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スポーツ  投稿日:2014/10/24

[瀬尾温知]【野球の試合時間は長すぎる?】~米・メジャーリーグ機構の時間短縮ルールとは~


瀬尾温知(スポーツライター)

「瀬尾温知のMais um・マイズゥン」(ポルトガル語でOne moreという意味)

執筆記事プロフィール

 

ニューヨーク・マンハッタンのハーレム地区近くに住んでいた親友のアパートに滞在していたことがある。親友は仕事で留守にしていて、吸い込まれそうになる碧眼をしたルームメイトのギリシャ人美女も出かけていたのだろう。ソファーで一人、何気なくテレビを観ていると、メジャーリーグ中継が始まった。

窓から見える晴れわたった青空と同じ色の空が画面に写っていた。地下鉄一本で行くことのできるヤンキースタジアムで行われたデイゲーム。整備されたままのマウンドには、ピンストライプを着た投手が立っていた。

日本のプロ野球中継は夜7時からが常だったので、観はじめたときにはすでに3回頃まで進行していた。そのことに慣れていた者にとって、15年以上も前になるニューヨークのその光景は新鮮だった。子供の頃の中継は、プレイボールから観ることはできず、夜9時を過ぎて時間を延長しての放送でも、試合終了まで見届けられないことがざらにあった。

現在はNHK‐BSやJ SPORTSの中継などで試合終了まで観られるが、民間放送では「試合の途中ですが、野球中継を終了致します。大変申し訳ございません」と卑屈な態度になって話す言葉を未だに耳にする。後に控える番組などの事情はあろうが、やるなら最初から最後までやるべきだ。中途半端は良くない。

プロ野球は視聴率の低下で中継自体が減少している。それに代わって放送されているのが、タレントや局アナが物を食う姿だ。品がなさすぎる。野球がおもしろくないとの意見に同意する部分もある。試合時間が長いからだ。テレビ局が中継を疎む訳もそこにあるのだろう。

メジャーリーグ機構が試合時間短縮ルールを考案し、実戦でテストした。各球団から若手の有望選手が集まって毎年秋にアリゾナで行われるArizona Fall Leagueで、次に並べたルールを試した。

 

①投手がボールを受けてから投球動作に入るまでの時間を20秒に制限。時間を超えるとボールとカウントされる。

②打席ではバッターボックスから出てはならない。

③敬遠四球にするときは球を投げない。

④イニング間は2分5秒以内。

⑤投手交代は2分30秒以内。

⑥監督・コーチがマウンドに行くのは1試合3回まで。

 

試合は2時間14分で終了した。時間だけを見ればテスト成功になる。ただ、野球はここぞという時の間合いを楽しむスポーツでもある。一概に時間を制限すればいいというものでもないような気がする。とは言え、時間が長いという意見に耳を傾け、改善に向けて行動するメジャーリーグの姿勢は称えたい。

原稿を書きながら思い出そうとしているのだが、ニューヨークのアパートで観た試合で記憶に残っているのはプレイボールの場面だけで、その後のことは覚えていない。青い空に映える白球を追いかけていたつもりが、いつしか碧い眼球をしたギリシャの女の子を追いかけていたのかもしれない。

思い出すのは、歌手志望だった彼女が歌うPras Featuring Mya&Ol’ Dirty Bastardの“Ghetto Superstar”に、ろくに英語を話せなかった拙者が口笛で伴奏したことである。時間がたっぷりあった、若い頃の話だ。

 

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