の安全保障の観点ゼロ~

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古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)

「古森義久の内外透視」

NHKが沖縄の米軍基地問題を日本の高校生に解説し、議論させるという番組をみて、驚いた。米軍基地の基礎となる日本の安全保障という観点がゼロ、沖縄の地域住民にとっての環境問題としかみないのだ。その偏向したNHK視点を高校生たちに刷り込むというのは政治的な洗脳工作にもみえた。

この番組は1月25日午後5時から放映された「シブ5時」というニュースがらみの総合番組だった。そのなかで15分ほども費やすセクションに「高校生が考える沖縄 イチから学ぶ基地問題」という部分があった。東京都の高校生が沖縄に修学旅行するに際して、沖縄の米軍基地について事前に学習をさせ、そのうえで現地の実態を見学する、という趣旨の番組だった。

その進行役が安達宣正解説委員、そこに芸人の田畑、勝本という人物2人が加わっていた。その安達解説委員の沖縄の米軍基地についての説明はネガティブな側面ばかり、地元の住民が騒音に悩んでいる。米軍将兵が地元の女性を暴行した。沖縄県の基地負担が過剰に大きい。こんな点ばかりのあの手この手の紹介だった。

では沖縄に米軍基地がなぜ必要なのか。この点は安達解説委員は最初から最後まで何一つ述べなかった。日本の安全保障への言及がゼロなのだ。その過程で東京の男子高校生が「日本は憲法などのために戦うことができないから、米軍の強大な軍事力に国を守ってもらう。そのために米軍基地が沖縄には必要なのだと思う」と述べた。この鋭い指摘に対し、先生役の安達解説委員はなにも述べず、また基地の騒音などを語るだけだった。

後半で女子高校生が「日本に戦争をしかけようとするところはどこにもないから、米軍基地は必要ないと思う」と述べた。その結論の適否はともかく、「戦争」という概念と「米軍基地」とを結びつける発言は少なくとも沖縄の基地を日本の安全という文脈で考えようとする態度をみせていた。だがNHKを代表する安達解説委員はこれまたこの発言を無視して、「米軍基地問題は国と沖縄県とが同じ歩調で取り組むべきだ」などと、沖縄知事の安保無視の構えを応援するような言葉を発し、高校生が提起した重要な課題から逃げていた。

日本固有の領土の尖閣諸島は沖縄県である。中国がいま軍事力を使ってでもその尖閣諸島を日本から奪取しようという企図していることは武装艦艇による尖閣至近の日本領海への毎週への侵入をみても明白である。

日本を敵視する北朝鮮が核兵器や弾道ミサイルを開発している。しかも韓国には実際に軍事攻撃をかけるし、日本に対しても好戦的な言辞を頻繁に発し、日本方向に弾道ミサイルを何度も発射する。中国の軍事脅威、北朝鮮の軍事脅威こそ沖縄の米軍基地の存在理由なのだ。だがNHKはそんな現実にはツユほどの関心も示さない。その象徴がこの高校生洗脳番組のように思えた。

NHKが規制される放送法は番組が「政治的に公平である」ことを義務づけている。「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにする」ことも決めている。沖縄の米軍基地は日本国が求めた結果、起きた現象だといえる。日本全体でみた場合、沖縄の米軍基地の存在には「対立する意見」があることは自明である。であれば、NHKは放送法の規定により、「多くの角度からの論点を明らかにする」義務がある。

だが1月25日放映の番組は沖縄の米軍基地への反対論ばかりを宣伝し、放送法に明らかに違反していた。そんな政治偏向番組に高校生を利用するとは、なんとも卑劣にみえた。

 

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この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「危うし!日本の命運」「中・韓『反日ロビー』の実像」「トランプは中国の膨張を許さない!」など多数。

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