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.政治  投稿日:2015/5/25

[関口威人]【寝耳に水!?県と市がハコ物建設構想ぶち上げ】~大阪都構想の“戦後”二重行政愛知でも~


関口威人(記者)「関口威人のグローカリズム」

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大阪都構想をめぐる住民投票から1週間余りが過ぎた。その是非や結果の分析はさておき、橋下改革に「ノー」が突きつけられたことで、地方の改革全体についても「ノー」とダメ出しされ、失望やあきらめムードが漂うのは避けたい。改革課題は山積みだ。大阪都構想の大義名分であった「二重行政の弊害」一つとっても、地方には厳然と残っているのだから。

愛知県と、その県庁所在地である名古屋市には今、2つの「大展示場構想」が併存している。

名古屋市は港湾地域にある市国際展示場(ポートメッセなごや)の拡張計画から発展し、河村たかし市長が「日本一の巨大展示場を」と言い出した。現状のポートメッセは拡張整備しても展示面積4万平方㍍が限界だが、国内外にアピールするには東京ビッグサイトの8万平方㍍をしのぐ「10万平方㍍」以上が必要で、埠頭の別の一画に新設すべきだという。

一方、愛知県は昨秋、「10万平方㍍規模のコンベンション施設」建設構想を打ち出した。大村秀章知事は「技能五輪国際大会の誘致」が目的だと強調。早くても2021年以降の大会での利用が前提の「夢のある話」としながら、中部国際空港との連携などを視野に入れた調査検討にゴーサインを出している。

驚くべきことに、愛知県の構想は名古屋市側や市議らにとって「寝耳に水」だったという。市は13年度から有識者による「展示場のあり方構想懇談会」を開いて独自の構想を練ってきたが、そこに県から横やりを入れられた格好だ。

このまま構想が並び立てば、名古屋市内には港地区といってもアクセスは別々の場所に4万平方㍍と10万平方㍍の2つの展示場が、そして愛知県によって常滑市の空港周辺にもう一つ10万平方㍍規模の施設が造られることになる。それだけの需要がこのエリアにあり、共存できるのか。

今のポートメッセでも、稼働率は40%前後しかない。市の懇談会では「ハコが需要を生み出す」「リニアの時代だからこそ勝負すべき」といった強気な意見もあれば、「リニア開業で名古屋の展示会は東京に吸収統合される」「コストや採算性は度外視できない」「都市戦略がない」などと指摘もされていた。

15年度に入り、県と市は共同で国際的な催事を誘致するための「愛知・名古屋MICE推進協議会」を発足、ソフト面では協調する動きを見せている。MICE(マイス)とは、企業などの会議(Meeting)、報奨や研修旅行を指すインセンティブ旅行(Incentive Travel)、学会などの国際会議(Convention)、イベントや展示会(Event/Exhibition)の頭文字をとったビジネスイベントの総称だという。

名称とともに、ここに至る経緯や各構想との関係も分かりにくい。河村市長自ら「えらい役所が全面的に出たやつでして。こういうことこそ株式会社で、どこか2、3社に分けて、分割競争した方がどんだけええかしらんと思うけれど。忙しかったで…」などと会見で歯切れ悪く説明するほどだ。

これは橋下市長が否定しようとしていた典型的な二重行政ではないだろうか。現時点で「弊害」とまで決めつけるのは早計かもしれないが、「害」や将来の「負」とならないような行政のかじ取りがなされるかは不透明だ。少なくとも、大阪にその解決のモデルは探せなくなった。


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