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国際  投稿日:2016/3/24

これはもはやISとの戦争だ ベルギー同時テロ

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古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)

「古森義久の内外透視」

ベルギーの首都ブリュッセルでまた大規模なテロが起きた。3月22日、同首都の国際空港と地下鉄駅と2か所での爆弾テロで、少なくとも34人が死に、230人が負傷した。イスラム教過激派テロ組織の「ISイスラム国)」がすぐに犯行声明を出した。

なぜこんな残酷な無差別殺戮が起きるのか。このテロでは日本人2人も負傷した。ヨーロッパから遠く離れた日本も決して無関係ではないのだ。いま私が働くアメリカの首都ワシントンでも犠牲者を悼む半旗が各所に掲げられ、このテロの意味や対策がまた一段と熱っぽく論じられ始めた。

直接の契機は昨年11月のパリでの大規模なテロ事件の首謀者サラ・アブデスラム容疑者(26)を当局がブリュッセル市内で拘束したことへのIS側の報復だともされる。

さてわが日本では「テロの原因は貧困と格差」という種類の議論がまたまた展開されるのだろうか。NHKの解説委員たちがそうした意見を述べ合っていた奇異な状況については当サイトでも2016年1月5日に、【NHK解説委員の歪んだテロ観】~原因は「貧困と較差」のみ?~というタイトルの報告で紹介した。「貧困と格差をなくさない限り、テロリストはなくならない」という主張である。

ところがワシントンではすでに今回のブリュッセルのテロに対する種々な評論が発表されているが、テロの原因や対策については日本のNHK式とはまったく異なる見解が述べられている。

ワシントンの大手研究機関「AEI」が22日に公表した専門家たちのコメントは以下のようだった。いずれもテロの原因と対策について述べた意見の集約である。

「今回のブリュッセルでのテロの核心は中東での統治と各国政府の制度的な崩壊の諸問題なのだ。その諸問題を適切に処理しない限り、欧米諸国にとってのテロ問題は解決できない」(アメリカ議会上院外交委員会スタッフのテロ研究専門家ダニエル・プレトカ氏)

「パリでの昨年11月のテロ事件の直後、フランスのオランド大統領が『これはもう戦争だ』と宣言したように、欧州全体が戦時のように行動しなければならない。ISに対する戦いをイラク、シリア、リビアのジハディアスト(イスラム聖戦の戦士)たちに直接、真剣にぶつけなければならない」(同上院情報特別委員会の元補佐官ギャリ―・シュミット氏)

「各国当局のISに対する敏速で断固たる軍事行動がまず必要だろう。ISは今回、ブリュッセルで首謀者を逮捕されたにしても、その戦闘能力を失ってはいない。いやテロリストたちはベルギーからフランスにつながる回廊地域を利用して、なお活動を盛んにしていることが判明したのだ。当面の対策としてはこの回廊の人間の動きの監視を強めるとともに、ベルギーのアラブ系住民への警戒をも強めることが不可欠だ」(元アメリカ国土安全保障省高官のマット・メイヤー氏)

こうした認識には「貧困と格差さえなくせば、テロはなくなる」という日本的発想はツユほどもうかがわれない。むしろテロ勢力とはまず戦わねばならない、という意識が最優先されている。テロを軍事力だけで除去できないことは当然だろう。だがまず物理的な力で阻止し、反撃しなければ、自分たちが破壊されてしまうのだ。テロリズムの現実の脅威を実感し、日本側の反応の非現実性をまた味あわされる時期なのかもしれない。

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この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「危うし!日本の命運」「中・韓『反日ロビー』の実像」「トランプは中国の膨張を許さない!」など多数。

古森義久

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