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国際  投稿日:2016/2/13

北朝鮮ミサイルテストと安保理 その2 経済制裁の抜け穴

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植木安弘(上智大学総合グローバル学部教授)

「植木安弘のグローバルイシュー考察」

北朝鮮に対する最初の経済制裁は2006年最初の核実験直後に採択された安保理決議第1718号だ。この決議の下に、

 

1) 通常兵器(戦車、装甲車、迫撃砲、戦闘機、攻撃ヘリ、戦艦、ミサイルやミサイルシステム)

2) 核兵器を含む大量破壊兵器やミサイル開発に必要な物資、機材、モノ、技術などの提供

3) 贅沢品などの輸出

 

が禁止されている。

さらに、核兵器やミサイル開発に従事している人達への資産凍結や渡航制限などが加わる。

通常兵器に関しては、北朝鮮は既に相当規模の兵器を持っており、自己生産能力も高いため効果は薄い。ウラン濃縮技術やプルトニウム抽出技術は既得済みで、贅沢品は外交ルートや密輸で入手することができる。

資金の凍結については、人道目的の支払いに加え、税や保険、弁護士への支払いなどの金融取引、さらに開発のための投資や貿易には適用されず、第三国の銀行口座を利用して決済などを行っていた。船舶の臨検の権利も与えられたが、実質的効果はなかったとみられる。経済制裁委員会が設立され、モニタリングの体制だけはできた。

2009年の核実験後に採択された安保理決議第1874号では、経済制裁が強化された。禁輸措置は核やミサイル関連に加えて他の通常兵器に拡大し、それに関連する金融取引も禁止された。ただし、小型兵器は除外された。

船舶の臨検は公海にまで拡大したが、船舶籍国の同意が必要だったこともあり、その効果は期待できなかった。北朝鮮籍の船舶への給油なども禁止されたが、それは禁止されているものが輸送されていると確信できる確かな情報があることが前提だった。

新たな資金の提供や財政支援、有利なレートのローンなども一般市民への人道や開発目的であれば除外された。この決議の下で、7人で構成される専門家委員会が設立され、情報収集やレポートの分析などで制裁委員会をサポートすることになった。

2012年のミサイルテスト後は、安保理決議第2087号の下、資産凍結や渡航制限を具体的な個人名や企業、団体名を挙げて課し、大量の現金での決済といった制裁を回避する行動を自国内で許容しないよう加盟国に促した。

翌年の第三回目の核実験後は、決議第2094号で、さらに個人名や企業、団体名を挙げ、と同時により具体的な核、ミサイル、化学兵器関連の禁輸リストを提示した。しかし、このようなリストは包括的なものではないので、欺く方法を考える余地を与えている。

(この記事は 北朝鮮ミサイルテストと安保理 その1「スマート制裁」効果なし の続きです。北朝鮮ミサイルテストと安保理 その3 中国のジレンマ に続く。全5回)

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