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.政治  投稿日:2017/6/30

都民ファーストの会公約分析② 東京都長期ビジョンを読み解く!その50


 西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

「西村健の地方自治ウォッチング」

【まとめ】

・「都民ファーストの会基本政策集」にはいいものも沢山ある。

・しかし行政の役割を超えた「怪しい」政策が垣間見える。(ex.国際金融都市)

・問題解決型行政になるには程遠い。

 

■感じられない政策への問題意識

都民ファーストの会の公約分析第2弾。「都民ファーストの会基本政策集」、骨のあるなかなか素晴らしい提案をしている。一方、疑問の提案も多い。

どのような問題解決につながるのか?の「施策貢献」、どのようにやるのか?の「方法説明」、どれくらいの規模でやるのか?の「予算の裏付け」といった部分での疑問だ。

例えば、

〇 No158 消防団員の確保

まず初めに言いたいのは、消防団員はかっこいいし、心からリスペクトをしている。江戸の火消しの伝統を現代まで継承しつつ、地域への貢献意識高い人々だと思う。危険に対して身を挺することのできる勇気、人を救うだけの心構えと能力・・・・私にはできない。

しかし、東京都、特に23区に住んでいると、消防団を感じることは少ない。なぜなら「常備消防」と呼ばれる専門の消防署員がいるからだ。

全国的にも消防団は課題を抱えている。消防団員の数は 86.0万人に減少、団員のサラリーマン化率は72.5%、高齢化(平均年齢は39.9歳)といったものだ。

東京都の消防団員数は平成27年4月現在、23,314人と26年の23,500人からいくらか減少している。

私は消防団の在り方に疑問を持っている。専門家である消防署員の能力向上、新築の建物にはスプリンクラーが設置されることが多いこと、火を出す器具の性能向上、消防団員が地域にいつもいるわけではなく現場にたどり着ける割合が減っていること、現場に行っても常備消防がメインでそれほど大きな役割は担えないこと、大火は減るなどの結果を見ると、「地域の消防・防災力を確保するために消防団の充実・強化が必要」という消防庁国民保護・防災部地域防災室の問題意識には賛同できない。

私は、多くの自治体で消防施策をヒアリングし、議論してきた。そこでは、団員の成り手や後継者を見つけるのに苦労している実態を知り、消防団の在り方・統廃合も検討する中、消防団員数の定員に対する充足数が適切かどうか疑問を持っている。

にもかかわらず、政策に上がっている。住民が地域貢献の負担をいやがるこの大都会で現実的だとは思えない。

 

■行政がやるべきかどうかビミョーな政策

〇 No117 長時間労働の削減など「TOKYO 働き方改革宣言企業」への支援

〇 No127 東京都スポーツ推進企業を認定

〇 No251 各地の桜の名所のライトアップやプロジェクトマッピングでの演出支援

〇 No237 東京ブランドを確立し、昼夜問わず楽しめる文化や食を世界に発信

これらはなぜ行政がやる必要があるのだろうか。東京のような民間活力が強いところは、民間や国がやればいい。特に、No237の「東京ブランド」などは、委託事業が増えることになり、成果の保証ができない地方創生「コンサルタント」を生むだけだと思う。

そして、最も意味不明なのがこれ。

〇 基本政策09

成長し続ける都市・東京へ人・モノ・金・情報を惹きつけ、日本経済を強力にリードします。

(中略)

【国際金融都市推進条例をつくります】

小池都知事の「都民ファーストがつくる「新しい東京」」という冊子でも、「国際金融都市・東京の実現」、「都による金融系外国企業誘致を2030年までに40社」などと強く主張されている。

水野和夫氏が指摘するように、すでにマイナス金利なのだ。利子率が2%を下回れば資本側が得るものはほぼゼロで、超低金利が10年をこえて続くと既存の経済・社会システムが維持できないという現実に我々は直面している。超低金利が示すのは「実質投資空間」が消滅していることだ。

そうした事実を考えると、今更金融?既存の前提でしかものを考えられないのかな?という違和感しか残らない。

 

■問題解決型都政を目指しているのか?

都議会自民党が掲げる公約「個人都民税を10%減税、事業所税50%減額」を見習って余計なことはやらず、本物の行革を進めて欲しい。そして、行政が公共空間を独占するのはやめてほしい。

行政機構や政策について前提知識のない一部の人の声を聴きすぎると、よくわからない事業に予算が付く・・・・

実行した回数などの(アウトプット)目標を立てる→行政ができない場合企業に委託→成果がでなくても外部要因の影響と説明→利害関係者の声や行政の組織的特性ゆえ事業の見直しが進まない→結果、肥大化する組織

というサイクルに陥る。

待機児童をはじめ、多くの都民が困っている問題を「本気で」解決するには予算や人員を集中投下しないとできないはず。そのためには行政が役割を果たすべきではない「無駄な」事業はできないはずだ。

都民ファーストの会に期待したい。

 

【注意】上記あくまで私の意見ですのでご参考に。繰り返しますが、特定団体を応援する目的で記載していませんので悪しからず。


この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家


NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。


専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。

西村健

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