韓国、ようやく米とミサイル防衛協議へ
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(2016年2月8-14日)」
先週末、日本は再び北朝鮮に振り回された。1月6日は核実験だったが、今度は「気象観測衛星打ち上げ」という名の大陸間弾道ミサイル発射実験だ。このところ筆者に対する質問は決まって、「どう思いますか」から始まる。若い記者に対する筆者の答えはいつも同じ、「別に?驚きませんよ」だ。
初めてのミサイル発射でも、初めての核実験でもないだろう。2003年にNPT(核拡散防止条約)離脱を表明してから、北朝鮮はこれまで2006年、2009年、2012-13年、2016年と、ほぼ三年おきに、核爆発・ミサイル発射実験を繰り返してきた。いまさら何を驚けというのか。その間に核弾頭は小型化し、ミサイルの射程が伸びるだけだ。
北朝鮮の時間の流れは我々とは明らかに異なる。彼らは生き残りのため、ワシントンまで届くICBMを限られた予算の中で真剣に開発している。彼らのタイムテーブルは核兵器開発計画のスケジュール以外の何物でもない。「なぜ今この時期に?」とも聞かれるが、答えは単純。準備ができたら、たまたま2月上旬だっただけの話だろう。
興味深いのは韓国の動きだ。米韓はTHAAD(地上配備型高高度ミサイル防衛システム)の議論を進めるという。これまで韓国が中国に配慮して長く躊躇してきた問題だが、北朝鮮にここまでコケにされれば、最早致し方なかろう。朴大統領が夢見たかもしれない米中・日中間の「仲介役」など夢物語に過ぎない。
〇アメリカ両大陸
9日にニューハンプシャー州で米大統領選の予備選が始まる。民主党サンダースの勝利は間違いないので、焦点は共和党だ。共和党主流派にとってルビオは最後の希望になるのか。トランプは勿論、クルーズでも本選での勝利は難しいからだ。9日にトランプが勝利しなければ、遂に彼の失速が始まるかもしれない。
〇欧州・ロシア
9日に仏議会が非常事態宣言を延長するための投票を行う。状況はまだ改善していないということか。12日には欧州で重要な会議が四つある。反イスラム国連合26カ国の国防相会合、ミュンヘン安全保障会議、EU経済財政評議会と独ポーランド首脳会談だ。ポーランドとドイツが難民問題について何を話すかに注目したい。
〇東アジア・大洋州
米国が、9日からタイとコブラゴールド共同演習を主催し、10日からは豪州、NZ、フィリピン、日本、韓国とコープノース合同訓練を実施する。コブラゴールドは東南アジア最大級の共同訓練で米タイの他、シンガポール、インドネシア、マレーシア、韓国、日本、ミャンマーが参加するという。いずれも中国が念頭にあることは疑いない。
〇中東・アフリカ
中東は相変わらず。レバノン議会では大統領選びが空転し、エジプトでは失脚した前大統領の刑事裁判が続くが、シリア問題は一向に進展しない。この中でトルコが北イラクの天然ガスをトルコ東部に運ぶパイプライン建設の入札を始める。北イラクといえばクルド自治政府だろうが、これをバグダッド中央政府は黙って見ているのか。
〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。
いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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この記事を書いた人
宮家邦彦立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表
1978年東大法卒、外務省入省。カイロ、バグダッド、ワシントン、北京にて大使館勤務。本省では、外務大臣秘書官、中東第二課長、中東第一課長、日米安保条約課長、中東局参事官などを歴任。
2005年退職。株式会社エー、オー、アイ代表取締役社長に就任。同時にAOI外交政策研究所(現・株式会社外交政策研究所)を設立。
2006年立命館大学客員教授。
2006-2007年安倍内閣「公邸連絡調整官」として首相夫人を補佐。
2009年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹(外交安保)
言語:英語、中国語、アラビア語。
特技:サックス、ベースギター。
趣味:バンド活動。
各種メディアで評論活動。