防衛省、ベトナムに「資材運搬車」を提供
清谷信一(防衛ジャーナリスト)
【まとめ】
・日本からベトナムに対し、防錆表面処理加工技術と中古の「資材運搬車」2台の譲渡が決定された。
・ベトナムは資材運搬車を的確に運用するため、日本の株式会社諸岡にて、操縦や整備に関する教育を実施する。
・車両は不整地での運搬に適しており、ウクライナへ3台提供された実績がある。
2023年末の日ベトナム首脳会談において、日越関係は「包括的戦略的パートナーシップ」に格上げされた。その日越二国間関係の下、昨年12月に実現した防衛装備品に係る防錆表面処理加工技術の我が国からの移転に加え、日ベトナム防衛装備品・技術移転協定に基づく初の防衛装備品の移転案件として、2024年7月に自衛隊法116条の3に基づく無償譲渡として中古の「資材運搬車」2両の譲渡が決定されに係る細目取極及び防衛当局間取決めが決定した。
▲写真 資材運搬車 出典:防衛省
この「資材運搬車」譲渡に際し、ベトナムにおいて的確に運用するために必要となる操縦及び整備に関する教育を、2024年9月17日~10月24日までの間、ベトナム軍関係者を我が国に招聘し、陸上自衛隊施設学校及び製造会社である株式会社諸岡において実施する。
「資材運搬車」は民間向けのゴム製履帯を採用した「不整地運搬車」を自衛隊仕様にして採用されたものである。普通科、特科、施設科等さまざまな部隊に配備され、弾薬運搬、築城資材運搬、災害時等の瓦礫等の運搬等の不整地での局地輸送に使用される。ゴム履帯なので雪上でも行動することが可能である。なお諸岡は、1978年ブリヂストンとの共同開発によって、世界で初めて大型モデルのゴムクローラの開発に成功している。
乗員は2名で車両重量約5t、全長約4,300mm 、全幅約2,150mm 、全高約 2,185mm。最大積載量約3t、揚重能力約2t、最高速度約20km/h、登坂能力30°、超壕能力約1mなどとなっている。
民生型と異なる点は、銃架、管制灯火、揚重機械(クレーン)を搭載し、陸自の73式大型トラックへの搭載が可能な寸法となっている等である。
▲写真 資材運搬車 出典:防衛省
「資材運搬車」は1990年度から調達が開始され、これまで約600両が取得しており、現在約500両を保有している。なお昨年ウクライナ政府からの要請によって、1/2tトラック、高機動車、資材運搬車を合計101台の車両が提供され、「資材運搬車」3台が提供されている。
トップ写真:資材運搬車 出典:防衛省
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この記事を書いた人
清谷信一防衛ジャーナリスト
防衛ジャーナリスト、作家。1962年生。東海大学工学部卒。軍事関係の専門誌を中心に、総合誌や経済誌、新聞、テレビなどにも寄稿、出演、コメントを行う。08年まで英防衛専門誌ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー(Jane’s Defence Weekly) 日本特派員。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関「Kanwa Information Center 」上級顧問。執筆記事はコチラ。
・日本ペンクラブ会員
・東京防衛航空宇宙時評 発行人(Tokyo Defence & Aerospace Review)http://www.tokyo-dar.com/
・European Securty Defence 日本特派員
<著作>
●国防の死角(PHP)
●専守防衛 日本を支配する幻想(祥伝社新書)
●防衛破綻「ガラパゴス化」する自衛隊装備(中公新書ラクレ)
●ル・オタク フランスおたく物語(講談社文庫)
●自衛隊、そして日本の非常識(河出書房新社)
●弱者のための喧嘩術(幻冬舎、アウトロー文庫)
●こんな自衛隊に誰がした!―戦えない「軍隊」を徹底解剖(廣済堂)
●不思議の国の自衛隊―誰がための自衛隊なのか!?(KKベストセラーズ)
●Le OTAKU―フランスおたく(KKベストセラーズ)
など、多数。
<共著>
●軍事を知らずして平和を語るな・石破 茂(KKベストセラーズ)
●すぐわかる国防学 ・林 信吾(角川書店)
●アメリカの落日―「戦争と正義」の正体・日下 公人(廣済堂)
●ポスト団塊世代の日本再建計画・林 信吾(中央公論)
●世界の戦闘機・攻撃機カタログ・日本兵器研究会(三修社)
●現代戦車のテクノロジー ・日本兵器研究会 (三修社)
●間違いだらけの自衛隊兵器カタログ・日本兵器研究会(三修社)
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●真・大東亜戦争(全17巻)・林信吾(KKベストセラーズ)
●熱砂の旭日旗―パレスチナ挺身作戦(全2巻)・林信吾(経済界)
その他多数。
<監訳>
●ボーイングvsエアバス―旅客機メーカーの栄光と挫折・マシュー・リーン(三修社)
●SASセキュリティ・ハンドブック・アンドルー ケイン、ネイル ハンソン(原書房)
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