[相川俊英]【議会改革:開催は「土日・夜間」に】~注目選挙区、東京・千代田区議選~
相川俊英(ジャーナリスト)
「相川俊英の地方取材行脚録」
統一地方選が全くもってパッとせず、このままでは右肩下がりしている投票率がさらに大きく落ち込むものと思われる。なぜ、こうした事態となっているかその理由は明白だ。候補者の質と量の両面に大きな問題があり、有権者の多くが投票に行く意欲を喪失してしまっているからだ。清新で魅力的な候補者が見たらず、いつものメンバーばかりでは盛り上がるはずもない。それどころか、定数を上回る立候補者が現れず、無投票となるケースも激増している。実際、4月3日に告示された41道府県議選では全選挙区の3分の1が無投票となり、総定数の約2割にあたる501人が民意なしで議員になった。投票に行きたくても行けないと嘆く有権者も全国各地に生まれている。
選挙にはダメな議員を落とし、よりましな人に交代させる機能がある。だが、いまの選挙事情ではそうした新陳代謝機能は働かず、むしろ、議員の固定化を助長し、さらなる質の悪化を生んでいる。それらの根っこにあるのは、意欲と能力を持った新人が選挙にチャレンジしにくいという歪んだ構造だ。
非常勤の特別職である地方議員は、兼業が認められている。会期日数も年間90日前後(町村議会はその半分ほど)なので、専業でなくても可能だ。しかし、議会は常に平日の昼間に開会されるため、会社勤めの人が兼業することは事実上、不可能。このため勤め人が議員になろうと考えた場合、職を辞して選挙に打って出ることになる。もちろん、当選する保証などない。リスクはあまりにも大きく、世の中の多数を占める勤め人は立候補に二の足を踏まざるを得ないのである。
こうして選挙に出やすい特定少数の「特殊な人たち」が議場を占め、いつしか専業議員が当たり前となった。議会は多様な住民の意見や二―ズを基に議論する場ではなく、特定の組織や住民の要求を主張する舞台となった。
こうした地方議会の現状をよしとする人は例外的な存在だ。もっと多様な「ふつうの人たち」が議員になり、活発な議論を展開すべきだと多くの人が考えているに違いない。
今回の統一地方選であるべき議会につくりかえようと、立ち上がった「ふつうの人たち」がいる。東京千代田区の住民たちで、「地方議会を変える千代田区会議」を結成し、千代田区議選(4月19日告示)に候補者を擁立する。「ふつうのビジネスマンやビジネスウーマン、子育て中の方など、これまでは議員になることのできなかった「ふつうの人」が議会に参加できるようにすることを目指しています」という。
4月7日に第一次推薦の候補者2名を発表し、さらに複数の候補擁立に動いている。候補者は最大で5名にのぼる見込みである。彼らは、平日昼間に開催する議会を全て土日・夜間開催にする議会改革案を掲げ、日本のど真ん中の千代田区から「多様性ある開かれた議会」を目指すという。千代田区の有権者数は約4万で、区議会の定数は25。投票率は低迷しており、前回(2011年)は5割に満たなかった。
当選のバーは低く、前回の最下位当選者の得票数はわずかに444票。土日・夜間議会に賛同する現職区議もいるため、今回の区議選(4月26日投票)の結果次第で実現する可能性があるという。パッとしない統一地方選の中で千代田区議選が最大の注目選挙区に浮上したといえる。