【惨憺たる統一地方選前半戦】〜後半戦、過去最低投票率を阻止せよ!〜
相川俊英(ジャーナリスト)
「相川俊英の地方取材行脚録」
昨年、各地でトンデモない地方議員の存在が次々に表面化し、地方議会への不信感が一気に高まった。なぜ、こんな連中が議員に選ばれたのかと多くの人が首を捻り、怒りに震えたのである。そうした憤懣を晴らす絶好の機会が、統一地方選だ。投票行動で思いをきちんと示すのである。しかし、統一地方選の前半戦は惨憺たる結果に終わった。各地で歴史的な低投票率が相次ぎ、10道県知事選の平均投票率は初めて5割を下回った。41道府県議選の投票率も45・05%と過去最低を記録し、そのうえ無投票が全選挙区の約3分の1にのぼった。有権者の過半数が自らの一票を投じず、ないしは投じることができなかったのである。選択肢の乏しい選挙に失望し、選挙に背を向けてしまう人たちが続出し続けている。
だが、その一方で全く盛り上がらない選挙を喜ぶ人たちがいる。固定票や組織票をがっちりおさえている陣営だ。つまり、現職やその後継候補である。投票総数が少なければ少ないほど、固定票や組織票の重みは増し、より当選しやすくなるからだ。
実際、41道府県議選の当選者のうち新人は2割にすぎず、こちらも過去最低を記録した。まるで議席が指定席のようになり、特定の人たちが長期間座り続ける傾向が顕著となっている。議員の新陳代謝が進みにくく、議会全体の質の低下を呼び込む負のスパイラルに陥っているのである。
固定票や組織票さえ大事にすれば間違いなく当選するとなれば、議員はその上に胡坐をかくことになる。視野を広くもち、多様な意見に耳を傾けるようなことはせず、自分の支持者にばかり顔を向け、利益誘導に専念しがちとなる。議員同士は特定の固定票や組織票をうまく棲み分けているため、切磋琢磨する関係とはならない。競争原理は働かず、本来の議員活動を競い合うことにはならない。
そうした現職議員にとって一般有権者が「眠っていてくれる」ことは、むしろ、願ってもないことだ。楽ができるし、選挙で落ちる心配もないからだ。こうして固定票や組織票を持たない一般の新人候補は当選しにくく、出馬そのものを諦めてしまいがちだ。結果として投票先の選択肢は乏しくなり、投票率が低下。ますます固定票や組織票を持った人が優位となり、投票率はさらに低下する。
こうした負のスパイラルを断ち切らねばならない状況に立ち至っている。まずは、どんなに乏しい選択肢であっても一票を投じることから始めるべきだ。今回の統一地方選では都知事選がないため、都民の関心はきわめて低い。後半戦(4月26日投開票)には東京の区議選が控えており、前回43%台だった投票率が3割台に落ち込むことが懸念されている。棄権することを期待している人たちが存在する現実を直視すべきだ。棄権は現状をより悪化させることにしかならない。
ところで、そうはいってもどの候補に投票したらよいかどうにもわからないという方も多いと思う。そんな方にきちんと働く議員の選び方を書いた拙著「トンデモ地方議員の問題」(ディスカヴァー携書)をお勧めしたい。