[Japan In-depthチャンネルニコ生公式放送リポート]【ネパール大地震、私たちができること、教訓にすべき学ぶこと】~被災した日本人ディレクターが語る、被災者が感じた「助け合いの精神」とは~
2015年5月13日放送
Japan In-depth 編集部(Aya)
4月25日にネパールを襲ったM7.8の大地震。死者は8千人を超え、未だ大きな余震が続いている。Japan In-depthチャンネルの寄稿者で、映像ディレクター・プロデューサーの須藤史奈子氏は、地震が起きた時、仕事でネパールにいた。須藤氏、そして日本でネパール料理屋を営むネパール人のダッラコティ・クマル氏を迎え、ネパール大地震の深層に迫る。
須藤氏は、中国に近い山岳地帯に、エベレストの映像を撮りにきていた。空港から、徒歩でしか行けない場所を毎日歩き、ちょうどその時、エベレスト街道のタンボチェという街にいたという。お昼時でロッジに入り、ランチメニューを見ていたそのとき、大きな揺れが襲った。「日本人なので、すぐ地震だとわかった」と須藤氏は話したが、地震に慣れていないヨーロッパ人の中には、地震だということに気づいていない人もいたという。
須藤氏は急いで机の下に隠れようとしたが、周囲からの「アウト、アウト!」という声に押され、慌てて外に出たという。後にわかったことだが、ネパールの建物は石を積み上げて作られており、机の下に隠れても潰れてしまうことから、外に出ることが必要だったのだ。震災は昼間に起きたため、家の下敷きにならずに済んだ人もいたという。もし夜に起きていたら、逃げ遅れて亡くなった人はもっと多かっただろう。
須藤氏は状況の深刻さを把握し、すぐに帰国することを考えたが、空港から遠かったこと、空港の周辺の混乱等もあり、1週間以上ネパールに滞在することを余儀なくされた。「内情が分かっている人がいたことが、エベレスト街道は不幸中の幸いだった」と須藤氏は振り返る。アルピニストの野口健氏も早くから募金を呼びかけ、須藤氏も通訳をするなどして、被災者同士助け合った。
そんな中で須藤氏は、「ネパールでは余裕のある人が、余裕のない人を助けるというのが当たり前だと聞いていたが、それを目の当たりにした」と話す。その一つの例として、募金の方法に驚いたという。エベレスト周辺には観光目的の外国人が多く、中には有名な冒険家もいたという。そのような人たちがFacebook等を通じて募金を呼び掛け、積極的にお金を集めたという。冒険家は、ネパール人が日常的に困っている人を助けるということを知っていたため、その募金をなんと現地のロッジのオーナーの個人口座に振り込ませ、オーナーはそのお金を使って炊き出しなどのようなことを行い、被災者を助けたという。クマル氏は「仏教とヒンズー教の教えが助け合いの精神に繋がっている」と説明した。
ネパールはGDPに占める観光産業の割合が約7%という観光大国だ。そのため、今回の地震の風評被害が懸念されているという。「募金を集めるためには一番ひどいところを見せなければいけないが、見せすぎると環境に影響がある」と須藤氏はそのジレンマを説明した。
支援物資があまり届いていないと言われているが、その理由は何故なのだろうか。クマル氏は「道の問題もあるし、首都の政府政党の機能がやられている」と話す。標高が高いため、ヘリでも物資を運ぶのが困難な地域も多いという。須藤氏は滞在中、「どのような支援が必要か」ということを聞いて回り、「同じ国内でも地域によって必要な支援が違う」ということに気付いたという。例えばカトマンズには竹林が多くあるため、トタン屋根があれば家ができるが、山岳地帯では石の家の方が現実的だ。地方の特色に合わせたピンポイントの支援が必要だ。
被災した村を歩いていくうちに、須藤氏は自給自足の大切さを感じたという。雨どいに水をため、それをトイレや体を洗うために使う、太陽光発電、水力発電などの工夫で、被災しても生き延びることができる。「産業にもなるし、そういったう工夫を考えるのはよいことだと思う」と須藤氏は語る。震災から4年経った日本も、ネパールの震災から学ばなければいけない点はまだまだある。そして、震災の時に沢山の国が助けてくれたことを思い出し、募金などできる支援からしていきたい。