[古森義久]【米「北朝鮮の非核化」政策は破綻】~北朝鮮核実験~

古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)
「古森義久の内外透視」
北朝鮮が1月6日に断行した核兵器開発のための爆発実験にはなお謎の部分が数多く残るが、一つだけ明確なのはアメリカの歴代政権が堅持してきた「北朝鮮の非核化」という政策目標は実現が困難になったという現実だろう。今後は北朝鮮を核兵器保有国とみなしての対処が必要となるかもしれない。アメリカの北朝鮮の核兵器開発を防ごうとする努力は1990年代にまでさかのぼる。1994年にアメリカが北朝鮮と結んだ「米朝核合意」は米側が北朝鮮の原子力平和利用のための軽水炉2基の建設を約束するかわりに、北側が核兵器開発を止める措置をとる、という骨子だった。
だが主として北朝鮮の同合意の違反や無視により、核武装への前進は続いた。北朝鮮のこの動きの背景には核兵器の開発が国家の存続、政権の正統性を賭けた基本政策なのだという実態があったわけだ。
米側としては北朝鮮が核武装を断念すれば、米朝国交の樹立とか大型経済援助の供与というような「見返り」を与える構えをみせる一方、国連主体や米朝二国間の種々の経済制裁を強めることで圧力をかけてきた。その圧力政策の核心は「核放棄=外交・経済恩恵」という引き換えの方程式だった。だが北朝鮮の今回の4回目の核実験によって、このギブ・アンド・テークの交換方程式は完全に破綻したといえる。
アメリカ側の専門家たちの間でもこの見解は明確となってきた。アメリカ国防大学上級研究員で北朝鮮の軍事動向を専門分野とするシェーン・スミス氏が1月6日のCNNテレビのインタビューに答えて以下のように語っていた。
「北朝鮮は1990年代から2000年代前半にかけては核開発計画のかなりの部分を経済や外交での恩恵や厚遇との交換で放棄することにも本当の関心を示していたが、もうそういう状況は消えてしまったといえる」
この種の「見返り」のアプローチこそ1990年代以来のアメリカ歴代政権の政策だった。クリントン、ブッシュ、オバマ3代の大統領の下でアメリカ政府が保持してきた対北政策だったわけだ。中国が主導して始まった6カ国協議もこの「見返り」政策が基本だったといえる。その「見返り」により北朝鮮の非核化という目標を実現させるという思考だった。
だがいまやこの「見返り」政策は完全に破綻したというのがスミス氏らの見解なのだ。とくに同氏のようなアメリカ側の専門家の言を借りなくても、アメリカの北朝鮮非核化の政策がいまやすっかり挫折してしまい、もう後戻りはないことはあまりに明白にみえるわけである。
写真:everystockphoto / by giladr







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