[安倍宏行]【岡田民主党代表で遠のく野党再編】~代表選で細野氏に逆転勝利~
安倍宏行(Japan In-depth編集長/ジャーナリスト)「編集長の眼」
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18日の行われた野党第一党の民主党の代表選。岡田克也氏が新代表に選出された。決選投票は逆転勝利だった。接戦だったことは間違いない。
民主党はある意味、背水の陣にいる。野党第1党といっても、先の衆院選の結果をみれば、有権者はまだ民主党に政権を担ってほしい、と思っていないことは明白だ。
その民主党にとって、新代表に岡田氏を選ぶか、細野氏を選ぶかは極めて大きな選択だった。42歳の細野氏が代表になれば、世代交代は間違いなく進んだであろう。野党再編にも積極的だった細野氏だから、少なくともその対極にいる岡田氏よりは、維新の党との対話ルートは維持出来たに違いない。しかし、民主党は岡田氏を選んだ。
今回の選挙戦では岡田氏の老獪さが勝った。まず最初のブローは、8日の日本記者クラブ主催の討論会で、岡田克也元代表は、野党再編の是非をめぐり、細野豪志元幹事長とのクローズドな会話を暴露したことだ。その内容は維新との合併話だったが、これで維新との合流に慎重な国会議員を中心に流れを作ったと言える。決選投票前の演説でも、冒頭でいきなり長妻氏を持ち上げたのも、長妻陣営の議員に対するメッセージとして、あまりにわかり易い、しかし、周到に練られた戦術だった。
そもそも選挙序盤から、最初の投票で3候補が過半数を制することはなく、決選投票にもつれ込むとの予測が大勢を占めていた。岡田陣営も細野陣営も、決選投票に備え、早くから長妻陣営の票を取り込むべく動いていたと思われるが、そもそも長妻陣営を支持していたグループは、細野氏が代表になった時の世代交代や、野党再編への流れを警戒していたことから、細野陣営に大量に票が流れることは期待できなかった。ある意味、予想できた結果ではある。
とはいえ、岡田氏も薄氷の勝利であり、地方票では細野氏は岡田氏に勝っているのである。この春の統一地方選を睨み、選挙の顔として、若い細野氏に期待したことは容易に想像できるが、国会議員の思惑は違ったようだ。
細野氏が自ら決選投票前の演説で「自分にないものが一つある。それは経験。」と述べたように、安倍首相に対抗できるのは経験豊富な岡田氏だ、との声も民主党内から聞こえてくるが、国民が望んでいるのは民主党代表が安倍首相との論戦で存在感を示すことではないだろう。
野党がその勢力を結集し、圧倒的な議席を持つ与党に対して対立軸を明確にすることが求められているのだ。それをはき違えて、まずは党の再生だ、と悠長に構えていていいものなのだろうか。
維新の党の幹部は、誰が民主党の代表になろうと、再編はもはや遠のいた、と明言した。世代交代も行われず、野党勢力結集も否定する民主党。唯我独尊を貫いて果たしてサバイバルできるのか。民主党に注がれている国民の視線は、厳しくなることはあっても、優しくなることはないだろう。