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スポーツ  投稿日:2014/6/24

[瀬尾温知]<2014FIFAワールドカップ>日本代表は「幸運」に恵まれなければ勝てないチーム


瀬尾温知(スポーツライター)|執筆記事プロフィール

 

退場者を出した相手から得点を奪えなかった。1人少なくなり、引き分け狙いで守りを固められたことが、却って日本には厄運だった。しかし、数的優位を無得点の原因にしてしまっては罰が当たる。引いて守る相手を崩せない、1点を堅守できない・・・

結局のところ日本代表の勝ちパターンは、点を取り合う展開で“幸運に”決定機を生かせたときだけなのだ。それを「攻撃的スタイル」と謳うのは勝手だが、“幸運”に恵まれなければ、そもそも勝ちパターンなど皆無のチームだった。

ワールドカップの1次リーグ第2戦、日本はギリシャとスコアレスドローに終わった。ミドルシュートが打てない。相手エリア内でドリブルを仕掛けられない。攻撃の最後のところで一工夫するアイデアに乏しく、挙句、DF吉田を前線に上げて不得手な空中戦に出るといった愚策に頼ってしまった。

それもDFの平均身長が約185センチの相手に対してボールを放り込んだのだから、ザッケローニ監督は、初めてのワールドカップで精彩を欠いていると言わざるを得ない。

日本は2試合を終えて1敗1引き分けで勝ち点1となった。[ギリシャ戦の終了時に、NHKは効果音つきの速報で、「日本 ギリシャと引き分け 決勝トーナメント進出に望みをつなぐ」とテロップを出した。怪訝に思った方も多いことだろう。それは試合前から散々“勝たなければならない試合”と煽っていたのに、引き分けに終わった途端、「望みをつなぐ」と、上出来な結果とのニュアンスが含まれていたからだ。

ところが、この怪訝な表現が、不甲斐ない引き分けによる倦怠感から徐々に解放されてくると、意外と的を射ていることに気づき始める。このテロップの文言を書いた人は、日本代表の実力は2連敗が妥当との冷静な見解を端からしていたのだ。それが2試合終わって勝ち点1を得た。まだ決勝トーナメントへ望みが残っているではないかとなったのだ。

日本代表の躍進を期待するあまりに陥っていた希望的観測が、日本中に蔓延していたが、そこから解き放ってもらった第2戦だったように思う。 今大会、イラン対ナイジェリアの0対0が一番つまらない試合だったが、日本対ギリシャもそれに等しいものだった。

それはプレーのスピードやテクニックが他の試合に比べて顕著に低いからであるが、それら以前に、表現力を目にすることが出来なかったからだ。

何しにワールドカップに行っているのか。チームとして勝ち負けにこだわるのは当然だが、自分というオンリーワンな存在を世界中の人に見てもらおうという欲求はないのか。ギリシャ戦では、大久保がドリブル突破を仕掛けたのが唯一、目にした自己アピールだった。

それにしても一体全体、「勝たなければならならい試合」っていくつあるのだ。初戦を落とすと1次リーグ突破の可能性は低くなるから「勝たなければならない」。初戦に敗れての2戦目、ここは是が非でも「勝たなければならない」。

そして25日に行われるコロンビアとの第3戦、自力突破のなくなった日本が決勝トーナメントに進出するためには「勝つのが最低条件」。ということはやっぱり、「勝たなければならない」ということか。

 

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【執筆者紹介】

seo_photo瀬尾温知(せお みつとも)

1972年東京生まれ。スポーツライター。

テレビ局で各種スポーツ原稿を書いている。著書に「ブラジ流」。 日本代表が強化するには、ジェイチーニョ(臨機応変な解決策)を身につけ、国民ひとりひとりがラテン気質になること。情熱的に感情のままに。

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